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第2話

魔王「いま私たちは中心の“神の庭園総本部”から近く・・・まあ麓にあるハーシェルと言う村の近くにある森に今いる。これから山脈を超えて魔王軍の領地に入るのよ。そこでは人類の出入国は厳重に管理されているわ。だけど魔王である私の権限で出来るだけ早く終わらせるから。でも関門なのはその前にある“ここ”よ。ここのニンゲンは騎士団より質が悪すぎるわ。言ってみれば、ここの人たちは見た感じニンゲンだけど心はニンゲンをとっくの昔に辞めているって・・・言えば分かる?」

彼女はそう言いながら地図の中心に指を指す。その下には“神の庭園総本部”という文字がやっぱりあった。

前原「あれ?山脈を超える道ってここ以外ないんですか?」

彼女は苦虫を嚙み締めたような顔をしながら、

魔王「うーん、この一本道以外変な結界が張られてどこも行けないのよ。しかも厄介なのがこの魔法。何重にも敷かれてて構造が複雑なの。見た目はたった一枚だけなんだけど、突破しても突破してもまたその部分が、傷口が閉じるみたいに・・・再生するの。異世界人のあなたなら何か分かる?こういう分からない構造とかはあなたなら分かると思って」

彼女は困りながら僕に聞いた。だけど僕は首を横に振って否定する。この世界の魔法なんて根源が魔法の属性と方向と大きさといった基本の事しか分からない。こういう時こそ掲示板で聞いてみればいいのだが・・・あっそうか。掲示板か!

前原「いや、ちょっと待ってね・・・こういう時こそだよ。こういう時こそ掲示板を使うべきなんじゃないかね。初歩的なことだよアルティノ君」

僕はシャーロックホームズの初歩的なコメントを彼女に投げかける。

魔王「・・・?」

どうやらこのネタは異世界人にとっては分からないようだ。ちょっとやめておこう。元ネタが分からない人にネタを押し付けるのはやめよう。

前原「ごめん、忘れてくれ」

そう謝罪を決め込んだ後、また僕は右手を前に突き出し、またあの“掲示板”を出す。すると手を出した零点数秒、僕は何も言わずすぐにそれが出てきた。以外にも前回より早い時間で。そしてついでにキーボードも自動で出てきたので、そこに指を合わせて、文字を打とうとしたが、その手を少し止めた。僕と魔王アルティノこと“サラリー魔ン”、そしてABS553というユーザー以外に、少なくともこのアルファ掲示板界隈で誰も見たことが無いユーザーがいたのだ。

その名前は“アバドン生命の木ゴールド講師@月曜一限”。うん、めちゃくちゃ胡散臭い名前だった。名前からちょっと偏見で性格を決めつけるに・・・絶対何か裏でマルチ商法やってそうな名前だ。それと多分、実業家自称だったら旧ツッタカターだかYだか知らないが、なんか最近なんか成人向けの選手権とかなんかエッッッ!なインプレッションのツイートしか流れないSNSで絶対にコイツはプロフィールの紹介文で“絶対に稼げる方法教えます!”と腕を組んだ変なツーブロックの男が横に乗っている写真で情弱を釣っているんだろうなぁ。絶対友達になりたくない。何か商品買わされそうだしセミナー行かされそうだし!そして何か師匠らしき人と会いそうだし!

もういいや魔王倒し終わったらプロフィールのページ作ってやるからなこの野郎。全部お日様の下に、いや掲示板の下に晒け出してやる。まあいいやそんな偏見捨てて何のコメント書いたか読んでやろう。どうせ意識高そうなコメントだろうし。

なになに・・・?

“サラリー魔ン殿 マエハラサトル殿。私はアバドン生命の樹魔法学園の元素科で講師をやっている者です。諸事情により実名を公表する事は出来ませんが、どうかこの掲示板の上では“アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限”とお呼びいただければ幸いです。そこで、何か質問などはございますでしょうか?“

そこに書かれていたのは噓松でも、TOEIC942点の奴でも、SUICAに10万入れている奴でも、ランボルギーニムルシエラゴ乗りでドアが電動の奴でも、地元の友達で組んだバンドで80万枚売れた奴だけど今は会社員やっている奴でも、自分の大学をよく考えたら早稲田の奴でも、都内85階タワマン住みでもない、本当に先生をやっている方が書いている物だった。いかにも面白いと思ったのはその名前とのギャップ。勿論サラリー魔ンも然り、このアイセラ大陸での名前の自己主張は激しいが、以外にもその中身は丁寧だった。そして何か、先ほど考えていた偏見が一気にどこかへと吹っ飛んで行ったのだった。つまる所とある掲示板でよく起こっていた“○○だけど質問ある?”みたいな物だ。

魔王「スゥゥゥゥ~ハァ・・・そろそろ行く?準備は終わった?忘れ物がないか最終チェックでもする?」

彼女は大きく息を吸って、吐きながらそう言った。

前原「いや、ちょっと待ってください。コメントだけ残しておきます」

僕はそう言いながら、キーボードをタイプして、

魔王「早くして?」

“ども、マエハラサトルという者です。アバドン生命の樹ゴールド講師@月曜一限さんよろしくお願いします!”

僕は軽くそれに挨拶しておいた。ここからどんな返答が来るか楽しみだ。

~~~~~

私はその掲示板でマエハラがコメント?を返すのをただ一人頬杖を突きながら見ていた。そんな中、側近であるカカリが私に耳打ちをした。

カカリ「魔王様、“アレ”をしましたか?」


魔王「アレ?アレって?」


カカリ「偽装ですよ。見た目はともかく、魔王様の中に秘めている魔力を他人が検知しないために!」

カカリは私にそう強く言って勧めてきた。私はため息を吐きながら

魔王「ハァ・・・・しょうがないわね!我の血に巡りし古龍の血よ。我に呪いを振りかけたまえ!」

そんな掲示板を横目に、魔王の方を見ると何か唱えていた。

そう言い終わると、彼女の身の回りに薄黒い紫色のオーラが出て、すぐに消えた。

前原「なんで自分に呪いかけてるの?」

僕はメガネのゴブリンに寄って、何をしているのか聞いてみた。

カカリ「そりゃあ、身分を隠すためですよ。コートなどで姿は隠すことは出来ますけど、万が一これから向かう場所で魔力探知機という物に引っかかって、その魔王たる圧倒的なステータス?から魔王だと推測されてしまったら元も子もありません」




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