目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第8話

彼らは僕の前に戦って、そして僕より強い存在でありながら彼らは3人でかかっても彼女に大敗を喫したのだ。しかもそれは、その発言は十分に僕に効いていたのだった。やめろ、やめてくれ。そんな風に僕を見るんじゃない!しかし僕は手でほどこうとするものの、その三人は三角形で僕を囲み、そして精神的に追い詰めてくるようにダイ、ゴン、ジョウは先ほどの言葉を繰り返して鳴らす。もうどうしようもない、出来ない、どうにもならない、これこそまさに詰んだ、GAME OVERだと前原悟は考えていた。しかしこれまでに体験したあのような魔王アルティノの炎による死とはどこか違う。周りが暗くない、むしろ明るいお天道様が真上から微笑んでいる。なら・・・まだ終わりじゃない!

しかしその三角形の独房から一人の男が立ち上がった。この世界をゲームと考えている理想主義の男が、その独房の壁に一発ずつ、その顔に一発ずつ拳を入れる。

前原「まだ俺は戦える!」

その男はさっきと打って変わって一人称が俺になっており、そしてその男は完全に希望に満ち溢れていた。しかしその三角形の壁たちは何処からか槍や剣を持っていた。

前原「良いよ・・・来いよぉっ!!」

彼は野獣となって己を、自分の精神を強くする。そして彼らダイゴンジョウに馬乗りになり、順番に戦っていった。転んだ者には槍を奪って上から突き刺し、構えた者には横から小手のような物に当ててその武装をほどいた後、上からBF5の刺突爆雷で突貫するように顔に突き刺した。

ダイ「あの人は・・・こわ・・・い」

そう死にかけつつも壊れたラジカセのように言う彼に何の躊躇もなく、その槍をグサリと突き刺す。かつて魔王になる事すら拒んで、15歳の少女を相手に駄駄をこねていたその23歳の成人の面影は何処にもなく、そこにはゲームの中の偽の勇者として、ではなく本当の勇ましき者、勇者がいた。

するとその瞬間、真上で奇妙な程に照らしつけていた太陽からの光がいきなり彼を包んだ。あの時と違って黒い外套に包まれるのではなく、白い光が。そしてそれは次第に無重力のようなふわふわになって僕を包んでいった。

前原「この僕!前原悟は勇者になる事を宣言するっ!!」

~~~~~

僕はその光に包まれる中、拳を挙げた勝利のポーズをして、勇者になる宣言をする。すると光は彼に満天の夜空を見せていた。目が覚めると何か後頭部にむにゅっとした柔らかい物が当たっている。

前原「んぅ?」

そんなはにかんだような声を出すと、僕の目の前に凌雨華、あの3人のダイ・ゴン・ジョウが恐れ慄いていた騎士団の仮称ミカラさんだ。そして僕が横になっており、彼女の顔がすぐ近くにいると言うのなら、膝枕されているのだろう。その柔らかい太ももの感触を少し自分の頭で味わっていると、彼女は少し嫌そうな顔をして、

凌雨華「早く起きて?重いから」

そう僕の頭をストンと膝から滑り落として浜に落とした。その衝撃で彼の頭に痛みがちょっぴりと走った後、起き上がった。

凌雨華「晩ご飯出来てるよ?」

そう言って、彼女はまた昨日と同じように例の小屋へと向かっていくのであった。

~~~~~

一しきりおいしい魚介類や海鮮系の晩を終わらせた後、どうにか後片付けでも手伝おうとしていた自分の元に、今度はもう一人がやって来た。

凌望「ちょっと、よろしいですか?」

僕はいきなり肩をつんと突っつかれて、その方向に振り向いた。見れば凌望がそこにいて、彼は僕をどこか奥に連れて行っていたのだった。彼は僕を外へと連れて行く。しかし浜の方ではなく、その逆に、しかし小屋を超えて小山の所へと向かっていく。こんな無人島らしき所にもこんな所があったのかと関心していると、目の前で歩いている凌望は、

凌望「少し話しましょう。あなたはうちの娘とこの前にお会いしたんですよね?」

そう話しかけてくる。どうやら僕こと前原悟と凌雨華の関係について知りたいようだ。

前原「ああ、まあそうです。ハーシェルという場所で騎士だったミk・・・雨華さんに助けていただいて・・・」

僕は一瞬ミカラさんと言われそうになったが、なぜか僕の口は閉じざるを得なかった。なぜなら後ろから鋭い視線を感じたからだ、しかも睨むような目が。僕は後ろを振り向くも、そこには1㎞先にすらも彼女の存在は見えなかった。

凌望「なるほど、ハーシェル。ハーシェル・・・騎士で働いてたとは・・・」

彼の右手は顎に手向けおり、少し考え事をするような感じでそんな事を呟いている。僕はと言うと足自体は着いてきているのだが、どこか自分が置いて行かれているような感じがしていた。どこか考えもしなかった、こんな場所、一個も作っていない。僕が生きていたころのRPGゲーム『アイセラ大陸』では。ただ大陸を作って、そして数人のキャラクターを作っただけなんだ。そこからは死んだからよく分からない。何だろう、Unityの再生ボタンを押したまま忘れていたのかな?

僕はなんとか正気を保って、自分も後に続いたのだった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?