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第7話

そうやって槍先ではない柄の方で足を引っかけられて、今ここで砂に打ち上げられているという事だ。

前原「くっ・・・!何だって言うんだ!転ばせただけで何だって言うんだ!」

僕は立ち上がって反撃を仕掛けんと立ち上がり、もう一度木刀を構える、まるで某最後の幻想のように。今度はもう技なんて言わない、考えるんだ。

しかしその考えを奪うように彼女は見えない所から、いきなり槍を突いてくる。

凌雨華「はい、一発」

彼女はそう一言。僕はその声がした方向に身体を向けるがそこには誰もいない。ただ風が吹くだけだった。そしてまた振り返った瞬間、後ろの一点に強い衝撃が当たる。まるでマッサージ師にツボを押されるような、その感触が紫色の服を伝ってやって来る。僕はそれに負けじと木刀を横から振り上げながら立ち向かうが、やはりまた背中をやられてしまう。

前原「何なんだ一体お前さんは!仙人だからってチート能力を自然に付与されてる存在かよもぉっ!」

そんな彼は弱音を吐いており、自分を煙に巻くユウカを目で追えてすらいなく、

凌望「(前原悟さんは何も見えていません。彼女の存在がではなく、彼女が仙人・・・であってもあの超越的な動きは彼女の“努力”によって織りなされる結果であるという事がです。そんな私の娘である雨華は私が育てて、まあ・・・ほぼユウカが自力で私はただ見ていただけで育てたとはあまり言えないんですけどね?)」

その様子を見ている私は自分の髭を触りながら、そして増えてきた皺を触りながらその様子を見ていた。私が授けた木刀を振り回すものの、それは当たらずただ体力を消費するだけのマエハラサトルさん。そしてその振り回す木刀をいとも簡単に避けて、背中にある人間の魔力が通る部位を一つずつ突いていく。これは私の持論だが、魔力と言うのは人間の体に流れている専門的な言葉で“気”。すなわちニンゲンにとって生きる力を指す。それらは背中から流れており、それは全身にまで血を通って巡るという事だ。一般的なニンゲンの魔力はまあ少し小さな、焚火の火種を出せるほど。少し魔法を齧った者なら火や水、雷、風の玉を一定の確率で無作為に出せるほどだ。そして遥か西方に位置していると噂されている魔法学の修める所の“ニンゲン”の生徒では確実に火と水、雷、そして風の大きな扇を全て出せて、その平均的な魔力の上で特定の魔法、そして属性が決まる。魔族であればより大きな力が出せるという事だ。それらの魔法が背中から流れているという事だ。そんな私の娘である雨華の背中から腰に掛けては完全に仕上がっており、そして魔力故も豊富であるという事であり、それと腰回りの良さのおかげで魔法を使わぬ攻撃であっても十分に強いという事である。

しかし懐かしいことか。今から千年前、魔王と名乗る者が世界に危機を及ぼした時、魔力が強かった魔族に大陸全体を支配されなかったのは運と戦略に恵まれていたからであろう。すぐさま対応に当たった当時の国王に感謝を申し出たい程だ。まあその孫の孫の孫の孫の…とにかくその子孫の息子に剣術を教えても全く上達しなかったから追放されてしまってこの島に来たのだがな?

しかしそんな中、その後ろで戦いは続く。ついにはその槍先の布が脳天に勢いよく当たってしまっていた。

私はそのドサッとした目の前に振り返ると前原悟は、目を白くして倒れ込んでいた。

凌望「ん?目を離した隙に何事が・・・?」

するとその彼の様子に気づいた雨華もすぐさま攻撃するのを辞めてその倒れた男の元に駆け寄る。

凌雨華「あちゃ~・・・やっちゃった?」

なんと他人行儀かうちの娘は、そんな事を呟いていた。

凌望「やっちゃった?じゃないんだよ!死んだらどうする!?本気でやるなとあれほどいつもいつも・・・「やってないよ。本気を10回に分けた一つ分くらい」

そんな言い訳が聞こえるものの、私は一向に信じられるものが取れない。先ほどの動きは明らかに本気を出してあったようだ。大陸に行って容赦という物を忘れてきたのかと私は少し呆れたのだった。とりあえず今日のご飯の時に聞いてみるか、マエハラさんに。そうして彼が目覚めたのは日が暮れた後だった。

~~~~~

脳天に強い衝撃が走った後、視界が一瞬暗転する。中には声が聞こえていたものの、次第にそれは聞こえなくなっていた。すると、とある映像が暗転した後に目の前に映し出される。それは自分が最初にこの大陸にて赴いた、初めて訪れた所での光景だった。目の前には3人の、見た目がよく似た3兄弟。しかし彼らは誰もが曇った顔であった。ダイ・ゴン・ジョウ、その酒のような名前の3兄弟は口々に呟き始める。

ダイ「・・・あの人は強い」

ゴン「あの人は怖い!」

ジョウ「あの人は化け物。多分仙人とか戦神とかそれに近い感じ」

そう僕に忠告するような口調で、恐れた口調で“あの人”と呼ぶ誰かを怖がっていた。次第にその言葉は僕を囲んでいく。まるでゲームにおける“負けイベント”で、ムービーカットインがされるように。まるで貴様は彼女に負けたのだ、死んだのだと彼らは僕に言い聞かせるようにして囲む。


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