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第4話

二人の戦っている中、こっちも周りに盗賊がゾロゾロとやって来る。見れば全員ナイフなり包丁なり、剣なりをチラつかせながら。

ヴィト「ねえ、気づいてる?」

そんなことにヴィトが最初に気づいた。

ネチネチ「ああ、盗賊が出てきたことは」

そんな事を言って、またネチネチは目の前にいる彼女に対してまた攻撃を仕掛ける。だけど、一つヴィトはネチネチに対してその攻撃を避けながらある一つの提案をする。

ヴィト「ねえ、僕達さ、一回戦うのをやめない?」

そんな提案に、彼は首を傾げた。

ネチネチ「やめるのか?別に居ても居なくても俺は変わらないが」

彼は、そのまま足技を何度も繰り返している。聞く耳を持たずに。

ヴィト「だからさ、一回やめよって。一回止まって、ね?」

その言葉を皮切りに、彼らは争うのを辞めた。

ネチネチ「んで、何だ?盗賊だとかは別に・・・」

その瞬間、ネチネチとヴィトの間にいきなり、銀色の光沢が縦に通りかかる。それは細長い物で、二人の間を風切った。

「きひゃひゃひゃひゃひゃはあ!!!!!」

そんな奇怪な笑い声と共に。その声の主は赤いバンダナを着けて、ボロ布を身に纏った20にも満たない青年だった。二人は反射的にそれを避け、その青年に向かって

ネチネチ「おい、こいつ子供だぞ?子供なのに盗賊をやってるのか?人類も終わったもんだな、これなら魔王軍が攻めなくても自然に崩壊するものだな!」

ネチネチは笑ってその惨状を揶揄する。

ヴィト「うるさいなぁ、そっちこそ終わるじゃん。もうすぐ勇者が制圧するんだから」

そんな“勇者”と言う言葉にネチネチは敢えて嘘を言う。

ネチネチ「勇者?そんなものいないなぁ?だって魔王が直々に殺したんだからよぉ!」

だけどそんな嘘は、完全に嘘として笑われてしまった。

ヴィト「アッハハハハハ!面白いね!でも勇者っていうのは人がいる限り無限に生まれるんだ。だからまた王国の誰かが探せばいい」


ネチネチ「ふん、また探せばいい・・・か」

そう言うと、まず先にネチネチが盗賊に向かって動いた。そいつは目の前にいる奴に向かってまずジャブ。そして、右ストレートからのワンツー・・・と見せかけて、右ミドル、回し蹴りを首辺りに当てた。その当てられた盗賊は、ぺちっと音が鳴った後、一瞬でよろけて倒れた。

ネチネチ「ふぅ・・・次」

周りで見ていた盗賊達数十人も動揺していたが、それに構わず刃物を持って、全員殺しにかかって来た。一人は手斧を頭と同じ高さで、もう一人は短いナイフを両手で持って向かってきた。まず目の前にやって来た3人は真ん中は大きなナタらしき、だけどよく磨かれていなくボロボロだったので分からなかったが、あきらかにそれは十分殺傷力のあるものだった。

そのナタを持った男はそいつに向かって、まず大振りな二振り。そのブオンブオンとなるそれは、ネチネチとその周りの空気を斬っているようだった。ネチネチは思わず間合いを取り、そうやって向かってくる盗賊の腹をまるで空手の蹴りのように前蹴りした。

それを腹に繰り出されると、盗賊はまた距離が離れた。その離れた所から、一気に近付いて、肩を掴んで膝蹴りを食らわした後、顔に一発フックをお見舞いして、完全に倒した。

両方から向かってくる者たちがいれば飛んで股を180度開き、その足を顔に食らわし、また上からくるものが居れば地面についている足を天へ、また手を地へと置いてその頭へと殴る。そのリーチは長く距離があり、そのデカブツを倒すのには十分だった。

