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第2話

アルティノ「ちなみに費用削減のために実はこれ、魔法で動いてるの。すごいでしょ?」

何とも言えない理由だったが、まあこの世界の魔法には奥が深いという事が分かった。でもどんな魔法なのか、何の属性の魔法なのかは実際の所分からない。微レ存の可能性で雷電魔法で動いてるんやったらオール電化でワンチャン魔王軍、人類王国を十分に攻めれるぐらいの力持ってるんじゃね?という淡い期待を胸にその憎き魔王とされている彼女の根城、魔王城に二人で足を踏み入れる。どうやら何か守衛に奇襲を食らうことも無く、先に進めそうだ。いかにも歓迎されているとは到底思えないような雰囲気が弓を持ったゴブリンやドラゴンである守衛の彼らから伝わって来るが。

アルティノ「大丈夫よ!マエハラは抵抗する意思は無いから!私が保証するわ!」

彼女はその雰囲気を解消するために彼らに声をかける。すると、少し弓を構えかけていた守衛たちはその弓を下ろし、またもう一度門外での監視の任務を再開した。

アルティノ「私の守衛たちはまあ神経質な物でね、少しでも見たことない物だったらすぐに警戒するのよ、しょうがないわ」

僕はそんな彼女が心配がっている事を心配せず、

前原「むしろその神経質な警戒あってこその魔王城の守りだ、別に普通の事だよ。神経質にじっくりと観察しろって事さ」

僕は自分の身の内を明かして、逆にアドバイスのつもりで話す。しかし、目の前で人のペースにも合わせない彼女はその事を聞いているのか聞いていないのかは分からなかった。僕たちはその城門を抜けて、そしてその本丸の中へと入っていく。緊張感のかけらもないような他愛ない話をしながら。う~ん、なんか違う!こういう感じで魔王城に入るのもなんか場違い、いや的外れ感もあるんだよなぁ・・・。

その淡い期待とは裏腹に、それといった脅威も無い魔王城内に足を踏み入れていく。

その大きな門がギギギィッと重い音を鳴らして開き、中の様子が明らかになっていき、暗いエントランスとでもいうべきだろうか。目の前は暗く、明かりを灯していない。

アルティノ「暗いわね・・・」

そんな彼女が呟くと、いきなりパッと光って明るくなった。それはこの部屋、いや広間の暗さをすべて消し去る程で、しかしその光が何処から出てきているのかは分からなかった。まぁ、これも魔法と言う物で成り立つが故に存在するものなのだろう。う~ん・・・Blenderだったら照明というか上からライトが点いてるから作業には困らなかったけど。もしかしてUnityに持ってくる時に何か削除し忘れたんじゃないかな。それでいまそれを応用して魔王城の照明はあるわけだし、あるわけなんだけどなぁ・・・明らかにどこかコレジャナイ感が出てる。魔王城っていうならもっとなんかボロイ感じの建物で、どこか穴とか開いてて廃墟見たいな構造の筈だけどもここはその先入観を吹き飛ばす物だなぁ。だから人類はまともに大攻勢を挙げて攻めないってことなんか。いつもよくある魔王の話とはこっちの世界ともかけ離れてる。しかも目下に広がる絨毯は奇麗だし、それぞれの柱一本一本を見てみると腐食している部分なんてない。むしろ昨日建てたのではないかと思うほどの豪華さだった。例えるならそう、西洋のどこかの宮殿に、それが建てられた数年後の時にいるようでさほど変わらない。

アルティノ「どう?新しいでしょ?まあ私も久しぶりに帰ったけど、こんな感じで荒れずにそのまま残されているなんて私の使用人たちは優秀ね。私長い間いなくても毎日こんな奇麗に仕事をこなすもの」

僕は一つの言葉が気になった。長い間?どのくらい魔王は帰ってきてないんだ?

