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第6話

すると、その酔っぱらった騎士は笑って、

ボー「仲間ぁ?お前さんパーティでも組もうってのかい」


前原「そうだぞ?」

すると、そいつは更に笑って、

「アッハッハッハ!!そいつはおもしれえもんだ!ここにいる奴は仲間なんて必要ねぇからな?どうしてか分かるか?」

その問いかけに僕は悩んだ。なぜならここは

前原「えっ、どうしてなんだ?」

僕は不思議そうに聞く。すると、そいつは酒を飲んだ後にはっきりとこう言った。

ボー「簡単だよ!他の奴らは信用できねぇ!どういう奴かも分かんねぇから もし盗賊なり変な宗教に入ってたら自分の身の方がモンスターを狩りに行くより危険だっ‼それにもかかわらずお前のようなよそ者はよくもまあその気も知らないで話しかけてくるもんだな~!!何だ?お前は盗賊か?それともさっき言っていた怪しい宗教か?はたまた世間を知らない町から出てきた金持ちのお坊ちゃまか?ん?」

そうやって煽るように聞かれるが、そんな質じゃない僕なので、首を横に振りながら、

前原「(結局仲間ゲーかぁ・・・)いや、ただの平民だよ。世間は知らないけど」

と答えた。すると、

ボー「世間を知らない平民が?じゃあお前は何だ?昨日この世界にうまれt「そうだよ」・・・え、そうなの?」

僕ははっきりと告白した。自身が異世界からの転生者である事を。

前原「う~ん・・・厳密には違うけど。あの~別世界から転生してきたって言えば分かるか?」

そう言ったとき、騎士の顔は眉間に皺を寄せて、首をかしげていた。僕の言っていることが理解できていないのだ。恐らくこいつにとって超次元の話なんだろう。そういうお話に関しては宗教に近いからな。まあ理解できないのは分かる。

ボー「詰まるところお前さんは・・・どっかの宗教の信者だな!!間違いない!やっぱりだ!」

しかし数秒後、何を考えたのかいきなり僕の方に指をさして、大声でそう叫ばれた。その途端、周りの賑やかとしていた音が一瞬で静まった。

「あいつ宗教家だってよ」

「まじ?だけど神の庭園の奴じゃ無くねぇか?」

「宗教の奴だよ。結構信じてるんなら関わらんとこ。目合わせるなよ?」

「いや宗派によるな。神の庭園の奴らは酒なんか専ら飲まねえし」

「白いローブは身にまとってすらねぇな。別の宗派だろうな、多分・・・星の使いって奴か?」

「どうせ神の庭園の奴らはアレだよ。どうせセシリアとかいう牛舎の女にそそのかされた野r「よせ!その話を聞かれたら夜道とお前の命があぶねえぞ!」

そしてそいつら、いやその場にいる全員は僕達の方を見ながら、隣同士でこそこそと話をしていた。中でも皆話していたのは僕の宗教・・・と宗派がメイン。どうやらこいつに話しかけたのが間違いだったのだろう。しかも僕は無宗教だし、少なくともこの世界の宗教には入信していないはずだ。

ボー「図星みてぇだな!どうやら宗教家ってのは本当だったのかm「ちょっと待った」」

その確信にあたる宣言をしようとしていた騎士くずれの一人は、途端に別の声に遮られた。

全員はその声の主の方を見る。僕もその方を見ると、グラスを拭いていたマスターが居た。すると、勝手に掛けてあるメガネの魔法が勝手に発動して、マスターのステータスが次第に見える。

“コラーダ・パトロック 52歳

体力 A

知力 9

スキル:薬剤調合3、炊事、体力強化、火炎魔法強化、氷霜魔法強化、雷電魔法強化、暴風魔法強化、体術の達人、弓術の達人、魔力鑑定、翻訳、感情分析“

見たら只者じゃないステータスだった。もはやマスターはバーテンダーという職業じゃなくて冒険者をやった方が十分な程でもあった。それほど強い人がなぜか分からないがここで酒場兼勇者・冒険者会を運営しているのだ。

