また、一日が始まる。
「よっ、元気か?」
先輩に肩を叩かれた。普段関わりが全くない組み合わせだからか、視線を多く感じる。
「あぁ、まぁ、はい」
曖昧に返事をすると、「そうか」と先輩は受け流した。
「俺、昨日お前に気づかせられたよ。ちゃんと現実を見なきゃな」
今度また何か奢るからな、と言い残し先輩は去っていった。ここからは、いつも通りの日常だ。
顧問によるHRが終わり、授業を適当に聞き流す。昼休みになるまで、毎日こんな具合だ。
それにしても、ただの学生が爆弾を手に入れることなど出来るのだろうか? 後でそのことを相談しなければ。恐らくは奴らの仕業で間違いないだろうが。
昼休み。部室に行くと、何やら騒がしい。
「だから、今度全員分パフェ奢るっつってんの! 世話になったからな」
「いえ、結構です。先輩のお気持ちは嬉しいですが」
ドアを開けると、そこでは先輩と望月が揉めていた。
「嬉しいなら素直に受け取れよな……」
「私たち、こう見えても忙しいので。お気持ちだけで十分です」
にこりと望月が微笑むと、それ以上は何も言えなくなったのか「わかったよ……」と先輩が折れた。それにしても、どうやって部室を見つけ出したのだろう。
「あら、部長に副部長。来てたのね」
「少し前から見てたけど、お前凄いな。俺だったら折れてた」
「そう? 副部長も結構頑固だと思うわよ」
望月の目は真剣だった。自覚は全くないものの、咲夜も頷いているということはそうなのかもしれない。ちらりと暁人を見れば、甘いものを食す機会が無くなったせいか残念そうな表情を浮かべていた。暁人の表情は、慣れると変化に富んでいて面白い。
「じゃあ、お昼の作戦会議を始めましょう~! 今日の夢の主は、学園の女番長さんです!」
「伊達のことか? 僕と同じクラスの」
暁人は、心底嫌そうな表情をしている。チョコレートバーを食べる手も止まっているくらいだ。
「はい、
「絶対に嫌だ。ああいった輩と絡むと、ロクなことにならない」
きっぱり言われてしまうと、強制するのは難しくなる。
「じ、じゃあ今回は私が頑張るよ! 風紀委員だし、伊達さん校則違反だらけだし……注意しようとは思ってたんだけど機会がなくて」
咲夜は目を泳がしながらも、覚悟を決めたようだ。
「じゃあ、今日の放課後に接触しましょう~! ちなみに夢の詳細は、毎日飼っている猫が化け猫になって襲ってくる……という内容みたいです。今までの中でも、恩を仇で返すって言うのでしょうか……酷い夢ですよね」
「そうだね……」
咲夜は昔、ウサギを飼っていたから肩入れしてしまったのだろう。そこでチャイムが鳴り、一度解散となった。