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第7話

「悠斗の不整脈が治まらないのは、やっぱり何か問題があるんでしょうか?…手術前に説明のあった、合併症なのでしょうか…?」


手術前に、合併症のことも万が一のこともすべて説明をしている。術後のリスクやその場合の対処もすべて。


「はい…悠斗君の不整脈が続いているのは手術による合併症の可能性が高いと思います。今は経過を見ながら、今後の治療法を検討しているところです。…場合によってはペースメーカーの埋め込みも視野に入れなくてはいけないかもしれません」


「ペースメーカー…」


母親は驚いた表情を見せたが、颯太は続けた。


「ペースメーカーは心拍数を調整し、不整脈を防ぐのに非常に効果的です。石田君の命を守るためには、その選択肢も視野に入れるべきだと思っています。石田君がまた元気に過ごせるよう、全力でサポートしますので、よろしくお願いします」


颯太は、しっかりと頭を下げた。母親は涙を浮かべながらも、しっかりと頷いた。


「はい…お願いします、神崎先生」


颯太は深く頷き、微笑んだ。石田君の病室を後にし、医局へ戻るために廊下を歩いた。これから木村先生に相談して検査をしなければ…と順序を考えていた。その時、幽霊の真田先生がふっと現れた。


「心配しているようだな」


颯太は立ち止まり、真田先生に向き直った。


「真田先生…やっぱり今日も悠斗君の不整脈が続いていて、どうするべきか悩んでいます。手術翌日よりも頻回に出現するようになっていて」


真田先生は腕を組み、真剣な表情で颯太を見つめた。


「現在の状況を考えると、やはりペースメーカーしかないだろう。石田君の命を守るためには、これが最善の選択だ」


颯太は頷きながらも、まだ不安が残っていた。


「でも、ペースメーカーを入れることで石田君の生活がどう変わるか、心配です。彼の夢も叶えられるのかどうか…」


真田先生は少し微笑みながら、優しく肩に手を置いた。


「颯太、命があってこそなんだ。石田君が元気に生き続けることが最も重要だ。その上で、彼の生活の質をできる限り維持し、夢を追い続ける手助けをすることが医師の役目だ」


真田先生の言葉に、颯太は頷いた。


「そうですよね。命があってこそ…。ペースメーカーの件を木村先生にも相談してみます」


真田先生は満足そうに頷いた。


「その意気だ、颯太。君ならできる。それと、自主トレも忘れるなよ」


颯太は真田先生に向かって笑顔で頷き、再び深呼吸をして気持ちを整え、医局へと向かった。医局に戻ると、木村先生がデスクでカルテを見ながら何かを書き込んでいた。颯太は一息つき、木村先生に声をかけた。


「木村先生、お時間いただけますか?」


木村先生は顔を上げ、微笑みながら頷いた。


「もちろんだ。どうしたんだい?石田君の件かな?」


颯太はデスクに近づき、真剣な表情で話し始めた。


「はい。石田悠斗君の不整脈の件です。手術後から3日が経ちましたが、不整脈が依然としておさまりません。心房細動のリスクが高まり、血栓形成や脳梗塞などの合併症が懸念されます」


木村先生は頷きながら、颯太の話を聞いていた。


「確かに、術後の不整脈は予想していたことだが、ここまで続くとなると心配だな」


「はい。薬物療法を行っていますが、効果が見られません。色々考えたんですが…ペースメーカーの導入を検討すべきだと考えています。悠斗君の命を守るためには、これが最善の方法だと」


木村先生は少し考え込み、カルテを再度確認しながら話を続けた。


「ペースメーカーか…。確かに、石田君の現在の状況を考えると、それが最も安全で効果的な治療法かもしれない。心拍数を調整し、不整脈を防ぐことで、長期的なリスクを減少させることができるだろう」


颯太は真剣な表情で頷いた。木村先生は満足そうに微笑み、颯太の肩を軽く叩いた。


「患者の命を最優先に考え、適切な治療法を選ぶことが医師の責務だ。石田君のために、ペースメーカーの手続きを進めよう。そのためには石田君本人と家族への説明と同意、そして検査が必要だ。神崎君が主導になって動いてくれるかな?」


「わかりました」


木村先生はにっこりと笑顔になり、力強く頷き、カルテに必要な指示を書き込んだ。


翌日、颯太は石田君とその家族にペースメーカーについて説明するため、病室へ向かった。病室の中には石田君と両親が揃って座っていた。石田君は少し不安そうな表情を浮かべていたが、颯太を見ると安心したように微笑んだ。

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