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第11話

僕は直ぐにダウンロードするの文字を押してまたお決まりの構文となんやかんやの利用規約、いわゆる“代償が発生します”という文章にはいのボタンを押して、その代償となるものを選んだ。それは“氷の息吹”、あの時発動した足止めはここで捨てる。そしてその文字が消えた瞬間、新しいなんか強そうで小学生が好きそうな名前が僕の勇者会で貰った札に刻まれる。これで接近戦になった時は十二分に戦える。だとすると次は遠距離だな。何かいい感じの奴が・・・

僕はスクロールして、何かいい物がないかその掲示板で探してみる。

そうやって指でするりするりと指で下に下げるような指使いをしてみる。すると目の前の掲示板の、その人間の書く怪文の羅列は一気に移動し、それは彼の指を彼が探したいものまで連れて行ってくれる。いや、連れて行くというよりその羅列が動いて、指の場所まで届けてくれるものなのだ。そして届いたものはそう、かのグラファイト・ブレット、訳すなら鉛色の弾丸だ。勿論この能力をダウンロードして自分の物に、でも代償はどうしよう。ワイルドホーンの呪い、もういいやこれにしよう。もうワイルドホーンのm呪いとかなんか不吉な事起きそうで嫌だし。

僕はその呪いにはもう屈しない、これで心と体がすっきりするという安堵の思いでそこに指をやる。しかし、それは掲示板にとってはダメなもので、変にアラームが鳴ってしまった。

ヴィーヴィーヴィー!!ヴィーヴィーヴィー!!

そのアラームは音量が明らかに大きく、この音で多分居場所がバレたのかもしれないだろう。そしてさらにその目の前にポップアップされるように出たUIは、“エラーが発生しました”とあった。エラー?これって同じような魔法だよな?でもなんでこれを捨てる事ができねぇんだ?もしかしてあれか?呪いだから外せませ~んwwプークスクスwみたいな感じの奴か?そうなんだな?そうなんだよな?じゃあいいや他の物で。

僕はその“エラーが発生しました”という文の下にあったはいを押して、今度は身体強化を選んだ。これもなんか懐かしいな、あの時になんか偶然取れたもんでもう使ってないから別に変えてもいいか。“はい”っと。

そのボタンを押した瞬間、また札にあるそのスキルの欄にある魔法は消えて、新たにグラファイト・ブレットがそこに刻まれる、明らかに文字数が多すぎて2行になったが。

前原「これでよし」

僕は確認した後、右手でピストルのような形を取り、空に向かって祝砲を撃つようにしながら、

前原「グラファイト・ブレット!」

と言った。すると、一本の光の筋、いや塊が空に向かって撃ちだされた。爆音と煙と共に。そのおかげで耳がキーンと鳴り、おかげで数秒間は何も聞こえなくなったがまあ大丈夫だ。

アルティノ「マエハラ。マエハラ!来たわよ!








ヴィトって娘が!」

その銃声に引きつられたゾンビのように僕たちの目の前に立ちはだかるのは凛とした元女騎士、ヴィト・ローズが剣を抜いて立っていた。

前原「もう後には引けない、か。フゥ・・・行くぞ!」

アルティノ「ええ!」

彼女たちのコンビは以下に発揮されるのか、前原悟こと勇者と魔王アルティノの共闘、そしてトタン張りの共同作戦が今始まる!

ヴィト「爆音と光の筋が見えたからねぇ…ここだったねぇ!マエハラさん!!」

そう呟く彼女は静かに、ゆっくりとこちらに歩いてくる。僕はというと、すぐに彼女の目の前に立って早速剣術の極意という魔法に近いだろうけど若干遠い物を使ってヴィトに切りかかる。

しかしその瞬間、彼の切りかかった先には誰も居なかった。あれ?どこ行った?そんな感じで見回すと、すぐ後ろに立っていた。

ヴィト「後ろが空いてるよ?マエハラさん」

そう言っている彼女は、剣を横から振り上げて切りつけようとしていた。マズイ、避けられない。そう考える暇も無く僕は切りつけられようとしたとき、僕は直ぐにほぼ飛び道具であるグラファイト・ブレットを唱えて撃とうとしたが、その目の前にいるヴィトはいなくなっていた。見ると月の前にコウモリのような翼がそれを埋め尽くすように羽ばたいていて、その真ん中と下には魔王とアルティノがいた。あっ(囮役って)このことかぁ・・・!僕はそう思った。そしてヴィトの方を見てみると、さっきまであった加護が消えていた。やっぱりあの方法で大丈夫だったんだ。

ヴィト「クそっ!HA☆NA☆SE!僕はマエハラさんと結婚するんだ!子供をいっぱい産んで離れられないようにするんだ!離せこの・・・人類とマエハラさんの敵がぁぁっ!!!」

そんなどこかで聞いたセリフが、上に飛んで行った加護のオーラすらない彼女の口から発される、しかしその上に居る魔王は何もそのつもりではなかった。そして両手でわきの下からガッシリと掴まれているのでどんなに藻掻こうが離れない。もはや魔王にとってはこの命に代えてでも、いやむしろ代えてほしいからサッサと撃てと言わんばかりの気概で。

