祭壇のある町へやって来たのは、スイを探すためだ。そのためには、祭壇へ行くことが必要だ。
その目的は、旅に出る前からアサリナとルドベキアに話している。だから断られることはないが、アサリナの表情は浮かない。
「どうしたの?」
なにか不都合があるのなら、事前に言ってほしい。
「いやー……どこかの祭壇にいるはずのアオの探している人がさー、いなかったらどーするの?」
「いなかったらって、次の祭壇向かうだけだけど」
アサリナがなにを言いたいのか分からない様子のアオに、アサリナが重要なことを言う。
「そこにいる生贄はどーするの?」
スイはどこかの祭壇にいると踏んでいて、そこにいれば助け出して終わりだ。しかし、スイがいなくても、その祭壇には生贄にされる悪魔憑きがいるのだろう。どのようにしているのかはアサリナも知らないが、その生贄を見捨てることになることだけは理解している。
「そんなの知らない」
「…………」
その時の選択を、アオに問うたアサリナだったが、アオは即答、悩む間すらなかった。アサリナの言っていることを理解していない訳ではなく、理解した上で答えているのだ。
あまりにも冷たいアオの答えに、アサリナの胸を締め付けられる。
まだ出会って間もないが、それでもアオのことはある程度知ったつもりだった。
「それは……ひどいよぉ……」
「別に、酷くない」
アサリナの呟きを叩き落とすアオの言葉。
スイ以外の者などどうでもいい。アオは本気でそう思っている。
新たに知ったアオが、自分の考えとは相容れないものだった。
借りた宿の室内で、重苦しい空気が漂う。
今更アオに手を貸さないなんて言えるはずもない。アサリナはどうすればいいのか頭を抱える。
「そもそも、今更じゃないの?」
「え……?」
アオは心底困った様子で口を開く。
アオ自身は、本気で生贄なんてどうでもいいと考えているが、だからといって、アサリナの気持ちが理解できないという訳ではない。アサリナがいなければ、スイを探すのに時間がかかってしまう。だから、どうにかフォローをしようとする。
「生贄のことを知っていた上で、今まであんた達は過ごしてきたんでしょ? それって見捨ててるってことじゃん。それともなに? 実は心を痛めて過ごしてきたって言うの?」
しかし、それがフォローになるかどうかまでは分からない。
「そうだけどぉ……」
更に顔を曇らせるアサリナを見て、今のはフォローになっていないと理解する。
こういう場合はどうすればいいのか。ここでアオは自分の持つ革袋を思い出す。
「相談」
その革袋を掲げる。
アサリナは首を縦に振り、革袋の中に語りかける。
「ねー、ルドベキア……」