放課後、改造制服で歩いている伊達を咲夜は注意しに行った。俺たちは物陰に隠れ、その様子を伺う。
「伊達さん、その制服は何なんですか!」
「何って……制服は制服だろ。文句あんのか?」
今日の咲夜は、引かない。
「大アリです! 胸元は開いてるし、スカートも短いし! パンツが見えますよ!?」
「見せパンだから大丈夫だって」
「そうじゃなくって……周りの人が伊達さんを見て触発されたら困るんです!」
流石は女番長と言うべきか、伊達も引かない。
「関係ねーだろ、このカッコよさがわからないなんてセンスねーんじゃね?」
咲夜の地雷を、本人は知らないだろうが————踏んだ。
「あ、の、で、す、ね!! 貴方の方が自意識過剰だと思いますけど!? 自分で自分のことカッコいいとか」
「咲夜、ストップ。一回冷静になれ。な?」
「でも獏、校則違反だしこんな破廉恥な服装」
「誰が破廉恥だって!? 服装で取り乱してるお前の方が破廉恥だろ!」
「まぁ、落ちつけ伊達。星川も、あんまり言うとこちらが馬鹿みたいだ」
「ガリ勉くんじゃねえか。……お前はこの制服、どう思う?」
「一言で言えば、校則違反だな。というか、コスプレか何かなのか?」
胸元は開き、極限までミニのスカート。どちらかと言えば女番長と言うよりコスプレだ。どんなアニメなのかは、不明だが。
「お! お前結構いい目してんな。そう、これはアタシが大好きなアニメのコスプレなんだ。瞳に眼帯をつけてるのも、邪龍が暴れない様に……」
こいつ、面倒くさいな。いや、面倒くさくするスイッチを押したのは暁人だ。ここまで中二病だとは思わなかった。女番長が中二病、ロマンがあるんだかないんだか。
「わかった、伊達。では、最近変な夢とか見ていないか?」
「夢、か……。確かに飼ってる猫に襲われる夢なら見るけど……ここ二週間くらいかな」
「具体的には?」
「邪龍の影響で狂暴化した猫っつーか怪物に、殺されちまうんだ……喉元をガブリって」
望月が割って入る。
「でも、伊達さんは女番長と言われるくらい強いんだから、振りほどけば……」
「馬鹿かお前。可愛い猫相手にそんなこと出来る訳ないだろ」
意外にも可愛いものが好きらしい。まさしくギャップだ。見た目はちょっとダサいヤンキーなのに。
「っつーかそれで機嫌が悪くてよ……悪かったな、当たり散らして……風紀委員ちゃん?」
「べ、別に良いですけど……気にしてないし」
咲夜の頬がわずかに赤い。
「実際問題、伊達はその猫に対して何かしたのか?」
「する訳ねーだろ、可愛がってはいる。ほら見ろ、うちのリンちゃん」
伊達のスマホには、スコティッシュフォールドがデカデカと表示されている。
「つーかアタシ、そんなに動物虐待しそうな見た目か?」
覇気がない声で口を開く伊達。無言を肯定と受け取ったらしく、「そんなことないのになぁ……」と寂しそうに呟いている。
「大丈夫、伊達さんの内面が優しいのはさっきわかったから!」
咲夜が必死に励ましていると、単純なのか伊達はすぐ気を取り直した。
「じゃあな、アタシ、リンちゃん待たせてるから」
そのまま帰る伊達。俺たちも一度解散することにした。