しかし、そんなネチネチは後ろに気づかず、そこから盗賊は襲い掛かって来る。

しかし、そのならず者に裁きの剣が下りる、つい数分前まで戦っていたヴィトだ。

「後ろが空いているよ。僕が居なかったらどうするの?」

その言葉と共に、剣術を蓄えた西洋剣を持ったヴィトが、彼の後ろに立ったのだ。

ネチネチ「別に付かなくてもいいさ。騎士さんよぉ」

そう言うと、ネチネチは囲んでいる盗賊数十人に対し立ち向かう。パンチやキック、果てには武器を奪って投げて当て始める。一方、ヴィトはその巧で、そして彼女の家に伝わる独特な剣捌きで、その盗賊をばっさばっさと斬っていく。

ヴィト「ローズ家バラ流剣術。道は茨のように、姿は薔薇のように」

彼女はそう唱えると、その直後に、剣を直立した自身の前に立てて、刃先の真ん中に手を添えてこう言う。

ヴィト「掴んでみなさいその茨を。耐えてみなさいその痛みを」

まるでパスワードのように、彼女は呪文をその剣に答える。すると、彼女の剣には茨が巻き付いて、その棘が剣をさらに強くなった気がした。ヴィトはそれを横に振り、突き立ててその剣を自慢せんばかりだった。いや、自慢するというより空気を斬ったのだった。

