誰よりも早くコンサート会場に到着し、辺りを片っ端から捜索する俺たち三人。爆弾は、意外なところに仕掛けられていた。
「二人ともっ、これ、そうじゃないかな……?」
咲夜が指しているのは、指揮者が立つ台の底。見つけたところで通報くらいしか出来ないので、警察に電話をかける。一通り話終えた後、事情聴取をするということで近所の警察署に呼び出されることになった。とはいっても、大したことは訊かれずすぐ解放された。
しかし、問題はまだ残っている。望月と暁人を救出しなければ。三人分となると点呼も寂しい。今回は、月影の案内無しでも夢に辿り着くことが出来た。扉を開けると、負のオーラが全開の先輩がいた。
「どうしたんですか?」
そう訊かずにはいられない。先輩は、「まぁ、座れよ」と椅子を差し出してきた。大人しく座ると、彼は語り始めた。
「……実は俺、手に重い病気があってな。それを初めて知った時、絶望したよ。もう大好きな吹奏楽には関われないんだって。それならせめて、愛する吹奏楽と共に死ねたらいいなって思うようになったんだ」
「……ざけんじゃねえ!」
気がついたら、先輩の顔をグーで殴っていた。また冷静じゃなくなってしまった。反省しないと……。
「お前の独りよがりな愛に、人を巻き込むな!」
咲夜はぽかーんとした表情で俺のことを見ている。俺自身、こんなに熱くなれるのかと驚いているところだ。
「本当に好きなら、まず仲間に敬意を払え!」
熱くなりすぎて、そこから先何を話したかはあまり覚えていない。ただ、先輩の顔は腫れていて、俺の目元も涙で熱くなっていた。
「……ごめんな、お前の言う通りだよ。俺が間違ってた」
「わかってくれましたか。じゃあ……食らいます、この悪夢」
そう言い巨大な口を頭上に出現させ、夢を食う。視界が、暗転する。