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第12話

 半分寝ながら午前の授業を終え、昼休みに突入した。俺は月影と共に職員室に行き、「浅野せんせーい」と彼を呼び出す。

「待ってましたよ、月影さんも一緒ですか。ご用件は勉強のことではなさそうですね」

 察しが良くて助かる。単刀直入に俺は切り出した。

「浅野先生。俺たち、ミステリ研究会の顧問になってくれませんか」

「ミステリ研究会?」

 オウム返しされるのも無理はない。実情と上っ面が全く異なる集まりだ。怪しまれても仕方がない。

「それって、どんな活動をしてるんですか」

「謎の怪事件について考えたりしてます~!」

月影は堂々と嘘を言う。本当にそんなことをしたことは一回もない。だが、ここで先生を逃すわけにはいかない。

「小生に、その顧問をしろと」

「……駄目ですかね?」

 普段は弱々しい雰囲気なのに、こういう時には威圧感がある。嫌いじゃないけどやっぱり怖い。

「……良いでしょう」

「やっ」

「ただし、それは小生が一度部活をしているところを見てからです。何曜日に部活をしていますか?」

 俺たちの歓声は打ち消された。事態はマズい方向に傾き始めている。だって実際、説明した内容で活動したことなど一度もないのだから。

「あ、えと、今日の放課後……」

 何とかそれだけ絞り出す。これが終わったらすぐ皆に事態を伝えないと。

「わかりました、行きましょう。場所は何処ですか?」

「七号館二階のA教室です」

「了解です。では、一度解散にしましょう。二人とも、お腹が空いたでしょうから」

 職員室から出ると、一気に疲労が押し寄せてきた。俺たちは急いで部室に移動すると、扉を開けた。

「遅いぞ、夢野」

 暁人は食後のデザートなのかわからないが、菓子パンを頬張っている。

「仕方ねーだろ、顧問の掛け合いに行ってたんだから……」

「そうですよ、それに今日視察が来るんです! だから何となくでも『ミステリ研究会』として活動してる姿を見せないと……!」

 月影の焦る姿は珍しい。流石に皆非常事態だと思ったのか、背筋が伸びた。

「そうは言っても、ミステリ関連のことなんて私疎いし」

と咲夜。

「私もよ、安心して星川さん」

これは望月。安心する要素など何処にもないのだが……。

「落ち着け、一度誤魔化せれば良いんだろ? なら、図書室で僕が本を見繕ってこよう。それで何とかなるはずだ」

暁人はそう言うと、菓子パンを咥えながら図書室の方角へ向かい走り出した。器用な奴だ。頼りになる。

「じゃあ、今日の放課後だけはそういうことで! よろしくお願いします~!」

 月影のその一言で解散となった。


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