アルティノ「マエハラ!早く撃って!魔法を唱えるのよ!」

そんな彼女はヴィト、ヤンデレイケメン女子の隙間からそう僕に叫ぶ。でもなんでだろう、撃つに撃てないや。だって魔王も道連れになるんだから。これまで彼女は助けてくれた、喧嘩したけど殺さずにいてくれた。

アルティノ「早く!!もう持たないわ!」

そしてあの時助けてくれたんだ、もっと撃てなくなってきちゃったよ。

「早く!!」

そんな魔王の叫ぶ声が聞こえるものの、僕の耳には聞こえているけど脳への道はシャットダウンされていた。

「早くしてよ!!勇者でしょ!私を倒す勇者でしょ!!」

しかし、その声も虚しく掴んで飛んでいる彼女に掴まれているヴィトに、反撃のチャンスを与えてしまった。彼女が手から剣を離して、

ヴィト「ローズ家ッ・・・バラ流剣術っ!道は茨のように・・・姿は薔薇のように・・掴んでみなさいその・・・茨をっ!耐えてみなさいその痛みをっ!!僕は掴んでみせるっ!!その痛みを!」

そう彼女が叫び、そして剣から茨が出てきた。そう、彼女のローズという名前の由縁である技だった。その瞬間、彼女は剣を手放して、いやこちらの方にいきなり投げてきた。その剣は僕の数センチ横に突き刺さっている。その茨と一緒に。また絡みつくタイプの痛々しい触手プレイだ。そう思って後ろに下がると、こちらには攻撃してこなくて逆に空を飛んでいる彼女の足に巻き付いた。

ヴィト「僕を巻き付けろっ・・・!その茨でっ!」

すると、その剣はいきなりクレーンの巻き取り機のようにツタを巻き上げ始めた。その足の血と共に。このままだとまた地面に付かれてしまう!そうしたら今度は魔王、ついでに僕が完全にくたばっちまう。

それはダメだ!魔王を倒すのは勇者であるこの僕だっ!あの時勇者になって私を倒せという使命を受けたからには、その後ろで飛んでいる奴を倒さなきゃいけないんだ!

はぁ・・・なんかアニメみたいだな、使命を背負わされてる主人公っていう感じは。

そんなこの世界と今ある僕の状況にとっては些細な事に気にかけながらも、その二人の手に汗握る駆け引きは続いていく。どちらの方が勝つか、ヴィトが地に足を付けるのが早いか、このまま魔王がばっさばっさと羽ばたかせて時間を稼ぐのが早いか。

アルティノ「マエハラっ!!」

そんな叫び声が聞こえるや否や、僕はぶら下がっている彼女に対して僕は手でピストルの形を作る。そして上に居る彼女を狙うように構えた。

前原「(なんだっけ、魔法ってのはベクトルと同じで方向と大きさとついでに属性を指定すればいい・・・んだよなカーンさん?)」

そんな頭の中でアバドン生命の樹魔法学園の某講師を思い出しながら、ピストルの弾をイメージして、それが指の先から真っ直ぐ飛ぶような事を想像してみる。

前原「えっと~・・・あっそうだ!グラファイト・ブレット!!」

僕はそう宣言して、右目で狙いを定めようとした。すると、

バァン!

しかし、それを前にその物質は指の少し先で生成され、瞬くコンマ数秒後すぐに解き放たれた。よく狙って撃つ以前に暴発したのだ。それは一瞬で掴まれているヴィトの元へ行き、彼女が着けているチェストプレート、いわばくっ殺女騎士ご定番の装備に当たった。ガコンっという音が鳴った後、魔王がガッシリと持っているその女騎士はぐったりとなって、その撃たれた彼女の全体重が魔王の腕に圧し掛かる。

アルティノ「あれ?え、ちょちょちょちょちょちょ・・・マエハラぁ~~~!!」

その重力と重さに連れられて、彼女は羽ばたかせていたバランスを崩し、やがてそれはヒュルヒュルと回転しながら、そして断末魔を叫びながら落ちていく。まるで対空砲でパイロットが気絶した蚊トンボのように。そして落ちていった先は森の木の中。つまりどこに落ちたかわからないのだ。

僕はその落ちた方向へと一目散に向かっていく。

月の光で何とか見えていたものの、しかしこれではどこに行ったのか分からない。どうにか目印とかを付けてもらえればいいのになぁ・・・と思って何か火を起こしてその明かりで探そうと思ったが、手間が省ける物があった。

それはあの時突き刺さった剣。しかもまだ何かが絡まったままだった。ぼくはそれを持って、そのうち一本のアウトライヤーが示す先に向かっていく。その剣がその道へと僕を導くのだ。

しかし、その最中一本の棒が左の頬を掠った。先が月光によって白く光っており、細長く短い物だった。そう、矢だ。しかもそれを射ってくる奴は一人しかいない。

アンナ「今のはあえて外したわ。動かないで」

彼女の口調はあのハーシェルでの勇者会で初めて会った時のそれ、いやその直後のポワポワとした態度とはうってかわって冷えた口調だった。

前原「もう銃使えよ。アンナさん」

後ろにいる彼女はそれを聞いた途端、少し失笑した後にこう言っていた。

アンナ「笑わせないでよ、マエハラさん。私たちを弄ぶのもいい加減にしてよッ!!っていうか銃ってなによ!?」

後ろにいる彼女は姿形が見えなかったものの、それは怒りに満ちていることが声で分かった。

前原「じゃあどうするんだ?」

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