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第114話

 放課後。再び部室に集まり、情報収集の方法を考えることにした。

「誰か、意見はあるか?」

 俺がそう呼びかけると、望月が手を挙げた。

「もし仮に校内にトワイライト・ゾーンの人間が居るのなら、またこちらに接触してくるのは間違いないわ。肝心の部長を潰すために。それなら今は、無理に探すより向こうからの接触を待った方が良いと思うの」

「なるほど……」

 一理ある。だが、それではいつ月影が戻ってくるかわからない。もう少し、早いこと事態が進まないものか。

「夢野、焦る気持ちはわかるが僕は望月の案に賛成だ。向こうは必ず貴様を狙ってくるだろう。潜入できる唯一のチャンスは、夢野。貴様にしか与えられていない」

「……」

 咲夜は心配そうに俺を見つめていた。何も言わないということは、恐らく望月に賛成なのだろう。ここまで来たら、俺が折れるしかない。

「わかった。待とう。向こうだって月影一人を人質にとっているだけで、特別優位じゃないしな」

 こうして、辛抱の日々が始まった。といっても、男子高校生としての日常に変化があった訳ではない。普通にクラスメイトと食事をしたり、馬鹿話をしているだけだ。望月の案を信じて、俺は道化を演じるまでだ。


 転機があったのは、一週間後のことだった。

「夢野くん、少しいいですか?」

「? はい……」

 浅野先生に声をかけられた。勿論、顧問かつ担任なのだからその行為そのものがおかしな訳ではない。問題はその内容だった。

「月影さんに、届け物をしてほしいんです。入院生活も長くなってきましたし。本来なら、小生が行くべきなのですがこう見えても忙しいので。代わりに頼まれてくれませんか? このDVDだけなので」

 有無を言わさず、DVDを手渡された。恐らくは授業内容が入ったものなのだろう。

「あ、でも先生。月影って何処に入院しているんですか?」

「それはですね——」

 言葉を全て聞きとることは出来なかった。何故なら、背後から殴打されたからだ。遠のく意識の中で、「何でもかんでも信用するもんじゃねーよ」という何処かで聞いた声だけが反響していた。


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