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第11話

前原「ヤバい、マジで怖い。えぇ?あんなの神の庭園より怖いじゃねえか。いや神の庭園の方がワンチャンマシかもだぞ?だってちゃんとした聖女(上様)だとかいるんだから!」

僕はガタガタと隅で震えながら、ベッドに乗って布団に包まる。

前原「ヤバいってェ・・・!」

僕は生まれたての小鹿のように震えて、壁の方を見ていた。そうだ、何か策は無いか?それを調べるために僕はまた、あの誰が作ったのか分からない掲示板を開く。

どうにかしてここの場所を“隠密に”やらないと・・・でもどうやればいいんだ?ABS553は何となくできてたよな?じゃあこっちにも出来るはずだ。考えろ~・・・考えろ~・・・どうやったら出来るか考えろ~

僕はアルティノのハンドルネームである“サラリー魔ン”という名前に指を乗せてタップした。それでまあ出来ればさっき考えた時間を返せと・・・出来ちゃった。

見ればその名前をタップすると、

“報告”

“メッセージ”

“情報”

と言った3×1の行列がその上に出てくる。僕はその真ん中にあるメッセージに指をやり、彼女にダイレクトメッセージをリプるために、キーボードで即時メッセージとして

“星の信者の内部にいる。何もされていない、こっちは無事だ。代表の中に星の信者の内通者がいる。”

と送ろうとしたが、

“hそいnしんjhの内部。何もされていない、こっちは無事d。だいjyのなkにしんじゃが内通しyてる。”

と、慌てすぎて変な文章になってしまったまま送ってしまった。もう一回打つにしても面倒くさい。これじゃあ埒が明かない。だったら証拠を送って納得させるまでだ。

前原「これが、マルチスクリーンだっ!アルファ掲示板!」

僕はもう一つのアルファ掲示板を左に呼び出し、そこであの時動画を送って来たABS553の動画をタップする。しかし、一回だけではただ動画を再生する。なら二回、ダブルタップで保存だ!

すると、そのアルファ掲示板はおかしな動きをした。ダブルタップをしたら案の定“保存する”、“削除”というバーがすぐに出てくる。初めて使う機能なのに、何のミスもなく正常に動くというおかしな動きがそこにあった。

前原「えぇ・・・?まぁいいや、取り敢えず保存して見せないと・・・!」

僕はそんな“余計なこと”すらも気にかけずして、ひとまず保存に指を置いて実行する。

なんとかなる、そんな思いで僕は彼女にそのビデオを送る。

まず先に保存できるならその技術応用してファイルも作れるんじゃないかと応用が利く考えもあったが、いいからセンディングだ!というインテリ系のゴリが心の中で叫んでいたため、何も悔いや後残り、焦燥や他の考えに行ってしまう事はなかった。

そうして僕は彼女にその証拠であろう動画を送ろうとした。しかし、その手は扉からの声によって止められてしまう。

「少しよろしいですか?」

扉からそんな声が2回ノックされた後にやって来た。その声の主はさっきの盗撮動画を送りつけて自分が圧倒的な優位に立っていると勘違いしている奴だった。あ、あと自分が星の代弁者として信者と僕との橋渡しをやっていると勘違いしている奴でもある。

前原「どうぞ?いつでも」

僕はベッドに座ってその上に布団をかぶせたまま、壁の方を向いて答える。後ろの様子を見れば、ABS553が何か布を両手に積んでやって来た。恐らく着せるための拘束具だろう、教祖として僕の地位を確立するための。

ABS553「我が星、あなた様の新しい服をお持ち致しました」

その紫色の布はどこか既視感の或る者であった。僕は振り向いてその布の本性を見る。見ると上にはボタンが2,3個ついており、それは3~4段程畳まれていた。

前原「ありがとう、そこに置いておいてくれ」

僕は何とか教祖としての威厳、いや何かちょっと面白そうに貫禄のある言い方でそう命令する。少しヘンテコで、そして彼は僕が何をやっているのか笑いそうになるが。

ABS553「かしこまりました、では」

そんな笑いを堪える中、その状況を知らない彼は紫色の服をベッドのそばに置いて出て行った。出て行ったあと、僕は気がおかしくなったのか、それとも僕が今から敵に塩と情報と寝取られビデオを送っている状況に気がついていない事を笑っているのか、真相は定かではないが、自然と顔から笑みがこぼれかけていた。