「ハッタリかましやがって!!奴隷にするんじゃなくてぶち殺してやる!!」

そんなことお構いなしにする盗賊達はナイフを一振りした後、何も関係なしに襲い掛かって来る。だけど、ヴィトも逆に向かって行った。まるで光すら置いていくように。

その剣術はいとも美しいもので、そして痛みを伴う物だった。茨と剣に着いた血は、まるで薔薇のように美しく、そして残酷だった。スルスルと切り抜け、背後を取り、

まるでカンフーハッスルという映画のように動く彼らは、互いのカバーを一瞬で知って補い合いながら戦っているようだ。敵を変えたり、後ろからの攻撃を互いに防いだり、

一瞬土埃で見えなくなっていた。そんな中からは、戦意喪失から逃げていく盗賊達でいっぱいだった。そんな土埃が消えた後、彼らは互いの背中を対にして、立っていた。

そんな最中、前原悟のいる方から盗賊の身体が草むらから投げ出された。決してタオルノックアウトではない。



~~~~~



「はいやぁ~~!!!!」

そう叫びながら向かってくる盗賊の一人は、手斧を持って突貫してくる。だけどそれにやられるような僕ではなく、いとも簡単にをその持っている武器を奪って、その体を草むらの外へと出した。それを見るや否や、どんどんとミツバチのように襲い掛かって来る。だけど、それはもうもはやちっぽけな攻撃にしかすぎなくて、それでも彼らは襲ってくる。

僕はさっき奪った手斧と剣とで二刀流を、まるで黒の剣士のようにし始める。それをぶんぶんと無造作に振り回しては、相手との距離を詰めていく。だけど間合いを取られて、何も当たらなかった。


「・・・」


ただそんな静寂が過ぎていく。何も起こらず、何も火は立たない。

「殺せーーー!!!!」

すると、一人の男が発したのか、またそれにつられてきたのか、全員また襲い掛かって来た。

「「へいやぁーーーっ!!!!」」

僕はそれをどんどんと避けていく。いや、こんな盗賊達のナイフ程度は、避けてしまえるのだ。僕は、大振りな大刀、もはやそれは湾刀に近い物を振り回す奴が目の前にでるが、完全に間合いの中に入っていた。自分の武器の出番だ。僕は左手にあった斧を、そいつに降り下ろす。ザクリと音が鳴り、その斧が切れ込みを作って、骨の所にまでとどまった。

「いってえぇ~~!!」

そんな悲鳴が聞こえるが、僕は更に右手の剣で胸に刺す。それは背中まで達して、そいつの命を終わらせた。すると、その刺した盗賊の腕はだらんと下がり、重さがずっしりとその剣に来る。まるで重心が一点にかかった弥次郎兵衛のように。

その一部始終を見ていた周りは、その僕の行動にドン引き、というか少し距離を置いていた。もはやその盗賊らは、武器を下ろしてその様子を見ており、固まっている。

前原「(この状況どうしたらいいんだ・・・?)」

だれも襲ってこない。むしろこっちから襲える程簡単なフィールドとなっている。僕は何とかさっき刺した奴の剣から、足をそいつにかけながら取った。ついでに手斧も。しかし、どうすればいいのか。このまま簡単にサクッとやってしまうのもなんか自分のプレイヤーとしての・・・アレを感じるというか、何かヤルせなさを感じる。なんかこう・・・もっと刺激が欲しい!もっと映画のように、ゲームのように戦闘をしたい!まるで自分の能内麻薬がドッバドバに出るようなファイティングスタイルがいい!まるでスピーディに、そしてダイナミックに!そして・・・なんだっけ・・・そうだ!パワフルにだ!こんな感じにスロウで一人ずつやってるような物じゃなくて、スピーディで大多数を相手にするような戦いが欲しいんだ!僕はそんな事を考えているその最中、僕はその盗賊達の目の前に現れていた。そいつらは僕におそれ慄くように、次第に僕との距離を離している所だった。ナイフを構えながら、

そして僕と目を合わせながら。

僕は何を考えたのか、急に左手にあった手斧を持ち替えて、その盗賊に向かって投げた。それは回転して、回転して、回転したそれは盗賊の頭にグサリと深く刺さった。その刺さった盗賊は、一瞬上を向いた後に数秒経ってから、バタンとまるで木が落ちるように倒れていった。

「・・・」

だけど僕はそれに臆することなく、いきなり走って間合いを詰めた。左手の剣をそのまた盗賊の一人に胸を刺す。今度は深くまでではなく、少し心臓を刺すように。

そこからもう一人に切りつけ、またもう一人は剣の腹で叩き、そしてもう一人は首を斬ろうとしたが、骨と、ありもしない筋肉がそれを邪魔した。それで剣がまた離れなくなってしまい、使えなくなっていた。

その機を待っていたかと言われんばかりに、その時を襲って上に乗って来た盗賊のおかげで僕は地面に倒れて、そしてその上からとどめを差さんとしてくるその様子に僕は両腕を頭の前で交差させて守る。しかし、そのナイフは目の近くまで来ており、絶対絶命だった。これじゃあちょっとヤバいと思って、何とか左手でそのナイフを持っている奴の腕を掴み、右の空いている手で手探りで回りを探す。すると、だれか僕が倒したであろうナイフを見つけたのでそいつの脇腹に下から何回も刺した。必死の思いでやった。すると、その刺した男はナイフを僕の顔より数センチ左の所で落とし、そのやせ細った小さな体は、みるみると重くなっていった。まるでそいつは人間という生物から炭素や金属といった物質になるような、まるでそうやって重くなっていくようだ。そう、そいつは生命活動を停止して物質となったのだ。僕が刺したところから血が出まくって。

だけど僕はその人を殺した、という事では怯えない。なぜならこれはゲームなんだ。まるでGTAやManhunt、Codのように同じゲームなんだ。プレイヤーとなって敵を倒していく。

