今回の夢で、望月と暁人の目が現実世界で開くことはなかった。
「思っていた夢と違った? どういうことだ獏、説明してくれ」
「本来なら、先輩は指揮棒を喉に刺して自殺するんだよ。だけど、そうじゃなかった。ホールごと爆破されて、先輩がやったんだと思うけど……」
夢の主かトワイライト・ゾーンくらいだ。夢に介入できる、俺たち以外の存在は。
「ふむ。それはもしかしたら、佐久間くんの願望かもしれないな。正夢とでも言うべきか……いや、正夢になったら大事件だが」
おじさんはパソコンで、「月見野学園高校吹奏楽部 定期コンサート」の知らせを見ている。
「ねえ、これって明日じゃない?」
咲夜が指したのは、確かに明日の日付だ。先輩が爆破を現実にしたいのなら、三年生の夏終わりという時期も相まってここ以外にあり得ない気がしてきた。
「そうですね。私たちも行きましょう! 現実での活躍は、したことがないですが」
「そんなの俺だって同じだって。行こう!」
「じゃあ皆、明日に備えて今日は早く寝るんだぞ。またな」
ネットカフェを後にして、帰路についた。