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第65話

 ある日の放課後、退治もマンネリ化してきたなと思い始めた頃のことだった。

「そろそろ文化祭ですね~!」

 時は十月。確かに、来月に向けてクラスの方では毎日作業が行われている。月影と俺は、それを無視して部室に居るのだが。というか、俺と月影だけでなく風紀委員の咲夜以外は皆部室に居る。その方が、居心地が良いことを知っているからだ。

「それがどうしたんだ、僕には関係ないな」

 最早ツッコむ気さえ起きないが、暁人はメープルバタークッキーを食べながらそう言ってのけた。

「文化祭、か……皆青春って感じだよな。俺には関係ないけど」

 月影と行動することによって、ロリコン疑惑がある俺だ。文化祭でひやかされる可能性を考えたら、最初からその場に居ない方が良いだろう。

「関係ありますぞ、この部活は出し物をしないのですか?」

 急に聞こえた浅野先生の声。振り向くと、ドアを開いて先生が入ってきた。それにしても、気配を一切感じなかった。何者なのだろう、この先生。

「今のところ、予定はありません」

 望月が提案を一蹴すると、先生は残念そうに

「そうですか。折角なので、何かやろうとは考えずにここに居るってことですね」

「まあ……はい」

 そう言われると、こちらが悪いかのように思えてくる。青春をどう過ごそうが本来俺たちの勝手なのだが、先生は心配みたいだ。

「まあ、小生はただのおせっかいでここまで来ただけです。皆さんにその気がないなら強制もしませんし。文化祭が嫌というのは、小生もよくわかりますから」

 先生は、それだけ言い終えて出て行った。

「出し物、ね……何をやるにしても、私は裏方が良いわ」

 確かに、望月目当てで来るファンは居るだろう。彼女がそれを煩わしく思っているのもわかる。ロングヘアだった頃より、今の方が女子受けはいいらしい。それが何故かなのかは、俺にはわかりかねる。

「そうだな。ミステリーに関わる出し物といえば……謎解きとかどうだ?」

 謎解きは、簡単なものにすれば子どもでも楽しめるし、誰が裏方でも問題なく回せるはずだ。

「良いんじゃないか、夢野。それなら、謎は僕が中心になって考えよう」

 皆、先生のおかげなのかはわからないが文化祭に興味を示し始めた。

「じゃあ、私が表に立ちます~! 小さい子だったら、親近感とか湧くんじゃないでしょうか?」

「なら、俺と咲夜で景品を用意するか。おじさんのカフェにあるもので不用品を調達することにするよ。咲夜にも伝えとく」

 初めての文化祭で、俺たちは少し浮かれていた。子どもでも解けるような謎、景品の調達。順調に準備が進み、あっという間に文化祭前日になった。

「突貫工事の割には、中々良いんじゃないか?」

 問題があるとすれば、集客だ。この部室棟は、様々な部活が出店している割に本館から遠い。どれくらい人が入るかは、本番にならないと予想がつかない。

「夢野くん、不安ですか?」

「まあ、な」

 月影には、俺の心が見透かされている気がする。

「大丈夫だよ! 今日まで頑張って来たんだし、きっとお客さんも楽しんでくれるよ」

 咲夜は、こちらを見ながら微笑んだ。それにつられ、俺の表情も和らぐ。

「じゃあ、明日に備えて今日は解散にしましょう~! 皆さん、ちゃんと休んでくださいね」

 月影の言葉で、今日は解散になった。明日は絶対成功させよう。俺だけの文化祭じゃないんだし。


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