俺は、リコとこの先のことを話し合う。
「だけどどうする。わたしが魔王への復権を果たすには、わたしが力を取り戻すしかない。つまり、エーテルの鍵の力が必要。でも……」
「あぁ、壊されたな。あの変な喋り方のメイドに」
俺は真っ二つに割れたエーテルの鍵を拾いながらそう言う。
「イヴのことヘンいうな。叩くぞ」
リコに頭を叩かれた。動作は可愛げだが、腐っても魔族だから結構痛い。
「もう叩いてる。ってか、お前はそのイヴに力を封印されたんだろ。恨みはないのかよ」
「無い。……パパがわたしを見限る判断をしたなら、イヴの行動は理にかなってる」
「ふーん。まあいいがな」
「それより、エーテルの鍵だ。イヴレベルの封印は、エーテルの鍵でないと解けないハズだ」
「なるほど。……ならとりあえず、クルトさんあたりに解決の術を聞いてみるか」
俺の言葉に、怪訝な顔をしながらもリコは頷いた。先ほど俺についてこいと大口を叩いておいて、いきなりクルトさん頼み……まあ情けなくはあるから何も言い返せない。
そうして、祭りの後の──それは本来の静けさを取り戻した森を後にするのだった。
村に戻ると、既に避難していた住民は戻ってきているようだった。皆それぞれ、未だ先ほどの恐怖に心乱れた様子ではあったが、とはいえ安堵の表情も浮かべていた。
住民は続々と俺の方へやってきて、「勇者様、勇者様」とか「ありがたやありがたや」と崇め奉るような態度で感謝された。それは悪い気はもちろんしなかった。
勝手に逃げ出したリコに対しては、やはりどう接していいか分からないといった態度の住民も多かったが……今すぐひっ捕らえろ、みたいな感情は抱いてはいなさそうだった。
そんなリコなのだが……。
「まああの森のバケモノを倒したのはわたしなんだけどな」
と、気にせず胸を張って猛アピールしていた。魔王がバケモノを倒したなどと言っても誰も信じてはいなかったが……。
何はともあれ、俺は称賛の雨を浴びながら、本題早速クルトさんに話を聞くことに。
彼もまたリコを見て困惑していたが、とりあえず教会に3人で入った。
リコのことは後で説明すると言って、先にエーテルの鍵を見せた。
すると……。
「え、エーテルの鍵って壊れるの!?」
めちゃめちゃ驚かれた。本当に予想だにできないらしい。
「どうにかして直す方法は?」
そう、俺は聞くも……。
「いやいや、エーテルの鍵は勇者様だけが使える崇高なもの! 仮に直せる道具、たとい魔法があったとしたら、それは勇者様より崇高であることになり、矛盾が発生してしまうではございませんか!」
そう言われた。
なるほど。これは故事の『矛盾』を体現しているなと思った。
「よし、利害の一致はここに崩壊した。さようなら」
リコがそう言いながら背を向ける。俺は慌てて首根っこを掴んだ。
「待て待て。なにかいい方法があるかもしれないぞ。な? クルトさん?」
あまりにもロリボディに似合わぬ力に逆に引っ張られそうになりながら、俺は訊く。
「いや無いじゃろ」
クルトさんに即答された。
「さようなら」
さらに強い力で引っ張られる。
「待てって。どうせ行く当ても無いんだろ?」
「なぜ止める。お前、どれだけわたしが好きなんだ」
「はは、好きならお前を殺そうとしないわ、勘違いするな」
「ふんっ、コロしたいほど好きなんだろ? お前、トクシュな性癖とか持ってそうな顔だもんな」
「特殊な性癖顔!? リコの悪口いつも火力高すぎないか!?」
それこそ、特殊性癖でなければリコと仲睦まじくやるのは難しいくらいだろ……。
と、そんな俺たちのやり取りに興味一つ示さないクルトさんが口を開く。
「ラマレーン様なら、何か知ってるかもしれぬが……」
そう言って、腕を組む。ちらちらと、リコの方を見る。
その答えを、リコが悪びれもなく口にする。
「うーん、ラマレーンはわたしがコロしたからな」
俺たちの旅は、最初から前途多難を極めそうであった……。