それがこのゲームの主旨の内の一つなのだ。いずれプレイヤーは勇者となり、英雄となるのだからこの殺しは構わないのだ。

そんな事を考えながら、追いかける理性にそうやって言い訳をつけて逃げながらそのナイフを僕は、また投げた。今度はちゃんと当たって、特に目に当たった。まるでシェパード将軍みたいに。そして僕はとあるスキル、というか魔法を使おうと考えた。

それは、

前原「アルファ掲示板!」

そんな彼は、死んだ盗賊の下で死んだふりをしながら、まさかの一番ここで必要なさそうな物を発動した。一体何を考えているんだ、頭のネジどころか鉄板一枚はだけて内部の線がむき出しになってるんじゃないか。そんな事を読者は考えているだろうが、そのアルファ掲示板こそが今現在彼にとって最大の防御であり、攻撃であるからだ。

~アルファ掲示板~

マエハラサトル“誰か助けてください!盗賊に囲まれています!”

そうやって死体が上に乗っかかったまま、手に血がドップリと付着したままキーボードを触っていた。しかし、その捌く腕は変わらず何もカキコには影響しなかった。

サラリー魔ン“しょうがないわね。なんか私にできることは無いの?”

アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限“おやまあ、大丈夫ですか?”

それに反応したのは二人、サラリー魔ンこと魔王アルティノとアバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限さんがそのSOSにすぐに反応した。

アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限“うーん、何かこの掲示板は・・・お助けする事は出来るのでしょうか?”

サラリー魔ン“出来るわよ。ダウンロードするわ”

そんな最中、この掲示板が何かを知っているネキが、今北産業のニキにどうやるかその身を以て教えてくれたンゴねぇ・・・。

すると、その下に何か現れる。それは、まるでPDFとかのファイルをダウンロードする時に出てくるようなタブが出てきた。そんなUIも構成されているのか。ますますこの掲示板の謎が深くなっていった。というか、代償があるって聞いたけどどうやって払えばいいのか。

サラリー魔ン“これを使って切り抜けて。マエハラサトル”

そんなメッセージの下に、僕は指をそのダウンロードタブに指を近づける。そして、その指がタブと触れた瞬間、さらにポップアップが出てくる。まるで今まで出てきた“生きたいですか?”といった煽り文のようなものが。

今度は、“サラリー魔ン の能力をダウンロードしますか?”という文字が出てくる。そしてまた下の文字に“はい”と“いいえ”というボタンがその下にまた出てきた。

僕は勿論はいにボタンを押して、その能力を得る。しかし、もう一つ出てきたのは“代償を払う必要があります”、という文がもう一つのパネルにポップアップされて出てくる。

代償か・・・確か支払うには同等の物をこっちが用意する必要があるって書いてあったな、ABS553さんが。

しかし、ボタン一つでポチッとなでなんでもダウンロードできる代物があるとは。これだとこの世界の因果律だの、常識だのが一気に崩れるかもしれない。多分この世界は魔力とか魔法とか魔術とかは生まれによって決まっていて、多分一般人とその他・・・所謂天才と呼ばれる奴がいて、そんな奴は一つ異なった努力をして大成するタイプと、もう一つは犯罪に走るタイプが居そうだなぁ。そんな感じのアニメでよくあるテンプレ異世界かと、このアイセラ大陸でそう思った。そういう奴らは才能という言葉で片づけるんじゃなくて、多分努力だとか言うんだろうなぁ。

そんなこの世界に対する偏見が生まれる中、何とか僕はその能力のダウンロードがやっと終わって、やっと彼女の能力が使えるとなると、少しわくわくした。僕は胸を膨らませながら、ポケットにあるその“能力“が乗っているだろうその名前を見る。

そこには見慣れたスキルの欄の横に見慣れない物があった。

その名前は“氷の息吹”。まるでマヒャドの様だった。僕はそれを仕舞って、右手を突き出す。

そして、その氷の息吹という物をイメージした。それはまるで、冬の長野の降り積もる雪のように。そして凍てつく吹雪のように。それは“突進”で消えた空白の中に。

そうイメージできた暁、僕は死体の間から手を出してこう呟いた。

前原「こ、氷の息吹!」

その瞬間、手の先からは大吹雪が舞い降りた。それは天まで昇り、そして地に落つる。その落ちたそれは雪となり、氷となって、その周りの盗賊に降り注いだ。

盗賊達の周りには白銀と、氷で白い景色が広がり、冷たい空気が広がっていた。

そして最も驚いたのは、その寒風は奴らに衣を着せる暇をも与えず、彼らを凍らせた。周りを見ると、逃げている途中で凍らされたものの、攻撃しようとした一歩手前の所で氷にされ、まるで躍動的な彫刻のようになっている。

僕以外の一面、それも草木を含んで数人が凍ったのだ。

少し規模が小さかっただろうか。その残りの連中は森の中へと蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

僕は死体の偽装からそいつらを追いかけようとするが、

「マエハラ。そろそろ行こう」

その声まさしく魔王アルティノによって止められた。後ろにいた彼女は、どこか忙しそうにしているのもその声で分かった。しかし、彼女はいるものの、アンナ・シュトレンの姿形は見当たらなかった。



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