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第42話

 キャンプ場にいた。まださほど皴のない月谷おじさんと、幼い頃の咲夜と俺。これは、初めてのキャンプか?そこまではわからないが、どうやら俺は夢を見ているらしい。小さな体で木材を集め、焚火をする。俺の手ってこんなに小さかったんだな。

 この頃は、キャンピングカーを持っているおじさんを大金持ちだと勘違いしていたっけ。懐かしい。

「二人とも、よく頑張ったな! さぁ、お待ちかねの食事の時間だぞ」

 野菜、肉、デザートのためのマシュマロ。おじさんとのキャンプではいつもこのメニューだ。他にキャンプをしたのは、学校行事だけなのであまり比較は出来ないが。

「「いただきまーす!」」

 手を合わせて、肉にかぶりついた。肉汁が溢れ出て、美味しい。

「獏、野菜も食べるんだぞ」

「はーい」

 咲夜の方はと言うと、デザートが待ちきれないと言った様子だった。落ち着きがない。

「この時間がずっと続けばいいのになぁ」

ぼそっと声に出してみる。すると、おじさんの顔が歪んだ。

「本当に、ずっと続かせることも出来るぞ」

 これは、おじさんじゃない。直感でそう思ったが、どうやってこの状況を打破すれば良いのかわからない。自分で自分の夢を食うことが出来るのかもわからなかったし、これは奴らの介入があるという確信があるから出来れば逃したくない。やるんだ。覚悟を決めろ、夢野獏。

「食らうぞ、この悪夢———」

「あら、食べていいの? 貴方たちは、トワイライト・ゾーンの一人を倒して浮かばれてるってところなのかしら」

 声のした方角に振り向くと、白いワンピースと黒髪がよく似合う美女が居た。

「……お前も、トワイライト・ゾーンなのか?」

「口の利き方には気をつけた方が良いわよ。でも、正解ね。私は貴方を始末するためにこの夢を見せている。ここでの貴方は、一人よ」

長い黒髪をかきあげて、余裕そうな態度の女。

「……でも、お前を倒せば出られるんだよな」

「そうね。だけど、暴力は勧めないわ。今この夢の主導権を握っているのは私なんだから」

 どうしたらいいのか考えてみても、これはもう外からの介入がない限り脱出は難しいだろう。ドリーム・イーターズの皆に賭けるしかない。俺は今ここでピンチだと、誰かに伝われば————

「残念だけど、保健室で寝ている貴方に助けは来ないと思うわ」

「……おい、待て。何で俺が保健室で寝ていることを知ってるんだよ」

「何でかは、自分で考えることね」

 可能性としては、見た目は全く違うが新海先生がこいつである、というのが最も有力だろう。それなら全ての行動の辻褄も合うし。だとしたら、トワイライト・ゾーンはこの学校に刺客を放っていることになる。思ったより影響力の大きな組織なのかもしれない。正直、怖い。そんな組織と戦って、無事でいられる訳がない。だが、ここでこいつを倒さないことにはそもそも目覚めることが出来ない。やるんだ、夢野獏。

「食うぞ」

「忠告はしたわよ。どうなっても知らないから」

「……お前は食わない。食うのは、俺だけだ」

 俺が脱出するだけなら、自分で自分を食べてしまうのが一番手っ取り早い。

「食らうぞ、この悪夢———」


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