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第26話

 吹奏楽部は、今日は休みの日ではない。それなのに先輩は校門から出て行った。アイコンタクトで追うと、大きな病院が見えてきた。そこに入る先輩。何処か調子が悪いのだろうか。

 先輩にバレないよう、後ろの席に三人で座る。ここでの設定は、堕胎を控えているカップル。咲夜には悪いが、あいつは演技下手だ。この作戦には圧倒的不向きと言えるだろう。

「やっぱり嫌っ! 私この子産みたい!」

「ちょ、ちょっと待てって! もう決めたことだろ!?」

こんな会話も計算内だ。ちょうど先輩が呼ばれるところを狙ってやったので、驚いた看護師がカルテを床にバラまいてしまった。それも計算内で、月影がカルテを必死に拾い集めながら情報収集をするという——やや強引な作戦だ。それにしても、望月の演技が迫真すぎて気まずい……。騒ぎの中、俺たちは病院を出た。



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