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第63話

 どうも釈然としないまま、目を開ける。今回の悪夢は、本当にこれで終わりなのだろうか?

 それは他のメンバーも同じことを思っていたみたいで、皆顔が曇っていた。

「やけにあっさりした悪夢だったね……」

 咲夜が言う。

「そうだな。何か裏があるんじゃないか? 例えば、毛利先輩が浮気をしていて、その現場を見てしまって病んでいるとか」

 暁人のこの論は、一理ある。かもしれない。もう一度、情報を集める必要がありそうだ。

「確かに放課後の毛利先輩は尾行してなかったわ。今日、することにするわね」

「私たちも、美麻さんや双子さんから情報を集めてみます!」

「決まりだな。じゃあ、朝に備えて解散しよう」

 俺の一言で、解散になった。しかし、後楽園美麻。思うように情報が集まるだろうか?


***


 翌日の昼、美麻は隣のクラスで友人たちと共に弁当を食べていた。女子の間に割って入るのに躊躇していると、「私が行ってきます~!」と月影が教室に入っていった。暁人はというと、餡パンを食べていた。普段と全く変わらないのが、一周まわって羨ましい。

 しばらくすると、美麻を連れて月影が帰ってきた。

「あの、用事と言うのは何でしょう?」

 不審者を見る目をされた。二日連続で呼び出されているのだから、当たり前と言われればそうかもしれない。

「単刀直入に訊くけど、お姉さん……桃さん、の彼氏ってわかるか」

「ああはい、毛利先輩ですよね。会ったことあります」

 美麻は敬語を崩さず答えた。彼女は誰に対しても、きっとこうなのだろう。

「その毛利先輩なんだが、浮気してるとかそういった話を聞いたことはないか? 何でもいい、些細なことでいいんだ」

 まくしたてる様に喋ってしまった。美麻は少し考え込んでいる素振りを見せてから、

「最近、姉さんと一緒に帰っていないとは聞きました。姉さんがぼやいていたから。でも、それ以上のことは知りません。前は部活が終わるまで待っていてくれたのに、って」

 暁人の説が、現実味を帯びてきた。嫌な感じだ。

「ありがとな。じゃあ、俺たちはこれで」

 放課後に、もう一度情報をすり合わせよう。俺たちは美麻に背を向け、歩き出した。

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