「かわいいプレートが、できたね」
パーク内の食事コーナーで休憩しながら、各々出来上がったものを見せ合う。俺と陽輝は互いの名前を、ハンナちゃんはミアちゃんのものを、そしてミアちゃんは陽輝のものを作った。
『ミア、ハルキにプレートを渡さなくていいの?』
『渡す! はい、ハルキ!』
ミアちゃんにプレゼントをもらった陽輝は、照れているのか、何とも言えない表情をしていた。
『ありがとう。大事にする』
ミアちゃんが嬉しそうに笑う。喜んでいるみたいで良かった。
「陽輝良かったね。プレゼント」
「うん」
「ねえねえ。俺のプレートも見て? ここ、パフェのパーツ付けたんだ。陽輝と言えば甘いものだよねえ」
「俺は、煎餅と犬のパーツを付けた。和也のイメージに合うものがなかなか見つからなくて、迷ったけどこれにした」
若干納得がいかない様子の陽輝。
「何かもっとうまく作りたかったな」
そんな感じで陽輝と話していると、ミアちゃんがこちらをじっと見ている。
『ハルキは私の作ったのより、カズヤのプレートがうれしいの?』
陽輝に分かるように英語で話すミアちゃん。何だか彼女が泣きそうに見えて、慌てて俺が間に入る。
『あーあのね。ミアちゃんからのプレゼント嬉しいよね? 陽輝!』
『あ、うん。でも、正直和也からの方が嬉しいのは事実で……』
『ちょっと、陽輝! そんな言い方は……』
見かねたらしいハンナちゃんが俺達と彼女との間に割ってはいる。
『ミーア! 二人の邪魔しちゃダメよ? カズヤはハルキのパートナーなんだから、嬉しいのは当たり前でしょ』
そう言われ、ミアちゃんは顔を真っ赤にする。次第にぽろぽろと泣き出してしまった。
『ううーっ……!』
『もうほら、涙拭いて! お姉さんでしょ?』
ハンナちゃんが困った顔をしながら、ハンカチを取り出し、ミアちゃんの顔に近づけるも『やだ!』と振り払われた。これに、父親のリオンさんが反応した。
『こら、ミア。ママに謝りなさい』
『いや!』
『ミア! わがままを言うな』
『やだ! ママもパパもきらい! おじいちゃんも! みんなきらいだもん!!』
そう言うと、フードコートの出口に向かって走り出してしまった。
『ミア! 待ちなさい!』
リオンさんが、彼女を追いかけて席を立つ。
残されたのは、俺と陽輝、ハンナちゃんとクルトおじさんとニコーレおばさん。
『なぜ俺まで……』
さらっと巻き込まれたおじさんが、ダメージを受け、おばさんがそれをなだめている。
『ミアったら全く……ごめんね二人とも。あの子、普段こんなじゃないんだけど……』
そう言い、ハンナちゃんが立ち上がる。
『ちょっと心配だから見てくるね』
『うん。お願いねハンナちゃん』
「何が起こったんだ? 途中からドイツ語になっててよく分からなかったんだけど……」
一人ポカンとしている陽輝。全くもう。
「陽輝、ちょっと言い方良くなかったよ。ミアちゃん、陽輝のこと気に入ったみたいだからさ、優しくしてあげないと」
「え、もしかして俺のせい?」
「うーん、火種を作ったのは陽輝かも」
そして、ふとミアちゃんは陽輝を恋愛的な意味で好きなのではないかという考えがよぎる。それならライバルの俺に対して厳しい対応なのも納得できる。
その仮説を、目の前のおじさんとおばさんにも話して見ることにした。すると。
『あらやだ、カズヤは気が付いてなかったの?』
ニコーレおばさんは口に手を当てて、意外そうに俺を見た。
『あんなにアピールしていたのに』
『そんなに分かりやすかった?』
『子供と言っても、女の子だもの。ましてやハルキは良い男だからね』
『そうなんだ……でも俺と陽輝はパートナーなのに、何か複雑』
『そうよね。ごめんなさいね、カズヤ』
困ったように眉尻を下げるおばさんを慌ててフォローした。
『まあいいけど。それにしても、ハンナちゃん達大丈夫かな。ミアちゃんに追いつけたかな』
『おい待て待て、ミアはハルキが好きなのか?』
『クルト、あなたも気が付いてなかったのね……』
すると、俺の携帯電話が震える。画面を見ればハンナちゃんからだ。
『どうしたの? 大丈夫……』
『カズヤ! ミアがどこにもいないの。そっちに戻ってきてない?』
『ええ! いないよ』
『そう……建物の外に出てなければいいんだけど』
『とにかく、俺達も探すよ。みんなで探したらきっと見つかる。落ち着いて? ハンナちゃん』
電話を切ると、他の三人にも彼女がはぐれた事を伝えた。
「パークのキャストにも伝えた方が良いんじゃないか?」
「確かに! 俺伝えるからさ、陽輝もミアちゃんを探してきて」
その後。おじさんとおばさんは俺と行動を共にして、陽輝は単独で捜索に行くことになった。
俺(和也)は近くの女性キャストに迷子の事を伝え、自分も引き続き捜索していた。建物内が割と細かく仕切られているし、他の観光客に交じって見つからない
(日本で外国人は目立つかと思ったけど、ここでは外国人観光客の方が多いかも。まずいな)
女子トイレの中をおばさんに見てもらったり、ショーの行われる広いスペースを名前を呼びながら探す。見つからない。時間がどんどん経過していく気がした。
「カズヤ。もしかしてなんだけど……」
ニコーレおばさんが、俺を呼び止める。
「どうしたの?」
「ミアはあなたの事、恋のライバルみたいに思ってると思うの。だから、カズヤが呼んでも出てこないかもと思って……ごめんなさいね。もちろん探してくれるのはとってもありがたいのよ?」
つまり、俺が彼女を呼べば呼ぶほど、ミアちゃんは嫌がって隠れてしまうということか。
「じゃあ、俺は黙って周りを見ていた方が良いかもしれないね。ありがとう、おばさん」
「失礼なことを言ってごめんなさいね、カズヤ」
「いや、俺の方こそ気が付かなくてごめん」
そうとなれば、声かけは二人に任せて、俺は周りを見ることにした。ミアちゃんの髪は茶色で、長さはボブくらいのものを二つに結んでいる。服は確かピンクの総柄ワンピース。
(知らない土地で一人ぼっちなんて心細いだろうな。早く見つけてあげないと……)