五人で剣道場の隅に集まる。一番に話し出したのは、暁人だった。
「桃先輩は、酷く大きな声でうなされているらしい。それに、剣を持つときに手が震えている、と」
「美麻さんからの情報? 私たちもそれは聞いたわ。皆、気がついているけど黙っているみたいね」
望月と咲夜の話も、似たり寄ったりだ。妹相手にも、自身の弱点を晒すのには抵抗があるらしい。豪傑で知られる桃先輩なら、あり得ない話ではないかもしれないが。
「ああ、でももう一つ。これは夢とは関係ないかもしれないけれど、彼女が髪を伸ばし始めたのは高校に入ってからだそうよ。何でも、好きな人が出来た、とか」
「その相手は誰なんだ?」
食い気味に訊いてしまった。望月は落ち着き払って口を開く。
「毛利先輩よ、三年の。今は付き合っているみたい。告白は……桃先輩からしたんでしょうね」
その名前には、心当たりが全くない。なんせ生徒数が横浜最大級の学校だ。本来、名前が知れ渡っている人間の方がレアである。
「もう一日だけ時間をくれれば、夢の中で毛利先輩になって決闘を止められるかも」
早く解決したいのはやまやまだが、準備不足のまま突っ込んで失敗した過去がある以上急ぐことは出来ない。
「わかった。頼んだぞ、望月」
今回の夢の攻略は、望月にかかっているのかもしれない。後は俺たちが、どれだけサポートできるか、だ。
いつまでも剣道場に居ても怪しまれるので、ここを後にした。