一方その頃、途中の小さな草原に止まっている魔王一行は、いつ彼が帰ってくるのかとそこで待っていた。
ネチネチ「ん?あれは・・・」
まずぼんやりとしたその陰が見えたのはネチネチ。周辺で脅威が無いか哨戒していた所、遠くの方に人の姿を見つけた。青い服を着たその男。それは前原悟であり、後に魔王を倒す勇者となる男だった。
ネチネチ「あ!おーい!」
俺は手を振って位置を知らせる。あっちもそれに気づいたのか、走って来た。
ネチネチ「だれにもつけられてないか?」
そんなセリフを言いながら俺は、魔王の元へと向かった。
~~~~~
そわそわとする魔王と、その周りにいるゴブリンは、地べたに座っていた。
ネチネチ「魔王様、勇者来たよ」
その声の方に振り向いた魔王と、もう二人のゴブリンは少し嬉しがっていた。
魔王「おかえり!おかえり!」
温かい言葉の出迎え。それは魔王アルティノではなくもはやアルティノという少女の影を感じさせるものであった。
カカリ「では、いきましょうk「ちょっと待って!」?」
僕こと前原悟はポケットからカカリのためにあるものを渡した。それはあの時渡してくれたメガネだった。
前原「返すよ」
僕は彼の目の前にそのメガネの棒の部分を2本指で持って返す。しかし、カカリは返す前にもうメガネをかけていた。
前原「あれ?もう返してた?」
僕は一瞬困惑していたが、彼はニコリと笑って、
カカリ「いえ、これは予備の方です。それとありがとうございます」
それを受け取った。
魔王「じゃあ、マエハラも来たことだし行きましょ!出発進行!」
彼女は立ち上がって、歩きはじめる。それは誰よりも早く先陣を切ったのだった。
それにつられて僕達も彼女を追って歩く。まるで紐で少女に連れられていく遊園地の風船ように。僕たちは魔王城まで旅を始めるのだった。
ヴィト・ローズ、アンナ・シュトレン。本当に許してほしい。なぜなら僕はこういう人間で、不幸にも選ばれてしまった存在だから____。
~その数キロ後ろ~
その数キロ後ろ、木の陰に彼女たちは隠れていた。
ヴィト「ねえ、マエハラさん・・・ゴブリンとサキュバスに連れていかれちゃったよ?」
そう言いながら横目を見ると、半ば怒っているアンナが居た。
アンナ「はぁ・・・手付きだったか・・・」
そんな捨て台詞を吐いて、また彼女たちはその、ゴブリンに連れ去られた前原悟の後を追ったのだった。
~~~~~
誰もいない寝室。そこで私は一人ベッドに寝転がって、夕食が来るまでの退屈な時間をただ怠惰に過ごしていた。もう聖書は何周呼んだのだろうか?もう何人信徒はついているのだろうか?そんな考えがずっと頭の中を駆け巡る。そう、彼女にとってこの部屋は最早善意で入れられた独房なのだ。信者が言うにはこの部屋は「聖女であり、神の代行者であるあなたにとって最も神に近く、あなたがここにいる事ですべての信者が救われる」と。一体何がしたいのかよく分からない信者たちである。私は金色の長い巻き髪を指で回しながら何もしなかった。
「何が聖女よ!これなら牛舎で掃除してた方が数倍マシだわ」
聖女・神の代行者と称されるこの女性は、白いネグリジェを着ており、膝には聖書を置いていた。
コンコンコン
「入って、どうぞ」
「セシリア様!軽食をお持ちしました!」
そんな声と、扉を開ける音がした。するとそこには一人の信者の女性が左手にサンドイッチが乗った皿を持って入って来た。セシリアと呼ばれる彼女は、難なくそこに彼女を部屋の中に案内する。
「ふふ、ありがとう」
その彼女は笑顔でベッドから出る。
「こちらに置いておきますね?」
その信者の女性は、テーブルにその軽食
「ありがとう。それとこっちに来て?」
彼女はその指示で、セシリアの元へ向かった。すると、
「えいっ♡」
急に彼女を抱き締めた。急にそれをやられた彼女は、どうすれば良いのか分からず、
「セ、セシリア様?何をしてるんですか?」
呆然と立ち尽くしている信者はそう言った。
「ん~?栄養補給。だってずっと一人で退屈なんだから、あなたは私の“娯楽”と言う名の栄養で、私は今あなたをほきゅうちゅー」
そして抱きしめた信者の肩に顔を乗せて、そこからサンドイッチの具材を見る。
「あ、今日はスイーツサンドイッチね?」
まるで子供のように振る舞う彼女は、さらに抱きしめる力を少しだけ強くした。そして数分後、彼女はパッと離して、
セシリアと呼ばれる女性は信者の肩に手を置いて、彼女をテーブルへ通していき、椅子に座らせた。
「それよりあなたも一緒に食べましょ?サンドイッチ」
彼女はあふれる笑顔を、その信者に向けた。
「は、はいセシリア様////」
その信者はそのセシリアの笑顔のうつくしさに、頬を赤らめる他が無かった。