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第74話

 祭壇のある町へやって来たのは、スイを探すためだ。そのためには、祭壇へ行くことが必要だ。


 その目的は、旅に出る前からアサリナとルドベキアに話している。だから断られることはないが、アサリナの表情は浮かない。


「どうしたの?」


 なにか不都合があるのなら、事前に言ってほしい。


「いやー……どこかの祭壇にいるはずのアオの探している人がさー、いなかったらどーするの?」

「いなかったらって、次の祭壇向かうだけだけど」


 アサリナがなにを言いたいのか分からない様子のアオに、アサリナが重要なことを言う。


「そこにいる生贄はどーするの?」


 スイはどこかの祭壇にいると踏んでいて、そこにいれば助け出して終わりだ。しかし、スイがいなくても、その祭壇には生贄にされる悪魔憑きがいるのだろう。どのようにしているのかはアサリナも知らないが、その生贄を見捨てることになることだけは理解している。


「そんなの知らない」

「…………」


 その時の選択を、アオに問うたアサリナだったが、アオは即答、悩む間すらなかった。アサリナの言っていることを理解していない訳ではなく、理解した上で答えているのだ。


 あまりにも冷たいアオの答えに、アサリナの胸を締め付けられる。


 まだ出会って間もないが、それでもアオのことはある程度知ったつもりだった。


「それは……ひどいよぉ……」

「別に、酷くない」


 アサリナの呟きを叩き落とすアオの言葉。


 スイ以外の者などどうでもいい。アオは本気でそう思っている。


 新たに知ったアオが、自分の考えとは相容れないものだった。


 借りた宿の室内で、重苦しい空気が漂う。


 今更アオに手を貸さないなんて言えるはずもない。アサリナはどうすればいいのか頭を抱える。


「そもそも、今更じゃないの?」

「え……?」


 アオは心底困った様子で口を開く。


 アオ自身は、本気で生贄なんてどうでもいいと考えているが、だからといって、アサリナの気持ちが理解できないという訳ではない。アサリナがいなければ、スイを探すのに時間がかかってしまう。だから、どうにかフォローをしようとする。


「生贄のことを知っていた上で、今まであんた達は過ごしてきたんでしょ? それって見捨ててるってことじゃん。それともなに? 実は心を痛めて過ごしてきたって言うの?」


 しかし、それがフォローになるかどうかまでは分からない。


「そうだけどぉ……」


 更に顔を曇らせるアサリナを見て、今のはフォローになっていないと理解する。


 こういう場合はどうすればいいのか。ここでアオは自分の持つ革袋を思い出す。


「相談」


 その革袋を掲げる。


 アサリナは首を縦に振り、革袋の中に語りかける。


「ねー、ルドベキア……」

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