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第9話

すると彼女は何かこちらの方を見ていて、後ろに誰か来たと、そして何か彼女は臨戦態勢を取ろうとしていた。そんな様子に僕は今一つ首を傾げている。

前原「?」

そう振り返ってみてみると、黒い外套に覆われて謎の笑う仮面をかぶった者が後ろに現れており、端切れは手によって伸びており、それが自然とひし形を作っており、その中には仮面があったので奇妙だった。

「我が星よ、ようこそおいでくださいました。」

まるでこちらが招かれる客で、目の前にいるその人が招待した主、いわばホストみたいな対応であった。そっちから来たのにどうしてか分からないが僕が招待されているという事だ。

すると、その外套仮面は体の大部分を覆っている外套を大きくして、僕一人を覆える程に包んでいった。そのひし形に、その体と手に僕は包まれる。すると、こっちの意識も暗くなっていく。まるで脳みその松果体からメラトニンが分泌されるような感覚が、全身にやって来た。そう、むにゃむにゃと眠るような感覚が瞼を重く閉じさせた。

そして、肩と腰に何か固い枕を乗せられる感触、いや手がやってきた。そして横に少し分厚い胸板から耳を伝って心臓の音が聞こえてきた。どうやら僕は誰かにお姫様抱っこをされているようだ。いや、誰かと言うより“その出迎える者”に。

~~~~~

会場にてサキュバス=インキュバスという淫魔の種族を代表するサインはそそくさと自分の領土へ帰る準備を、自分の長すぎる服の袖から手で色々と掴みながら、しかしそれは何処かよろよろとよろけた状態であった。

サイン「ふわぁ~~~ぁ。おうち帰ったら寝よぅ・・・」

欠伸を掻きながら見ているその景色は何処か変で、少しぼやけた感じに映っていた。

目の前を見てみると、フラワーエルフの代表さんが座っているが、それもどこかぼやけていた。しかし彼女は座っているままで、何も動こうとも反応しようともしなかった。

そのことに気づいたサインは、すぐさま自分の眠気を解かんと少し体が変わり始める。体は筋肉に覆われ、たくましくなり顔は先ほどまでとは違って目が隠れていなく、そして男として凛々しくたくましい顔つきであった。まあ髪は長髪でオールバック、いや額で分かれている。その白髪の髪は輝くように靡き、筋骨は隆々としている。

もはやそれは先ほどのサインとは違う者だった。

サイン?「ふっ・・・ふはははははは!!これでも動揺しないとはさすが主席。いやボスの風格とでも言っておこうか小娘よ。我の眷属となれ、この気高きインキュバスの子を産むのだ!」

そのイケメンはその顔によって黙って微笑んでいたツイフェミをキエエェェェェェ!クソオスは死ぞ!私たちは買われた!と叫ばせる程の爆弾発言を彼女に振りかける。しかし目の前のフラワーエルフは何も言わずに、ただ待っていた。

アロアロ「(私に与えられた試練は・・・ただ我らの星を無事に総本部へ送り届けるまで手助けする事。それ以上は無く、それ以下でもない・・・)」

しかし彼女は目の前の白髪に少し大きめマッチョの顎ラインくっきり目の形くっきりイケメンのサインとは違って、覚悟が決まっていた。

~~~~~

・・・よ・・・

何か声がエコーするように聞こえる。しかし、僕の耳にはあまり

・・・星よ・・・

一体誰なんだ?僕を星と言う者は。

・・・我が星よ・・・

我が星?さっきも言っていたがそれは何なんだ?

・・・我が星よ。どうかお目覚めください・・・

う~ん、あと五分寝させて?寝てないんだよ。

・・・早よ起きろ・・・!

はい起きます・・・

・・・よろしい・・・

僕は急かされて、ずっと魔王城に居た時から閉じていた眼を開いた。

しかしそこは見知らぬ天井で、その木目が魔王城の豪華さとは明らかに違って質素である事を強くした。僕はなぜかベッドの上に寝かされており、枕が自分の頭を支えている。

右を向くと、先ほどの黒い外套と似た物を着ている誰かがいた。しかし、それはやはりあの時僕を介抱していた人と同じ人だという事は分かった。

「おはようございます」

その外套仮面はそう言っていたが、それ以上にもそれ以下にも何も言わず、ただそこに突っ立っていた。何処を見ているのかは仮面によって分からないが、視線的におそらくこちらを見ているのだろう。