バーテンダー「そいつは宗教家なんかじゃない。勧誘っていう訳でもない。そいつはただ仲間を探しに来ただけの人だ」

マスターはそう言うと、カウンターを飛び越してこちらに向かって歩いてきた。

ボー「何でわかるんだ?」

だがテーブルを介して向いに対面している騎士あがりの奴はマスターの方を振り向いていった。

バーテンダー「簡単さ。いまお前に話しかけている奴はさっき僕の所に来たもんでね。どうにも仲間を集めているだの言っていた。これでどうだ?」

そのマスターは右の眉を上げて、両手を広げていた。

ボー「で、でもよぉ?店主さんよぉそいつは建前かもしれませんぜ?」

バーテンダー「建前?じゃあ昨日この男がうちにやってきて、ここで冒険者登録を済ませたってのも建前なのか?なぁマエハラサトルさんよ?ここ冒険者会では個人の身辺に関わる事は機密なんだが、状況が状況だから言わせてもらうけど」

そう言って僕こと前原悟の方を見ている。

前原「あ、はい!たしかにやりました!」

僕は昨日貰った札を取り出し、それをポケットから取り出す。

それを確認したマスターは、またその騎士の方を見た。

バーテンダー「だろ?違うか?本当にこいつが宗教家だとしたら自分の信じる宗教の所でやるはずだろ?それなのに“ここ”に来たんだ。ここに」

マスターは少し怒りながらも、この建物の床を指さしながら言った。

しかし、その騎士は黙ったままで何も言わない。

「まあ店主が言うなら一理あるか…」

「でもよぉ、ちょっと根拠が少なくねえか?」

「だけどここで冒険者登録をやったってんならその記録も残ってるはずだ。なのにそれが嘘ってのもなんかなぁ…」

「魔法とかで何とかならねぇのか?身分を隠す魔法とか」

「バカ言え、ここの道具はそれも探知するからな。小細工なんか通じねぇ」

「いくら何でも元騎士団だから威張りすぎだぜあいつ・・・」

辺りはまたザワつき、今度は別の疑いの目が、別の人物にかけられた。その別の人物は僕に対して睨みを効かせており、まるで何かを言わせんとするような空気だった。

しかし、次の瞬間そいつの手がマスターの方へと伸びた。さっきの奴が手を出したのだ。

ボー「…じゃあ何だ?俺が悪いってのか?なあ店主さんよぉ、おめえはどっちの味方なんだよ?」

しかし、そいつはそんな空気にも構わず、今度はマスターの両手で胸倉を掴んで言った。しかし彼はうろたえる事もなく、そのまま胸倉を掴んでいる方を見る。すると、とある事を発した。

バーテンダー「どっちの味方だとかなんだとかじゃあないんだよ。この店を荒らすなって言いたいんだよ僕は。いい加減にしてくれ、ただでさえ昨日どこかの“誰かさん”がうちで魔法を撃とうとしてたって、あそこにいる“お姫サマ”が不機嫌になったからなぁ?」

マスターは淡々と伝え、その先では完全に顔が赤くなっていた。

バーテンダー「どうする?殴るのか?それとも外に連れ出すのか?いいぞ?やれよ」

だが、完全にマスターの方が一枚上手に見えた。しかしその瞬間、その騎士が拳を作って彼に殴りかかっているのが見えた。煽りに釣られて殴りだすのは人として、騎士として情けない事だが、殴らずに後ろ指さされるよりよっぽどその騎士にとって名誉のある事だったのだろう。騎士と言っても“元”騎士だが。おそらく除隊されたのだろう。

だが僕が見たのはマスターの方が倒れた様子ではなく、その逆だった。まさかの騎士より大きくもない、平凡な体格であるマスターがそいつを押さえつけていた。その瞬間を僕だけではなく、周りの皆も見ており、全員同じようなリアクションでおおぉっとした空気だった。


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