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第12話

その騒動から一夜明けて朝、起き上がって見てみれば一隻の小舟が浜にて浮かんでいた。

そして凌望が何か話しており、聞き耳を立ててみると僕を乗せて行ってほしいだとか、もう一人分乗せられるかだとか言っている。多分あの船では乗せられないだろうと思っていたがその船乗りの顔を見るに、多分OKという事だろう。

前原「あの人って・・・「ここと大陸を結ぶ唯一の船便」

そう言いかけた途端に凌雨華が隣から出て来て、そしてその船乗りの事を指さしながら言った。僕も立ち上がり、そして昨日やらかした刀を自分の服に差して、そこへと向かう。

凌望「大変うれしい情報です!この船乗りの方があなたをアイセラ大陸の方まで乗せて行ってくださるそうなので・・・雨華!お前も一緒にマエハラさんと同行しておくれ!いいな?」

そう言うと船乗りは僕達をその船に乗せていく。何も否応なく、そして凌望の笑っている顔が船上より見えた。

~甲板~

その船と言うにはガレオン船より少し小さく、そして渡り船よりは少し大きいような、現代で言う所の漁船のような帆船だった。横にいる凌雨華は遠くの水平線に顔を出す太陽を見ながら,そして縁に寄りかかりながらこう言った。

凌雨華「ねぇ、あの時何を話してたの?」

あの時、というと凌望と密会していた時だろうか。でも僕は彼の秘密を知っている、それは彼女の前でも言ってはいけないことだと思っていた。

前原「別に?ただの世間話だったさ」

僕はそんな彼女に実を迫られないようにはぐらかした。するとまだあったのか、もう一つ質問してくる。

凌雨華「ふぅん、じゃあもう一つ聞くよ?


なんであなたは遭難してたの?」

そう、僕がここに来る前の、そしてあの島では誰も口にしなかったことを。そして彼女も知っているあの男が関わっている事件を。

前原「野暮だな、それが聞きたかったんだろ?ズバリ遭難していたのはね、星の信者に教祖として祭り上げられたんだよ。しかも僕が知ってる人がね、第一人者だったんだ」

彼女はそのながめていた太陽から目を離して、こちらを横目で見て、

凌雨華「知ってる人?誰?」

僕は彼女に宣言するようにして言う。彼の名前を。

前原「ふぅ・・・



ハーシェルの村にいた騎士団のグレッグだよ」

その彼の名前を出した瞬間、凌雨華は直ぐに振り向いて、こちらを睨むように見る。

凌雨華「あいつが!?あの・・・騎士団の中で随一の脳みそを誇るグレッグが!?」

彼女はこちらの方を見て、そして両手で僕の肩を掴みながらそう言った。

前原「うん、まさしく自分でそう言ってた。そしてなんかABS・・・553みたいにアルファベットと数字で構成された名前を名乗ってた」

そう言うと彼女は若干困っていた。

凌雨華「あるふぁ・・・べっと?」

あぁやってしまったという思って、僕は言い換える。

前原「えっと~・・・この世界にない文字を使っていたんだよ!」

すると彼女は少し何かを理解したのか、彼女の父親と同じように右手を顎に当てて考え始める。所々聞こえない程の小声だった。そしてチラチラとこちらを見ながらこう言っていた。

凌雨華「やっぱりか・・・どこか匂わせるようなことを言っていたからなぁ・・・マエハラに・・・」

そうやって彼女は考え始めて、そして船首の方に立って、

凌雨華「大当たりになった。考えもしていない事に・・・!」

と、彼女は絶望したような顔を見せていた。

~~~~~

『大当たりになった。考えもしていない事に・・・!』

その音声の波長を表す波の中で、その女の声が聞こえてくる。その目の前で聞いているのはメガネをかけたグレッグ・・・いやABS553だった。

ABS553「そろそろ気づかれましたか」

彼は手をテーブルの上で組んで、その様子を聞いていた。

ABS553「我が星よ。いずれ魔王をお倒しになった暁には私共々がお力を添えさせていただきます。だからどうかその輝くお姿を・・・私達にお見せください」

彼はそう言って自分の外套から自分の妹が描かれている、丸メガネをかけた少女の写真が入っているペンダントに口づけをした。

~~~~~

前原「そうだ!アルファ掲示板!」

その進む船の中、前原悟は途端にその自分の能力をいきなり起動し、メッセージを打ち込もうとしたが、いきなりその直後にファンファーレの音が聞こえてきた。

パッパラッパパー!

アップデート Ver 1.0.1

フリーダウンロード機能

ホストによる強制ダウンロード

バイタルマネージャーの改善

UIの改善

そのポップアップなパネルが今そこに浮き上がって、そしてバージョン1.0.1と、どこか改善されたかのようにお知らせが来るものの、流石にどうでもいいレベルだったので、そのポップアップを横に追いや・・・いや×ボタンがあったのでそこを押して、そして出てきたUIが改善されたであろう掲示板のメッセージバーの欄に、

“今から魔王を倒しに行ってきます。”

と書いたが、少しどこか注目があまり来なさそうと思ったので、

“魔王倒してくるけど質問ある?”

と、某J民のような言葉を送信した。


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