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第1話

魔王城へ向かう旅路の中、未だ人類と魔王を分かつ山の麓に彼らはいた。

魔王「これから魔王城に向かうのだけど、確認できる限り3つ。私たちにとって脅威なのが二つ、あなたにとって脅威が一つ。それらを理解したうえで勇者になってもらうわ」

そんな中、彼女は淡々と言葉を発す。

前原「あ、そうかい。ありがとう。その脅威って?」

僕はその脅威という物が何なのか気になった。

魔王「簡単に言うなら、盗賊と狂信と魔王領、ね」

凄い簡単にただ単語だけで言ってくれた。魔王という物は難しい物を単純化して部下に伝えることが重要なのだろうか?それともトップに立つ器として必要なのだろうか?


魔王「それより今回は勇者として立候補してくれてありがとう。あなたの来訪に歓迎と感謝をするわ!」

そんな中僕は魔王に感謝された。

前原「いえいえ、こちらこそありがとうございます。こんな僕なんかに」

僕もその感謝を伝えられたので、反射的にこちらも感謝してしまった。別に感謝する所はどこにも無いはずなのに。

カカリ「まあ感謝するのはこちらからも、ですよマエハラさん。この度は勇者になっていただき本当にありがとうございます。何しろ魔王が自分を倒してくれる勇者を探しに仕事を放って、私たちと共にここまで来たんですから」


ネチネチ「魔王一行を代表して感謝する。マエハラサトル」

彼はゴブリンとは思えないような態度で、もはや人間に近い物で深いお辞儀をした。そして、僕たちはその森の中に開かれた魔王軍の領内に向かう道へと真っ直ぐに向かった。


~その一行の後ろ~


ヴィト「もう今やっちゃおうかな?」

彼女はそう呟いた。それを聞いていたもう一人は、

アンナ「ダメ!まだ獲物がどう動くか見ていない!多分こっちに気づいたらすぐに逃げるからまだだよヴィト!」


ヴィト「でもさ、もう魔族と会ってるだけでマエハラさんは要注意人物なんだよ?さすがにあれって魔王軍による連れ去りなんじゃ・・・」

アンナはその発言に耳を傾けると、少し驚きと決心したような顔で、弓矢を構えた。

アンナ「じゃあそれを早く言いなさいよ!」

少しキレ気味に。

アンナは弓矢を静かに構え、その獲物を狙っている。

アンナ「ふぅ~~~~・・・」

彼女は大きく息を吐いて、その震える自分の心臓と手を落ち着かせた。それによって、彼女の弓矢はじっと震えぬ弦が、そのまま固定されたようになっていた。その矢尻は彼女の顔と、周りの風景が反射していた。

アンナ「いつでも・・・いつでも仕留められるわ・・・合図を頂戴・・・」

彼女はその弓を引く一歩手前の体勢まで来ていた。しかし、その隣で見ていたヴィトは何か違和感がした。

ヴィト「えっと~、誰に向けてるの?」

そんな質問に淡々と答える。

アンナ「マエハラサトル」

まさかの元仲間だった。その周りにいるゴブリンではなく。

ヴィト「えっ!?ちょっと待ってよ!やめなって!」


アンナ「私たちは捨てられた。今こそ復讐の時だ。主よ、我らが創造神プリバトゥスよ、わが手我が指に報いる力を与え給え。主は我が礎、我が救い、我が矛なり」

彼女はまるで現実世界にあるプライベート・ライアンのジャクソン二等兵のように唱えた。ヴィトが考えていたのはそれは魔法ではないが、ある意味彼女にとっては魔法なのだろう。


ヴィト「ちょっと!ヤバいって!僕達人殺しになっちゃうよ!」

隣にいるヴィトは止めようとするが、どうも話を聞いてくれなかった

アンナ「関係ないわ。もう一度認めてもらうだけ。私たちがあのチームに入れなかったのは・・・もちろんマエハラが入れなかったせいだけど私たちの落ち度もあるわ。だって知らない二人をチームに加入させるより知っている人とか、魔法の階級が高い魔族の方を採用するわ。私だってそうする」


ヴィト「ハァ・・・しょうがないなぁ」

彼女はため息を吐いた後、

彼女の先ほどのような顔は無く、もはや獲物を射止める寸前の猟師の顔をしていた。このまま彼を弓で射るつもりだろう。僕もそれに応じて、左に帯同している剣に手をやった。

アンナ「なにしてるの?」

そんな僕の様子を横目で見ていたアンナが尋ねる。

ヴィト「僕もやる。僕達はマエハラさんが欲しいんでしょ?あの魔族達から奪い返して」


アンナ「ま、まあそうだけど、別にあなたの助けなんか必要ないw「その矢を射ってからもう一本までの間は?」


ヴィト「複数人いるよ?多分一人が向かってきてそれに続いてアンナに襲い掛かって来るよ?ほらあの・・・バンダナをつけたあのゴブリンとか。いかにも襲ってきそうな雰囲気だしさ?」

すると、アンナは少しため息を吐いた後、少し決心したような顔を向けて、

アンナ「・・・なんとか引き付けてちょうだい。後衛は私に任せて。そろそろ私の腕が攣りそうなんだけど」

見ると、彼女の右手が、弓を持っている右手が少し震えていた。

ヴィト「分かった。じゃあ・・・ちゃんと狙ってね?」

ヴィトは草むらから出て、またもう一つの草むらへとそれを繰り返しながら彼らに近づいていく。そして少し前の所で待機した。

そこでヴィトは息を殺して草の中に潜む。もはや騎士ではなくまるで暗殺者のようだった。

アンナ「そこでよ~くまっててね?大体ここから見積もって50米くらい・・・全然範囲内。そういうのは故郷でよく・・・やって来た!」

バスッ!

その弓が勢いよく放たれた瞬間、僕も剣の柄を握って草むらから彼らに襲い掛かる。ちょうど目の前にいたのか、その状況が良く見えた。メガネをかけたゴブリンは何気づいていなくて、たった一人バンダナをつけたゴブリンが気づいた。恐らく探知の魔法か何かだろう。そのゴブリンは矢の方に気を取られて、僕が横から切りつけることすら知らない。

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