次の日の放課後。今日も任務はなかったので、だらだらと駄弁りながら課題をこなしたり喋ったりしていた。ただ、望月がそわそわしているのが気にかかる。
「おい望月、何かあったのか?」
訊いてみても、
「いいえ副部長、何もないわ」
と返されては打つ手がない。
「そうか……困ったら相談してくれよ。俺たち、仲間なんだからさ」
「ええ、そうね……」
その間もずっと挙動不審なので、余計に心配してしまう。が、本人が話したがらないなら無理に口を割らせなくても良いかと考え直す。
部活動の時間が終了する鐘の音が校内に響くと、運動部も文化部も一斉に学校から出ていく。俺たちもその流れに便乗して、帰ろうとしたその時だった。
ゴン、ゴンと鈍い音が後ろから聞こえたのは。
振り返ると、望月が机に頭をぶつけていた。何回かぶつけたのか、彼女の額にはうっすらと痣が見える。
「望月、何やってるんだ!?」
「ごめんなさい、副部長。何でもないの……」
何でもない訳はないのだが、問いただしても黙られるだけだろう。
「望月、帰るぞ」
暁人の言葉でようやく少しは落ち着いたのか、「ええ」と短く返事をし望月は立ち上がった。
何もなければ良いのだが。