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第4話

 翌日。

 眠そうだった咲夜と共に学校へ行った。軽くからかってみると、いつも通りの反応だったので調子は悪くない様だ。あとは授業中に眠らなきゃ良いのだが。

「ホームルームの時間ですよー」

 担任のこの声が響くまで談笑していたけど、めぼしい会話は一つもなかった。ハマっているソシャゲの話、音楽の話など男子高校生なら誰でもするような話題ばかりだ。だらだらとホームルーム、授業を受け昼休みに一度部室に集合する。これが俺の、俺たちの毎日だ。

「今日も集まったか」

暁人は昼休みだからか、菓子パンを頬張っている。生クリームがたっぷり入ったパンを、あまり食べようという気にならないのは俺だけではないはずだ。

「皆さん、眠れましたか~?」

 月影がいつもの、のんびりとした口調で訊いてくる。正直、その声が一番眠くなると言ったら怒られるだろうか。

「ああ、まあ」

「それなりには……」

 会員の回答はまちまちだったが、咲夜は何も答えなかった。その様子を不審に思ったのか、月影は問う。

「星川さんはあまり眠れませんでしたか?」

「あ、あぁいや……うん、確かにそうかも……」

 朝もそうだったが、不眠からか体調が悪そうな咲夜。昨日の咲夜はよく戦っていたし、自分の不甲斐なさを悔いる必要などないのだがどう声をかけたものか。

「今日も任務があるんだぞ、星川。学校が終わって一度解散した後に、しっかり休め」

 暁人が、菓子パンを呑み込み言う。任務はトワイライト・ゾーンが活動を休止しない限り毎日あるので、正直こちらも消耗気味だ。いい加減一日くらい休みが欲しい。そう弱音を言っていられないのも、また確か。

「わかった……」

 咲夜はふらふらとした動きで椅子に座った。もしかして、一睡もできなかったのだろうか。本人に訊いても教えてくれないだろうから、訊いたりはしないけど。

「さて、皆さん集まったところで改めて一度情報の整理をしたいのですけれど」

 月影はそう言うと、タブレットを取り出した。俺たちは身を乗り出して画面を見る。

「私たち、『ドリームイーターズ』はただの部活ではありません。元々、急激に増えた学生の悪夢を浄化するための活動でした。裏で『トワイライト・ゾーン』という組織が糸を引いていることを突き止めるまでは」

 彼女はここで一度息を吸い直す。

「『トワイライト・ゾーン』。まだまだわからないことだらけですが、はっきりしていることもあります。彼らは、悪夢を操ってこの世界を混乱に陥れようとしています。それを阻止するのが私たちの使命、という訳です。皆さん、ここまでは大丈夫ですよね?」

 全員頷く。

「そして私たちは彼らに関する情報を集めているのです~が、一向に集まらない、と……」

 しゅん、と肩を落とす月影。気持ちはとてもよくわかるが、焦っても仕方がない。案外、向こうから勝手に尻尾を出してくるかもしれない。俺はそうだと思っている。

「焦っても仕方がないです」

 望月も同じ考えのようだ。俺はそれに「そうだ」と賛同する。向こうもまだ、本格的に手を打ってきていない。まだ、焦るときではない。俺はそう考えている。

「あ、もうこんな時間! ごめんなさい、私風紀委員の仕事に行かないと……」

 気がつけば、時計の針は一時を指していた。咲夜は、時折風紀委員の仕事で抜けなくてはいけない時がある。これが学生生活の辛いところだ。時間が思うような行動を許してくれない。

 咲夜を見送って、俺たちも自然と解散になった。昼休みに集まっているのは情報共有と、親睦を深めようという月影の提案が受け入れられたからだ。その提案の張本人と廊下を歩いているのは、どうも少し居心地が悪い。

 月影は、小学生のような身長の低さで出ているはずのところもぺったんこという……隣を歩かれると犯罪臭がしてくる女子高校生だ。声まであどけないので、妹か何かと一緒にいる気分だ。教室が同じなので仕方がないことだが、周りの視線が突き刺さる。

「月影」

「は~い、何でしょう?」

「お前、本当は何歳なんだ?」

「十六歳ですよ?」

 とてもそうは見えない、という言葉を押し殺し教室に入る。

「お前、月影ちゃんとどんな関係なんだよ?」

「毎日一緒に教室出ていきやがって!この、この~」

 友人たちの言葉を躱しながら、席へと戻る。せめて月影が男だったら、ここまで散策はされないんだがな……。

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