翌日。久しぶりに米津に話しかけられた。
「最近、ミス研ってどうなの? 何か変わったことはあった?」
「いや特に何も……というか、お前まさかまだ入る気があるのか……?」
「まさか、聞いただけだよ。望月さん、元気がなさそうに見えたから。でも本人に訊いても答えてくれないだろうし。だから別方向からアプローチしてみたんだ。何もないなら、それで良い」
望月に元気がない様に見えるのは、恐らく米津くらい長いこと望月を見てきた人間くらいだろう。俺でも気がつかなかった。
「望月ってそんなに元気がなさそうに見えるのか?」
「うん、とても。逆に、あんなに普段と雰囲気違うのにわからないものなの?」
全くわからない。それこそが望月の強みである演技力なのだろうが……。仲間にくらい打ち明けてくれたっていいじゃないか。
「何処が普段と違った?」
今後の参考の為にも訊いておきたい。仲間の不調を察知するのも、リーダーの役目だ。
「そうだなぁ……纏ってる雰囲気、かな。後は仕草とか……」
「なるほど」
とは言っても、全然わからない。米津は結構ちゃんと望月のこと見ているんだな。学校内では目立つ存在だし、当然と言えば当然か。
「あ、僕はやることがあるからここで。部活頑張って」
「あ、あぁ……。ありがとう」
俺は部室棟へ急いだ。望月の様子を確認するために。部室のドアを開けると、いつも通りの望月が居た。全く違いがわからない……。
「遅いぞ、夢野」
「悪い悪い、米津に捕まってさ」
「米津くんに? また珍しいこともあるものね」
望月の目が一瞬逸れた。なるほど、米津の観察ってこういう細かいところまで見ているのか。それにしても、何故今目を逸らしたのか理解できない。実は米津が好きとか? いや、彼の見た目がまともになったところで望月が人に恋愛感情を抱く図が想像できない。では何故……これ以上考えても仕方がない。俺は考えるのをやめた。
「夢野くんも揃ったことですし、これからの活動方針についてお話ししようと思います!」
皆が頷いたので、俺も慌てて頷く。
「先日の様に情報がまとまっていないと、またスパイ説が浮上するので……。ここら辺で一度、清水時雨さんについて情報を整理してみましょう」
「そうだな」
清水時雨。夢の中では男性。赤く鋭い瞳が特徴的な、美青年。夢の中で何か目的があって、その為に動いていた。夢の中の事故で、死亡したと思われていたのだがここにきて生きている説が浮上した。
部員の意見をまとめると、ざっとこんな感じだった。ここでキーになるのは、清水時雨の目的だ。望月への過剰な執着も、目的への手段だったと考えれば辻褄が合う。
「清水時雨の目的、望月なら知っているんじゃないか?」
奴がそんな簡単に目的をバラすとは思えないが、一応訊いてみる。
「……断片的になら。彼、誰だかはわからないけど一人の女性に固執しているみたいなの。私にも執拗にその女性の真似をしてくれって頼んできたわ。でも、恐らくその女性はもうこの世には居ないのよ。それか、酷い別れ方をしたとか。そうじゃないと考えられない状況でしょう?」
あの時望月が変身していた女性は、清水時雨にとって大事な存在らしい。まだ憶測の域を出ないが。奴の核心に迫っている手ごたえはある。後は、その女性が誰なのかを特定できればいいのだが……。ここで手詰まりだ。
「名前ならわかるわ。アマギヒナ。それが、彼の求める女性の名前」
「アマギヒナ……」
聞いたことのない名前だ。それはこの場の全員がそうだった様で、誰も言葉を発しない。
「……そうだ、おじさんに相談するのはどうかな? ここで悩んでいても何も進まないよ」
「そうだな……」
確かに、奴らと戦ったことのあるおじさんなら何らかの情報を持っている可能性がある。俺たちは月谷ネットカフェへと向かった。