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第9話

私はその文字を、その文を見ていた。その時、先ほどの信者達がしでかしていた事と、今このマエハラサトルさんがここで書いていることに合点がいった。私の信者は何てことをしてしまったのだろう、これでは神の代行者である私としても面目ない。神に対しての不敬、そして信者たちの罪はどうか私が一身に背負おうと感じていた。何か彼ら出来ることがあるなら、どうか手当して解放してしまおう。そう思って、その“アルファ掲示板”に、

信者どもは貢ぐべし“今からその地下牢に向かいます。手当のために色々と包帯や薬、そしてお腹が空いているでしょうからお弁当を作ってきます”

と残して、自分の部屋の扉を開けてその地下牢へと向かった。


~教団内の医務室~

医務室の前、私は扉を3回ノックして大きな声でこう言った。

セシリア「少しよろしいかしら!」


「どうぞ~」

目の前の扉を開けると、そこは窓側にデスクと椅子があり、デスクは色々な本が、椅子には一人の女性が居た。彼女は回復魔法に特化した僧侶で、同じくこの教団内において医者の役割を担っている。そして壁側には色々な薬が入っている棚が二つあり、一つはまるで食器棚のように扉が二枚つけられていた。

「セシリア様、どういたしましたか?」

彼女は私に気づくと、その顔と体を私の方向に持ってきた。

セシリア「薬と包帯を頂戴。痛み止めを」

すると、彼女は小さくうなずいた後立ち上がって、その壁側にある棚の扉を開けた。そこからまず包帯を二巻き取り出し、そして痛み止めの薬をその横にある棚から取り出した。私はそうやってその二つを取ると、振り向いてまたそこを出ようとしていた。しかし、その医者は彼女の肩越しに声をかける。

「これでとりあえず安静になれます。しかし、セシリア様自身がなぜ出向かれるのですか?やっぱり私が行った方が「いいわ、だって私の仕事だもの」


「そうですか」


~厨房~

時刻は昼前、皆忙しそうにせっせとその戦の前に準備をしている人たちが居た。そう、神の庭園指折りの料理人である。彼女はその内の一人に声をかけた。

セシリア「簡単な料理を作って頂戴!サンドイッチを5人分」

そう言うと、彼はすぐに反応して、

「はいよ」

そう言ったあと、すぐにそれを作り始めた。少しの間待っていると、それは直ぐにできていた。

「持っていきな」

そして、その料理人はすぐに他の仕事をやり始めた。どうやら厨房はそれほど忙しいようだ。そんな事に申し訳ないと思いながらも、私は傍にあった木で編まれたランチボックスにそれを入れた。

セシリア「ありがとう」

そこに薬と奇麗な包帯もついでに。


~地下牢~

薄暗い地下室。私にとってそれは見慣れない光景で、まるで私のいる所とは正反対の場所だった。そんな中、私はゆっくりと足を進める。後ろに二人の守衛である信者を引き連れて。

「なぁ、なんでセシリア様自身がここまで足を運んで来たんだ?まったく意味が分かんねぇ」

「さぁな、そんな事なんか気にしてねぇんじゃ「あなた達」は、はい!」

彼女は二人に声をかける。“ここから回れ右して出ていけ”と、私は言いたかったがそれは口から出る寸前の所で止めた。そして、凄く優しい言葉で

セシリア「もうお昼ご飯はすぐですから、あなた達は休憩に入っても良いですよ?鍵だけ私に渡していただける?」

私は出来る限りの笑顔でそう言った。まるでその笑顔の前には誰もがひれ伏すように絶対的な物で。

「は、はい!では・・・鍵を」

そう彼が言うと、彼はポケットから鍵が一本の輪で束になっている物を渡した。そして彼らは去っていく。しばらく歩いたところに、彼らは居た。一人の人間に3人のゴブリン、そして角の生えた魔族の少女がそこにいた。

私は恐る恐るその言葉を口に発する。

セシリア「あの~・・・マエハラ、サトルさん?」



~~~~~



その声がすると、僕は睨めっこしていた“アルファ掲示板”から目を離し、その声がした方向に目をやる。そこには、鉄格子の先に佇む白いネグリジェ?ワンピース?を着て金色の巻き髪を持った女性が、弁当のかごを持ちながらそこに居た。僕は自分の名前が出てきた時、一つ頷いてそっちを振り向いた

前原「えっと~、信者どもは貢ぐべしさん?」

そんな事を言うと、彼女も頷いて「はい」と言った。しかし次の瞬間、彼女はいきなり頭を下げてきた。こんな魔族達とならず者に対して頭を下げるのかと驚いていたが、

セシリア「申し訳ございませんでしたっ!!」

いきなり謝罪から入って来た。まさか謝られるとは思いもよらなくて、僕はちょっと動揺していたが、横を見ると魔王は普通にふ~んとした雰囲気だった。

セシリア「私の信者があなた方に対して酷い過ちを犯してしまった事をどうかお許しください!私の名前はセシリア。神の庭園という宗教を運営している者です!この度は私の信者が非倫理、非道徳的な行為をあなた達に行ってしまい、申し訳ございませんでした!!」

最早それは誠心誠意の謝罪だった。僕はそんな謝罪を受けるどころか、むしろこっちが謝罪したいほどだった。サイコパスだとか勝手に決めつけたりして。

セシリア「手当した後即刻解放させていただきます。そしてこのランチボックスは5人分の食事と、包帯と薬が入っております。どうぞお使いください」


前原「いやいやそんな薬なんか、僕は大丈夫ですよ」


セシリア「でも!どうぞお受け取りください!どうぞ!」

彼女はそう言うと、その鉄格子の鍵を開けてその弁当を渡してきた。僕はその弁当をなくなく受け取る。中身を開けるとサンドイッチ、ちょうど5人分だった。

僕はその一つを手に取って食べる。口の中に広がったのは甘いブルーベリーとラズベリーのジャムが塗られたパンの味だった。

前原「お、おいしいです。ありがとうございます!」

そのおいしさは、疲れをいやす程であった。僕はそう言った後、残りのゴブリンや魔王アルティノにも渡した。

アルティノ「悪くないわね」

そのおいしさは、魔王である彼女も唸らせる程だった。


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