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第41話

 当然ながら、眠れなかった。あれだけの情報を一気に言われたら、飽和してしまう。

「獏、凄いクマ……眠れなかったの?」

「あぁ、まぁちょっとな……」

「おじさんと何かあった?」

 流石、幼馴染をやっている間だけあって鋭い。

「いや、何も」

 確実に怪しまれているが、咲夜はこれ以上追及してこなかった。

 咲夜と校門でわかれ、教室に向かうときに声をかけられた。

「おはよ、昨日は話を聞いてくれてありがとう。おかげさまで、悪夢見なかったよ!」

「……それは良かったです」

 周囲からの目線が突き刺さる。大方、「何で普通の奴がスーパーアルバイターと話してるんだ?」というものだろう。俺もその立場だったらそう思うはずだ。

「じゃあ、私はこれで。またね!」

 校舎へと走っていく如月を見送る。この学校には有名人がこれでもか、というほど居るが如月はその中でも変人の部類に入るだろうな、などと考えていたらあっという間に教室へと辿りついていた。いつもの友人たちとくだらない話をしながら、先生が来るのを待つ。

 まもなく先生は現れ、朝のHRが始まった。今日も一日、頑張ろう。


 とは言ったものの一睡もできていないのだ。授業中に眠くなるのは仕方がない。月影は頑張って起きているみたいだが、俺はもう限界に近く意識を手放した。

「……くん、夢野くん」

 俺を起こす声が聞こえたので、起きることにした。目の前には月影。

「夢野くん、寝すぎですよ。さ、一緒に部室に行きましょう~!」

「そうだな……」

 立ち上がると、少しクラクラした。貧血だろうか。

「夢野くん?」

「大丈夫だ、行こう」

 そのままの状態で歩き始めると、クラクラがどんどん悪化してきた。

「夢野くん、保健室行きますか?」

「そうだな、悪いけど今日は俺保健室に居るから。何かあったら来てくれ」

 月影にそう伝言し、保健室を目指す。俺たちの教室からだったら、そんなに遠くない。保健室のドアを開けると、保健の先生である新海雪穂が居た。

「どうしたの? まずはそこにあるカードに病状書けるかな?」

柔らかな日差しのような眼差しで訊いてくる先生。「書けます」といい、病状をカードに書いていく。

「一応、熱計っておこうか。自分で出来る?」

「出来ます」

 手渡された体温計を脇の下に挟み、一分ほど待つ。

「……うん、熱はないみたいだね。貧血と寝不足が同時に来ちゃったのかな。目の下のクマ凄いもんね。昼休みの間はここで休んで、無理そうだったら早退も考えよっか」

「はい……」

「そこのベッド、使っていいよ。隣に誰も居ないから、快適に眠れるはず」

 先生は、奥のベッドを指しながら言う。

「ありがとうございます」

 その言葉に甘え、俺はベッドに寝っ転がる。朝から授業中散々寝たのに、また睡魔に襲われた。


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