前原「なあ魔王、いつ頃からここには帰ってきてないんだ?」

そんな一つ思いついたことを彼女に話しかける。

アルティノ「うーん・・・数えてないけど大体・・・「月の満ち欠けを3周したほどです。魔王様」

すると、魔王の側近、いや護衛であるカカリが急に彼女の隣にやってきて、その耳にそうやって告げるのが聞こえた。

アルティノ「あっ!そうだ大体月の満ち欠けを3周したぐらいよ!ねぇマエハラ!」

いや、さっきそう言ってたから全然分かるが、恐らく3か月ぐらいだな。っていうかよく3か月も魔王城を空き巣にしていたな!?本当に内政上で90日も居なかったんならそこで何か起きたら対応に当たれないんじゃないか?あと現代人の目線で申し訳ないけど多分なんか乗っ取られてる気がするぞ?

ありもしない事を考えながら、本来仲間として出会うべきではない二人は奥へ奥へ、上へ上へと歩きながらわたっていく。所々色々な部屋に案内されながら。

~魔王城内の会食場~

アルティノ「ここが会食場ね。別にマエハラにとって何の造作もないことでしょうけど」

彼にとっては正直少し驚いていた。なぜなら考えていたゴブリンやオークのように野蛮な物とは違って、少なくともさっきの護衛達だったであろう者が皆ウェイターのようなのが少し驚きだった。何とも文化的というかほぼ魔族自体は人間とほぼ変わりないのではと、も考えられた。

~魔王の間~

そして今度は先ほどの会食場よりも広い、そして赤いカーペットの一本道を敷かれており、その先には一つの玉座が鎮座していた。

~魔王城内・上階書斎~

今度は食堂や魔王の間と違って狭い部屋に案内される。そこは本棚や机、その上にライトが置かれていた。

アルティノ「私の書斎よ。まあ歴代の魔王がここを使っていたのだけど」

彼女はそう呟きながら、そこに置いてある机をさすりさすりと触りながら言う。

前原「歴代って・・・君何代目なの?」

僕はその彼女の言葉が気になった。歴代という事はこれまで魔王が受け継がれてきたという事になる。

アルティノ「今は・・・150代目、いや155代目よ、1000年前から数えて」

千年前、千年前・・・

アルス『うん、人類王国。今は魔族たちと1000年近く戦争をやっているけどね』

千年前、千年前・・・

前原「1000年前って、人間と戦争を始めた時?」

僕は彼女にとって、魔王にとって一番核心を突く言葉を言った。

アルティノ「そうよ、1000年前に私の祖先が始めた戦争よ。初代の魔王がこの国を興して私を含むドラゴンやゴブリン、オークやフラワーエルフのバラバラだった民族をすべて統一した後、人類王国と敵対し始めたわ。その後あの教団以外の通り道の封鎖が続いて、今はだれもこの国と戦争をしてるって知らないけどね?神の庭園を除いての話だけど」

この大陸の歴史を話す彼女は、書斎の椅子に座りながら言った。そう彼女は淡々と、さも当然であるかのように。

前原「なるほど、なんか僕の国の歴史みたいだなぁ。なんだっけ?確か歴史で・・・日本とどっかの国がずっと戦争状態だったけど結局皆忘れてって話があったんだ。何処の国だったっけなぁ・・・」

僕は自分の国の歴史をどうにかして脳みそのメモリから取り出そうとするも、参照するファイルが見つからなかった。そんな中学の歴史の先生の小話なんて昔のことだから覚えて・・・そうだモンテネグロって国だ。日露戦争の時に同じく宣戦布告してそのまま忘れられてたって何か言ってたなぁ、0点取ったけど。

アルティノ「まああなたの国の歴史なんて知らないけど、私の祖先によるこの国の統治始まりは私が魔王になったすべての始まりでもあるわ。特にこう、もう運命として決まっているような感じね。私のおじいちゃん、いわば先代を見ていたときから自分がああいうようになるんだって」

彼女の言うにはそれは運命という物で決定されているらしい。じゃあ僕がここに来たってことも、魔王と人間側の土地で偶然出会ったってことも運命じゃないか。いや運命という変数と言った方がいいのか?この僕がゲームクリエイター、もっといえばプログラマーの見方として。

前原「ほほう、それでそれで?」

僕は無礼にも腕を組みながら、そして某ちゃんねるのアスキーアートのように彼女を見下ろすような姿勢をしていた。

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