前原「まあ・・・そうなるのかね?でも呪いって言っていたけど見た目は何も変わって無いよ?そういうのって体に出てくるの?例えばなんかあざみたいに」
そう言うと、メガネをかけていたゴブリンがそのメガネを目の前に突き出してきた。
カカリ「これで見てください」
僕はそう言われてゴブリンのメガネをかけてみる。するとあらびっくり。見てみた彼女の横に何か文字が出ていた。僕はメガネを上にして、またもう一度かけてみる。それを何度も繰り返した。どうやら僕の幻覚じゃなくて、このメガネでのみ見えるようだ。そして、それは一文ごとに縦に連なっていて
“アルティノ・アングウィス 女 15歳
体力 1→C
知力 2→D
スキル:古龍の
蘇りの息吹
魔王として
全元素魔法攻撃強化
炎の
氷の息吹
古龍の呪い
・
・
・
呪い
呪い
と書かれていた。普通の魔族よりも数倍ほど多くの魔法、というかスキルを魔王はひめていたのだろうか。多くのスキルの横には制限されていますの文字が多数あった。それほど呪いの力が強いのだ。でも僕はそんな呪いの強さに怯えるのではなくて、
前原「(え?ちょちょちょちょちょ!?あなた何をしてんの!?いやまじで無いわ~。仲間になった中ボスがステータス見ると戦ってる時と比べて弱くよくある展開はあるけれども!それは本当にちょっと・・・無理。もしこれがゲームなら2軍行きだよ?マジで)」
カカリ「どうです?よく分かるでしょう。実はそのメガネは特殊なものでしてね。それで見た物とか、そいつの持っている特性とかが分かるんです」
僕はある事に気づいた。それを問い詰めようと、そのゴブリンに話しかける。
前原「えっ?じゃあ見ながら戦ってたの?あの時の僕の特性、というかステータスを見ながら?」
カカリ「まあそういうことになりますね。ステータスがなにか分からないですが」
前原「あぁ状況とか状態とか表す感じの言葉だよ。さっきの特性という言葉と同じ」
彼は納得して、数回頷いた後、左手で自分の顎を掴んだ。その後どこからか手帳を取り出して、そこに何か書き始めた。何か分からなかったが、少し上から覗いてみると、その上には先ほど言っていたステータスという単語が綴ってあった。僕はそれに興味津々になりながら、
前原「メモしてるの?律儀だね~」
と、メガネを貸してくれたゴブリンを褒めた。
しかし、このゴブリンを見ていたら勝手に、このメガネの機能であるステータスの表示がいきなりポップアップで出てくる。
そこにはそのゴブリンの名前が書かれており、その下にはやっぱりスキルが連なっていた。
“カカリ・ゴブリヌス 男 21歳
体力 E
知力 5
スキル:翻訳、雷電魔法強化、氷霜魔法強化、ゲットキー
そう書かれており、謎がいっぱいだった。そもそも体力と知力の数字がなんか変だし、僕のと比べるとよく分からない物が色々とあった。僕はそれが気になって、
前原「あのさぁ、なんか体力と知力のゲージがさぁ、僕の奴と遥かにかけ離れてるんだけど・・・」
僕は右ポケットに入っていたはずのあの札をゴソゴソと取り出そうとする。だがそこには無かった。じゃあ左に入れたかと思ったが、そこにも無い。僕は焦って立ち上がり、
前原「あれ?どこにやったっけ・・・えーっと・・・」
カカリ「ゲージ?」
僕は体の周りをパンパンと叩き、そしてゴソゴソと触っているものの、どこにもない。もしかしたら前の服諸共焼けちゃったのか?そう考えるとさらに不安になってしまって、体中を探すスピードを格段に速くしたのだった。
前原「あれ?本当にない!」
そんな僕に気づいた誰かが、ドシリドシリと地面を踏む音を立てながら、ズンズンと地面が揺れながら向かってきた。
ガヴリ「どうしたんだ?」
あの時剣をくれたデブのゴブリンだ。略してデブリンだ。
しかし、そのデブリンの名前もいずれ分かるだろう。だって僕は今、ステータスが見えるメガネを着けているのだから!
しっかしなぁ~、可視化される系だと何だろう?ある日突然中学校のクラスメートの頭の上になんか数字が出てきて、真面目な学級委員長は8って出て、ヤンキー女子は0という数字が出てて、そしてしまいには校長の上に12660という世が世なら皇帝みたいな文字が出ていたというオチがある。と・・・そう考えていると自然に焦りはなくなっていった。
そして、僕はそのデブリンの方を見る。
またその横にステータスが出始めた。もうちょっとさすがに鬱陶しいな・・・これで最後にしよう。それを見ると、たった4行だけ書いてあった。
“ガヴリ・ゴブリヌス 男 19歳
体力 8
知力 E
スキル:身体強化、巨大化“
ガヴリって名前か。え?それだけ?まじか!それだけでああいう感じのパワーを出せるのかと関心していたら、
ガヴリ「どうしたんだ?いきなり慌てて」
ガヴリは首をかしげながら尋ねる。僕はその圧迫感に圧倒されながらもはっきりと伝える。
前原「あの~、札が無いんです」
ガヴリ「札?」
前原「紐が付いた物で、僕の名前とか載ってる奴です」
すると、僕より大きな体格のそのガヴリというデブなゴブリンは驚いていた。
ガヴリ「それはマズイ!今すぐ探さないと!」
そのゴブリンは後ろに振り向いて、
ガヴリ「カカリ!ネチネチ!なんか札?札みたいなのを探すのを手伝ってくれ!マエハラの名前が載ってる奴!どこかで落としたらs「これじゃねえのか?」
一番遠くに座っていた、あのハチマキをしたゴブリンがそう言う。左手にはその探していたとされる紐の付いた札を親指と人差し指でつまみ、プラプラと“ここにあるぞ”と言わんばかりに揺らしていた。しかし、それ一つだけではなかった。何かペンダントらしき物もあった。
ネチネチ「なぁこれじゃねえのか?マエハラ・・・サトルさんよ?」
彼は僕を見て、そしてその探している札を見てそう言った。