普通に眠っていた、つもりだった。私が夢を見るときは基本的に悪夢と決まっていて、今回もそうなのだろうと思いながら辺りを見回す。
「学校……かしら? 誰もいないけれど」
今回の夢の舞台は学校らしい。そう認識した時に、声が聞こえた。
「ちょっと良いですか?」
振り返ると、まだ小学生くらいの男の子が立っていた。本当に、どこにでもいそうな男の子。身長も、私より低い。
「何かしら」
もしかして、昨日のことに関する続き……? そんなことを思いながら問い返してみる。
「望月さん、ダメじゃないですか。このことは僕らとあなたの秘密だって言ったのに。あの調子じゃバレちゃいますよ」
「ご、ごめんなさい……」
反射で謝ってしまう。
「まあ、良いです。それで、考えてくれました? 僕らならあなたのこと、自由に出来ますよ。両親からの束縛も、学校の皆からの期待もない自由な世界に惹かれているんでしょう?」
「……」
確かにその通りだ。私は、もっと自由になりたい。そう願って生きてきた。厳格な両親に、演劇部だった頃からのファン達。全てが私を縛り付けているのは明確だった。
「その沈黙は、肯定ですか?」
「……もう少し、時間を頂戴」
脳裏に、ドリームイーターズの皆の顔が浮かぶ。彼らは私が裏切ったら、何というのかしら。心配、してくれるかな。
「もう少しと言わず、もっと一緒にいましょうよ。僕とあなたの仲でしょう?」
しまった、と思うには遅すぎた。覚醒できない。夢の中なら能力が使えるが、五人揃っていないしこんなところで変身しても仕方がない。完全に嵌められた。自分の不甲斐なさに腹が立つ。私はまた、誰かに助けを求めることになるのか。……それは、嫌だ。
しかし、どうしようもないのが現状だ。今はただ、助けを待つしかないだろう。少年を問いただすのは、私よりも副部長の方が適任な気もするし。今は、今だけは周囲から解放されているのだから表情も取り繕わず眠ろう。……眠る時にまで気を遣っていたなんて、変な話だわ。