前原「あの~・・・あなたは一体・・・?」

僕は不思議そうに右の外套仮面におそるおそる聞いてみると、目の前の外套仮面は自分の外套から手袋で覆われた手を取り出して自分の頭に手をかけていた。

外套仮面「少し仮面を外しますね。おそらくあなたが知ってる顔であるとは予想が付きますけど」

すると、外套仮面はいきなり自分の顔隠しの道具である笑った仮面に手をかけて、そしてそれを頭の横に持っていった。すると、その驚きの素顔が露わになっていく。

前原「え?君は・・・」

その驚きの素顔の持ち主は、どこか見覚えのある鼻で、髪で、目で、顔で。

~~~~~

「もしかして、星の方ですか?」

「星?」

その声の主との会話が頭の中で回想として浮かび上がってくる。それはメガネをかけた男でどこかインテリ系のように、アニメの作中に出てくる頭脳キャラのように、よくある後々裏切るキャラのように見られる。

「その~星の信者がよく読んでいる書物に、『星』の降臨について書かれている一節があるんですよ。されば星に願いし時、彼らはその願いに祝福を以て返すだろう。という感じで、だから多分あなたは祝福という事なんですよ!」

最初は何を言っているのか分からなかった。でも今は合点がいく、そう・・・

~~~~~

グレッグ「そう、部隊内で唯一の脳みそを誇る格別なグレッグです」

その顔が全て露わになる、いやその顔の満月が露わになった瞬間、彼はもう一つの手からメガネを取り出して、スッと自分の顔に着けた。そう、まさにあの時の騎士団に居たグレッグだったのだ。

グレッグ「それとグレッグと言う名前は実は本名ではございません。崇高なるお星様の前でこういった恥ずかしい嘘を申し上げてしまい、あの時は申し訳ございません」

もう外套仮面がグレッグ、いや名前を知っているだけの知人だったことに驚きすぎて、言っている事が喉を通って頭の中に、脳みそに入らなかった。

前原「え?あぁ・・・え?」

僕はそんな発言に東京スカイツリーとその高さと同じ程の疑問符を立てる。どうやら僕は飲み込めてすらいないのだ。目の前の人が知人で、本当は違う名前で、そして魔王城に現れたことに。

グレッグ「まあ少しここをお散歩でもしましょうか?お星様」

そんな疑問だらけの彼は手を出して、僕をベッドから立たせる。しかし、なにか眠ってしまったおかげなのか足取りはおぼつかなくて、よろけてしまった。そのため自然にそのグレッグ(偽名)に介助されているような感じがして堪らなかった。

グレッグ「おっ大丈夫ですか大丈夫ですか?」

まるで自分が老人で若者に介護されてる感じがして、日本社会の縮図を感じられずにはいられなかった。

そうやって僕たちはとりあえず小さな部屋を出て、少し廊下を回る。

グレッグ「そうでした、私の本当の名前を教えておきますね」

そう言いながら彼は僕の手から離れ、そして僕の目の前に立つ。

グレッグは右手を胸にやり、そして左手を横に伸ばして、少しお辞儀をしながら、

グレッグ「553」

そう言った。しかし僕はやっぱり理解が出来ない。

前原「?」

グレッグ「申し遅れました、私はABS553でございます」

型番?名前が型番?

前原「え、型番なの?」

その質問を僕は彼にぶつける。すると、彼はこう答えた。

グレッグ「ええ、星の信者では信者は元あった名前を捨てて、新しいこのABCと言った文字と数字を使った物を新たに使いまして、そして単位の表示も改めて統一したのです。例えば・・・」

するとABS553の後ろを一人の、色々と布を持った男が通り抜ける所を目にする。するとそれに気づいたのか、その男に話しかけて、

ABS553「なぁ、お前さんの名前は何だい?」

と問いかける。

「私ですか?私はADV343です。どうも、よろしくお願いします」

彼は少しお辞儀をした後、また後ろを通り抜けて行った。

ABS553「まあ少し歩きましょう、色々とあなたにやっていただきたい事もございますから」

そうやって僕たちはそのどこまであるのか分からない廊下をただひたすらに歩きながらしゃべっていた。

そして、少し歩いたところに大きな扉があり、僕たちはそれを開けて中へと入っていく。

ABS553「我が星よ、本当にようこそおいでくださいました」


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