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第4話

~数時間前~

カカリ「我らが癒しの精霊よ。手前にいる者に、大いなる力を宿し給え」

彼にも先ほどのガヴリと同じく回復魔法をかける。すると、筋肉がむき出しになっていない顔の皮膚から見る見ると再生していき、そして骨がむき出しになっていた手もまた再生していった。

ネチネチ「ぅあ・・・ぁぁ」

俺は少し欠伸をしながら目を開ける。すると、横にカカリが居た。俺が起きたのに気づいたのか、そいつは起き上がって、

カカリ「おはようございます。では」

と言った。そして他の所へと急いで向かっていくのだった。

俺は半身だけ起き上がって、あたりを見回すと小さい長方形の板みたいな物が遠くで光っている。俺はそれを拾った。

ネチネチ「マエハラ・・・サトル?だっけかあいつの名前は」

それを見ると、その板に書かれていた名前とその呟いた名前は一致していた。

だが気になったのはそこではなく、スキルに書かれていた文字だった。

“身体強化”

ネチネチ「俺と同じ魔法・・・どうしてあいつが?まぁいいや、おそらくあいつは魔王の方へ向かった。そこで恐らく・・・」

俺は左手でおでこをパチンと叩いて、少し“やっちまったな”と思っていた。

ネチネチ「今頃灰かぁ~・・・あいつ」

俺はその焦燥感にずっと襲われていた。だが、その焦燥感よりも彼が気になったのはもう一つ、札と同じくとあるペンダントのようなが落ちていたのだ。恐らくこの札を引っ張った時に同じく引いてしまい、落ちたのだろう。俺はそれを拾って、周りの土を払っておいた。ペンダントなのだから余程大切なものだろう。

~~~~~

“ネチネチ・ゴブリナス 19歳

体力 8

知力 A

スキル:回転の真意、体力強化、生物感知“

ネチネチ「感謝しろよ~?あえて壊さずに回収してやったんだからな?なぜならお前と俺はライバルだからなぁ」

そいつはニヤリと笑いながら僕にその札とペンダントを差し出す。

魔王「もう準備は出来た?早く行くわよ。日が暮れたらあの場所が閉まっちゃう。そうしたら余計怪しまれる事になるわよ」

魔王はずっと待っていた。貧乏ゆすりをしながら。

前原「もうできたけど質問が一つ」


魔王「早く言いなさいよ!質問なんか!何?」


前原「もし僕が魔王軍の領地に入って出てきたとします。そしたら僕は人類側の方でスパイと間違えられるっていうリスクはありますか?(スーパーロボット大戦みたいにステータス村人レベルに勝手に調整するなこのクソ魔王!てめぇマジで戦犯。殺すよ?)」

内心そう思っていたが、それを言うとさすがに魔王様にもう一度あの炎を浴びかねないので、本性を隠して行きたくないという事を言ってみた。

魔王「まあ、そうなるわね」

それに対して魔王は否定しなかった。

前原「じゃあさすがにそうなると、魔王を倒したってことはどこにいえb「でもあなたは異世界人でしょ?帰る場所もないじゃない。報告でもしたらあなた、ほら吹きと王国で虚偽の情報で王国を混乱、扇動させたとして処刑されるわよ?あなた、死ぬよ?」

僕は魔王によるとある言葉が気になった。

前原「処刑?」

僕はそう聞き返すと、魔王は更にこういった。

魔王「人類王国で混乱させるようなデマを広めたとして」

そう言われて何も言い返せなくなった。僕はため息を吐いて、

前原「いやステータス弱い魔王はあんまりいらねえんだよ」

と、僕はボソッと言ってしまった。

魔王「なんて言ったの?なんていった?」

すると、ちらりと少しだけ聞いていたのか魔王は、怒り気味にボソッと言っていたことを聞いてくる。

前原「やっぱり魔王と一緒にパーティを組むのは一旦やめておきます」

僕は少し決心をして、きっぱりと魔王にそう諭した。

魔王「え?」

僕は立ち上がって、ハーシェルの方へと足を進める。これ以上人類側で要注意人物どころか国を挙げた指名手配レベルの魔王とやっていけない。恐らく僕ももう帰ってきたころには工作員だとかスパイだとかに疑われて、常に何かしらの騎士団や神の庭園とかの監視が付くのだろう。だけどそれは嫌だ。絶対に嫌だ。

前原「(っていうか、こういうのは酒場とかでメンバーを探すのがミソだろうが!戦士と騎士と魔法使いを!勇者と愉快な仲間たちを集めるのが肝だろうが)」

僕はハーシェルの方向へと足早に進める。もういいやあそこの『冒険者・勇者会』で誰かしらナカーマを集めよう。

魔王「ねえちょっと待ってよ!さっき約束したでしょ!?なんで今頃やめるとか言っちゃうの!?」


前原「…」

彼は何も言わずにただ歩き続けていた。私はその後を追うが、彼は私の方をちらりと見ずに。


魔王「なんでよ!何で私と一緒に来てくれないのよ!」

そうやって叫ぶものの、彼は何も私に見向きすらしない。どうやら本当に彼を怒らせてしまったのかもしれない。私は何とか引き留めようと、彼の手を握る。すると、彼は足を止めて振り向いた。私は「やった!」と思い、マエハラの顔を見たが、それは少しだけピリリとした真顔だった。

前原「わっかりましたよ。良いですよ一緒に行ってやりますよ!」

私はいっぱい喜んで、

魔王「そお!?じゃあ・・・」

そう言って私は、マエハラを先ほどいた場所に戻そうとする。だが、それは動くいた感じがしなかった。ただ腕を引っ張っているようで、それがマエハラを元に戻す事にはつながらなかった。

前原「一つだけ条件があります」

その一言がただ彼の口から発せられる。私はそれに耳を傾けた。

前原「先頼りになりそうな仲間を選ばせてください。OK?」

そのOKという意味は分からなかったけど、恐らくいいの?っていう意味かもしれない。私は頷きながら、

魔王「分かった!」

と言った。その時私は、マエハラはいずれ帰ってくると確信してその手を離した。そして、私とマエハラは互いに逆方向に向かって歩いていく。内心わくわくしながら。


~~~~~


カカリ「そういえばなのですが、マエハラサトル兼勇者様は私のメガネをかけたままですね」

そう私が呟くと、ガヴリは振り向いた。

ガヴリ「そういえばそうだったなぁ!返してもらわないと」

そうガヴリが言うが、私は首を横に振った。

カカリ「いえ、予備があるので返してもらわなくとも大丈夫です」

私はズボンの後ろのポケットから取り出したメガネをかけた。この旅での紛失のリスクのために何個も予備を持っていて良かった。ゴブリンは己の力を誇示するためにほぼ裸に近い状態で腰蓑一つという身なりのまま過ごす。だが私は違った。あえてニンゲンが着るような服装を身に着けて、怪しまれぬようにしているのだ。第一服装の良し悪しで印象が決まるという事だから、魔王様が用意してくれた物だがこの服のおかげで何度も危機は掻い潜った。これこそ本当に身を守る鎧という物だ。戦う以前に対立を避け、巻き込まれないようにする。もしもの時には体力が持たない。だからこそ、この服である。




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