文化祭明けの学校は、お祭り騒ぎの熱気をまだ纏っている。今日は一日文化祭の後片付けなので、俺たちは早く終えることが出来た。終わった生徒は帰宅していいので、折角だしおじさんのところに行くことにした。この時間だったら、昼食を作ってくれるかもしれない。おじさんの料理は、簡素だが美味しい。久しぶりに食べるおじさんの手料理にワクワクしながら、五人でおじさんのところへ向かった。
「今日は随分と早いな。ああそうか、文化祭の片づけか」
おじさんも、同じ学校の卒業生なので理解が早くて助かる。
「そういうこと」
「簡単なものならすぐ作れるから食べていくといい。皆で食べるか?」
「そうだな」
頷くと、おじさんはキッチンへと姿を消した。本来ネットカフェであるこの場所は、利用客の部屋の奥におじさんや俺たちのスペースがある。キッチンがあるのはおじさんの家部分で、俺たちがいる共有スペースの更に奥だ。
運ばれてきた料理は、サンドイッチだった。目を光らせる月影を見ると、よっぽど腹が減っていたんだなと思う。もっとも、それは俺たちも同じだ。サンドイッチの具材はシンプルにたまご、トマト、レタスなどだ。
「いただきまーす」
そう挨拶し一口頬張ると、レタスのシャキシャキした触感が美味しい。やっぱりおじさんの料理に外れはない。隠し味に塗られているバターも、程よい塩味で食欲を刺激してくれる。
「美味しいです! 月谷さんは料理がお上手なのですね」
驚いたように月影が言う。確かに、咲夜と俺以外は初めておじさんの料理を食べるのか。新鮮な反応が見られるのは、少し面白い。
「上手って程でもないさ。ずっと独身だから、自分が作らないと誰もやってくれないんだよ」
思えば、おじさんに浮いた話があったことはない。別に不細工ではないし、料理も出来るし悪くないと思うのだが……。やっぱりトワイライト・ゾーンとの対決があるから人を遠ざけていたのだろうか。だとしたら、ますます奴らを許すわけにはいかない。元からそういう主義ならともかく、存在しているだけで何人もの人生を奪っているなんて。何て組織だ。
「獏? どうした? もう腹いっぱいか?」
おじさんに言われて、自分の食べる手が止まっていたことに気がつく。
「いや、ちょっと考え事」
再び食べ始めると、おじさんは「そうか」と一言呟いた。