上手く出来るか不安だったが、どうやら成功したらしい。汗に濡れた制服が、肌にひっついて気持ち悪い。
「大丈夫? 凄くうなされてたけど……」
新海先生が、心配そうにこちらを見てくる。そこに悪意の色はなく、先ほどの女と新海先生が同一人物なのか疑わしくなってきた。先生は三つ編みを揺らしながら問う。
「今日はもう、早退したら? 親御さんにも連絡を入れるから。えーと、夢野くんね……」
先生は個人情報満載のファイルを取り出し、俺の名前を探し始めた。しばらく無言が続いた後、「あった、これで間違いないよね?」と親の電話番号を確認された。
「はい、そうです」
「良かった、じゃあ電話かけるから待ってて貰える?」
先生は電話機を操作し、親に連絡を取り始めた。
それにしても、不甲斐ない。やっぱり俺一人じゃ奴らに勝つのは厳しい。五人いてこそのドリーム・イーターズだ。俺は能力が強力で、かつ脱出用の能力だったから良かったものの……他の皆のことを考えるとゾッとする。月影は何とかなりそうだが。
「獏、学校で倒れるなんて大丈夫なの? 先生、お世話になりました」
間もなく迎えに来た母親に、心配をかけてしまったことを悔いる。俺も先生に一礼し、保健室を後にした。
「いつでも来てもらって、大丈夫だからね。夢野くん」
そう放たれた声は、柔らかく聞き心地の良いものだった。あの女は異なる、全てを包み込む声。これはこれで、危険な気がしなくもない。