コンビニから出てきた煉は、ラブグッズを飲み物とお菓子でカモフラージュし、湊の腰を抱いて急ぎ早に部屋へ向かった。エレベーターでの長い待ち時間、湊はさっき見ていた雑誌の煉を語る。
肉体美が売りでもある煉の趣味は筋トレ。ファッション雑誌では様々な衣装に身を包むが、女性向けの雑誌では肌を見せることも多い。
今回、湊が見た物もそう。Tシャツの裾を捲って程よく割れた腹筋を見せていたり、ローライズジーンズで上半身が裸のものは鼠径部まで見えていていやらしかった。けれど、そのセクシーさが煉との行為を思い出させてドキドキしたのだと、湊は頬を染めて本人に話す。
「お前さ、ンな可愛い顔してンなコト言って、ここで襲われてぇの?」
2人きりのエレベーター内。煉は1秒も1ミリも湊から離れず、肩を抱き寄せて耳に言葉を流し込む。その視線は、天井に取り付けられた防犯カメラを向いていた。
心臓が爆ぜてしまいそうほどトキメいている湊は、キュッと身体を強張らせて答える。が、煉の視線の先に気づいているわけではない。
「こ、ここではダメだよ····」
「ここじゃなかったら襲われてぇんだ? 覚悟しとけよ」
煉の低い囁きに、湊は下半身が反応してしまう。それも、前ではなく後ろのほうが。湊は、自分のそれが信じられずに戸惑う。
もじもじと身体を捩る湊の尻を軽く揉む煉。煉はそのまま、部屋に着くまで湊の情欲を煽り続けた。
部屋に入るや、煉は荷物を投げ置き振り返る。湊を玄関扉に押さえつけ、これまで抑えていた激情をぶち撒けてゆく。
湊の両手首を捕まえ、逃げられないように押さえ込む煉。貪るように湊の唇を吸い、熱い吐息を絡めながら舌を絡めていく。必死に応えようとする湊だが、煉の激しさに舌が追いつかない。
頭が霞掛かった様にボーッとしていき、ついには腰が抜けてしまった。先に風呂に入りたいと、絶え絶えに伝える湊。だが、煉は聞く耳など持たずに寒い玄関で湊を貪り尽くす。
「準備は?」
「い、一応、シてきた····」
耳まで真っ赤にして答える湊。薄暗い中で見る恥じらう湊があまりにも愛らしく、理性が皮一枚の煉は扉に手をつかせて湊のズボンを下ろした。
湊を傷つけないように、歯を食いしばりながら丁寧を心掛ける煉。樹のセリフがチラついて舌打ちを零す。
「煉····? 僕、もう大丈夫らよ」
「あ? まだだわ。まだ俺の
振り返って見る、廊下の間接照明に照らされた綺麗な煉。逆光で薄ぼんやりとしか見えないが、息を荒げながら懸命に湊を想う煉の姿に、湊の理性が先に消えてしまった。
湊は、上体を煉に寄せると頬へ手を添え、甘えた声でお強請りをする。
「ん··、大丈夫。あとは煉ので、僕のナカ、解して····」
唇が触れるだけの柔らかいキスを捧げ、湊は前髪を掻き上げて誘惑した。積極的で煽情的な湊に、煉は
けれど、目の前で自分を求めている愛らしい生き物に、これ以上理性を保てるはずがなかった。
玄関で1回戦目を終えた時、
「あぁっ····」
湊は慌てて自らの手で口を塞ぐ。けれど、煉の意地悪さに声を抑えきれなくなり、煉は湊の口をキスで塞いだ。隣室の扉が閉まる音さえ聞こえなかった2人は、そのまま夢中で互いを求め2回戦を終えた。
「煉のバカ! 意地悪!」
「うるせぇ。ノリ気で俺の離さなかったくせに」
そう言って、湊のナカから漸く抜け出した煉は、湊をお姫様抱っこして浴室へ向かった。
2人で入浴し、ふと時計を見た湊が気づく。
「あーあ。カウントダウンできなかったね」
「だな。けど、カウントダウンよかイイ年越しだっただろ」
膝に抱えていた湊にすり寄って言う煉。水音がちゃぷっと響いて、2人の距離が縮まる。
風呂から出た2人はベッドしかない部屋で、飲み物とお菓子を床に広げてパーティーを始めた。
ジュースで乾杯し、新年のあいさつを交わす。そして、煉は樹が言った言葉を否定する。
「来年も、再来年も、ずっとお前と居んのは俺だからな」
「んへへ♡ そのつもりだよ」
(何年か先、年越しをする時は、僕もこの部屋に住んでるのかな。そうなってたらいいな····)
緩んだ笑顔を見せる無防備な湊に、煉は惹き込まれてそっとキスをした。柔らかいキスに、ゆっくりと応える湊。
2人は時々、相手の反応を確かめるように見つめ合い、自然とベッドへ移動し重なり合っていた。
朝までこれを繰り返し、気がつけば明け方。煉は、約束通り変装をして、揃って初詣へ出掛けたのだった。
始業式の後、樹と仁から呼び出された煉は、気まずそうな2人に挟まれて呆然としていた。そうして何故か、空き教室でお悩み相談室が開かれているのだ。
「で? 何この状況。俺、この後撮影あんだけど」
「いや~··それがさ、えっと、話せば長くなるんだけど····」
「10秒にまとめろ」
もじもじと話す仁を煉が急かす。ええいままよと、仁は起きた事をありのままぶっちゃける。
「大晦日さ、煉たちと別れた後、不憫な樹が可愛すぎて犯しちゃった♡」
ウインクで締めくくった仁の説明は、わずか5秒で終わった。
「············は? はぁぁぁぁ?!」
煉にぴったりとくっついて怯えた様子の樹。なるほどと理解した煉は、マネージャーに遅れると連絡を入れて話しを聞くことにした。