言い争っていたら、段々と相手が早口になってきた。これはチャンスだ。それだけ、余裕がないのだろう。
こっそり望月を観察していると、急に目を見開いたから驚いて「わっ」と声が出てしまった。東川が俺の視線の先を確認すると、硬直してしまった。
「あら、皆。居たのね」
今までの望月に比べて、声が柔らかい。俺たちの前でも気を張っていたのか、と少し悲しくなりながらも変化を肯定的に受け入れることにした。
「望月さん、起きたということは僕と一緒になるってことですか?」
「いいえ、私の居場所はもうあるもの。そうでしょう、皆」
東川の顔が青ざめる。
「おかえり!」
咲夜が言うと、望月ははにかんだ。
「じゃあ、望月が起きたところで……悪い子にはお仕置きだな」
「ああ」
「うん!」
東川は逃げようとしたが、時既に遅し。俺たちに囲まれ、逃げ場を失くした東川は
「何でもするので、お許しを……!」
と必死に頼み込んでいる。
「じゃあ、これで勘弁してやるよ。悪ガキ」
鳩尾に一発くらわせて、望月に駆け寄る。怪我はしていなさそうだ。
「無事で良かった」
「ごめんなさい、心配かけたわね。でも、もう大丈夫。私は私の道を行くって決めたから」
望月にどんな心境の変化があったのか、俺は知ることが出来ない。知ろうとも思わない。
「じゃあ、そろそろ。食らうぞ、この悪夢!」
視界が暗転する。これで望月は、明日から学校に来るだろう。一気に身体の力が抜ける感覚があった。