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第51話

 深夜零時、望月救出のために四人で集まった。一人欠けているというのはやはり寂しさと悲しさがあるが、これから救出するんだと心を入れ替える。

 望月のいない点呼をとり、目を瞑る。月影に先導されるがままに進むと、

「学校……!?」

 俺たちの通う月見野学園高校がそびえ立っていた。月影が「こっちです〜!」と中へ入っていく。それに続いて俺たちも中に入ると、本物の学校と変わらないくらい精細な再現度で、夢が存在している。

「望月がいるとしたらどこだ……?」

 演劇部の部室とか、教室とか候補が多い。とりあえず一つ一つ見て回ることにしたが、事態は一刻を争う。走って演劇部の部室へ向かった。

「ここではない、か……」

 部室に人影はなかった。となると、比較的近い俺たちの部室の可能性もある。一応見ておこう。

俺たちの部室のドアを開けても、やはり人の気配はない。だとしたら、残るは望月の教室くらいか。走り疲れてきたが、これも望月のため。息切れを起こしながらも教室に辿り着くと、人の気配があった。

「……アタリだな」

 そこに居たのは望月と、純粋無垢な瞳をした少年だった。

「あーあ、気がつかれちゃいましたか」

 少年がこちらに歩み寄ってくる。歩幅は小さく、小学校高学年くらいに見える。

「お前、何者だ?」

「お静かに。彼女は寝てますから。それに名前を聞く時は、自分から名乗るのがルールでしょう? ……と言いますが、僕はあなた方のことをあらかじめ調べておきました。名乗らなくても大丈夫ですよ。

 僕の名前は東川颯。貴方は夢野獏さんと、そのお仲間さんですね」

 望月を観察すると、確かに寝ている。今までになく綻んだ顔で。これが望月の本来の姿なのだろうか。

「……望月に何をした?」

「彼女とは、契約を交わそうと思っただけです。ただ、彼女が時間をくれというのであげたら案の定、見つかっちゃったんですけど」

「契約?」

「僕の口からは言えません。聞くなら彼女から聞いてください」

 東川は、そう言うが早いか俺の鳩尾目がけて突進してきた。油断していた俺はそれを食らってしまい、倒れ込む。

「警戒してましたけど……この程度ですか?」

「まだまだ!」

 今度は咲夜が少年に向かって攻撃する。武器は、細長い髪飾り。目潰しにでも利用するつもりなのだろう。それとヘアピン。こちらはダーツの様に使用するのだと思われる。

「小学生相手に酷いですよ!」

 そう言いながらヘアピンを躱していく東川。夢の中に小学生として出現しているからって、同じ姿とは限らない。というか、こんな小学生いたら嫌だ。

「いっけー!」

 咲夜は相手の懐に飛び込み、髪飾りを突き立てる。

「痛っ! しかも目が、目がっ……僕にこんなことして良いんですか!? 今の彼女の生殺与奪の権利は、僕が握ってるのに」

 そう言われてしまうと、こちらとしては一度引き下がるしかない。

「お前、望月をどうするつもりなんだよ……!」

 冷静になろうと思い、深呼吸をして訊ねる。

「そうですね……今の彼女は不自由で、見ていて可哀想じゃないですか。だから、彼女を自由にしようと思いまして」

「見ていて可哀想? 僕は、その様な目で見られている方がよほど可哀想だと思うがな」

 暁人の言う通りだ。望月は、そんなことを望んでいる訳ではないだろうに。

「どうでしょうね? 僕は、彼女のことは高く評価してますよ」

 やり取りをしている最中も、望月を観察する。ぴくりとも動かず、寝息を立てている。望月が自分のことをどう思っているか、俺には理解できないが。今ここで起きて欲しいのは本心だ。その願いも届かず、彼女は眠り続けている。



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