目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第37話

 朝、俺の家の前に伊達が居た。何か悪いことでもしたか? と内心不安になったが、うじうじしていても仕方がないので声をかけた。

「おはよ。何で家の場所がわかったんだ?」

「まぁちょっと……な。聞いたんだよ、お前の周りの奴に。ところでさ、アイツ今彼女とか居るのか?」

 いきなり何の話をしているのだろうか、こいつは。アイツって暁人のことだよな。面倒なことになりそうだ。無視して咲夜の家の方角へ向かう。

「おい、待てって」

 追いかけてくる伊達を無視し、咲夜と合流する。

「おはよ、獏。……と、伊達さん」

「何で風紀委員ちゃんと歩いてんだよ、お前らどういう関係?」

 俺と咲夜の間には取り決めがある。それは、恋人同士であることを公言しないことだ。だから今回も、嘘ではない説明をしておく。

「幼馴染」

「そうなのか……アタシにはもっと深い仲に見えたけど。ま、いいか」

 そう呟き、伊達は去っていった。ミニスカで全力疾走したら、中が見えそうなものだが。あまり羞恥心というものがないのだろうか。意外と見せたがりなのか? そんなことは一旦頭の隅に追いやる。校門の前で咲夜と別れると、今度はもっと珍しい人に声をかけられた。

「おはようございます」

「あ、浅野先生! おはようございます」

 俺と月影の担任である、浅野環希だ。

「夢野くんと会うとは思いませんでした。折角ですから、教室まで一緒に行きませんか?」

「良いですけど……」

 話すことが一つもない。俺は彼の担当している現代文が得意な訳ではないし、そもそも教師と日常的に話さない。先生も、別に話し上手という訳ではないし。

「浅野先生、この時間に出勤してるんですか?」

「いえ、今日は晃希……小生の弟と朝から喧嘩をしまして家を出る時間が遅れたんです」

 驚いた。喧嘩出来るくらいの強さは持ち合わせているのか。いつも頼りない姿ばかり見ているせいで、想像がつかない。

教室に入ると、月影が机に突っ伏していた。元来ロングスリーパーらしい彼女は、朝のHRが終わるまでずっとこのままだ。声をかけても起きないので、そっとしておく。

「皆さん。HRの時間ですよ~。席についてください!」

 今日が、本格的に始まる。一日頑張ろう。



コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?