前原「フッwフッフッwフッフッフッwフッwフッ」

もう堪えきれなかった。そんな感じで振り向くとそこには、紫色の服がそこにある。上の紫を広げて見てみると、もはやそれは某死刑囚になった声優の着ているような物だった。

前原「ブフッwwwwへッwへッwへッへッへッへッへッwwww」

そう、尊師コスチューㇺだった。これを着れば多分空中浮遊が本当にできるのかもしれない。

まあとりあえず記念品として着ておこう。

僕は被っていた布団を剥がし、自分の服を脱ぎ、素っ裸になった後その紫色の上と下を着る。

前原「あ~wwすごいこれwwヴァジラヤーナ開くってwww」

もし教祖になるのだったら髭と髪を伸ばしてしまおうと考える前原悟だった。

前原「へッへッへッへッへッwwwwあ~www・・・よし、逃げる事考えるか」

ここは星の信者という謎の宗教施設。確認する限り構成されているのは分かるだけでベッドルーム、廊下、そして大広間の大聖堂。あ、あと今信者がいる風呂の場所。とりあえずまあ、歩いてみるか。

僕はドアノブを開いて、扉を開けて廊下に飛び出す。しかしどちらに行けばいいのか分からない。じゃあ歩き回ってみよう、いややってやる。

決心したつもりで、だれもいないだろうと周囲を見ながらおそるおそる廊下を歩いて行った。

周りはドアが一定間隔に位置しており、それがより恐怖感を強くする。そんな恐怖感からか、早く抜け出したいと自分は思って、次第に足が速くなっていき、僕は走る。ドタドタと音をたてて。しかしそれが周りのドアが開く原因でもあった。信者達が一斉にドアを開けてこちらの様子を見ていたのだ。

前原「(嘘だろ?ここでゲームオーバー?)」

まるで画面が白黒になって黒い帯に赤文字でWASTEDと記されるような感じが僕の周りにあった。だがしかし、僕はそのWASTEDすらも無視してそのまま走る。すると突き当りに曲がり角が出てきた。僕はそのまま曲がって走り続ける。すると目の前に一人の少女が現れた。見た感じ文学少女で、丸メガネをかけており、その面影はどこかあの勘違い野郎、いやペンダントの写真の少女に近かった。僕は彼女と目が合った途端、そのメガネの少女は口を開き始める。

謎の文学少女「あなたの未来はこれから、予想もできない程の試練があなたを待っている。X座標、2006。Y座標、25。Z座標、4。最初の試練はそこにある、求めて、上がって、救って」

しかし、それは明らかに意味深な物だった。最初の座標は大体意味が分かったものの、どこを原点として考えるかは分からなかったし、求めて上がって救っての意味すらも分からなかった。

前原「お、おう」

僕はそう言って、彼女を超えて後ろにある扉のノブを触る。しかし、それを防ぐ者、いや者たちがこちらに出て来てしまった。何かしらの棒やらを持って。

ABS553「我が星よ!その道は間違っております!」

彼が言うにはこの道は僕にとってふさわしくない道のようだ。おそらく、この扉は外に繋がっているという事なのだろう、ABS553が言う限り。

ABS553「戻ってください、今すぐそこから。さあ、あなたは教祖なのです!私達にとって必要なのです!その扉を開くのであれば、あなたは必要とされていない土地が待っております。そんなところで残るのは何だと思いますか?あなたの死です!死は神の庭園の言うような絶対神への魂の償還ではなく、何も無い。無なのです!私はあなたの未来をそのように決定付けたくはないのです!さぁ、どうかこの手を・・・「ABS553」

僕は呼ぶ、彼の名前を。そして冷静に諭す、僕の正体が何なのかを。

前原「僕は一度死んでここに転生してきた。勿論神の庭園が言うように神へ魂は償還されなかったよ?」

後ろを振り返ってみると、彼の顔は少しだけ笑っていた。


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