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第1話

魔王「我が根城、魔王城よ!」

その言葉を皮切りに、ゴブリンである3人と僕は驚いた顔をしていた。

カカリ「ついに魔王としての仕事をやる気に「いやただ単に戻るだけよ?それとマエハラはそこで鍛えてもらうわ」はぁ・・・」

だけど一人はすぐに呆れてしまった。なぜなら戻っても仕事をしてくれないニートの魔王が目の前にいるからだ。

ネチネチ「えぇ?魔王様働いてくれないんですか~?働いてくださいよ~」

そう煽るようにハチマキをしたゴブリン、ネチネチは言う。

魔王「嫌よ!あんなの無限に湧き出てくるじゃない!どう頑張ったって終わらないのよ!マエハラのサラリーマン?という職業みたいに!」


前原「まあこっちは雇われの従業員ですけどね」

その弱音に僕が呼ばれたので、ついでに何か注釈的な事を言っておいた。魔王と僕とでは立場が明らかに違うし、それと仕事の内容も確実に違うと思うから。ゲーム作りはクリエイティブな仕事だからね?それほど苦労もあるってもんだよ。


魔王「とにかく、魔王城へと向かうわ。マエハラと一緒に。そこでこれからマエハラと一緒に行動させてもらうことにするの」

そこから出てきたのは意外な言葉だった。本来魔王というのは常に孤高な存在で誰も寄り付かないような性格のはずなのに、パーティを組むとは。

前原「でもなんで僕とパーティを組むんだ?普通なら魔王とそのゴブリンだけ魔王城に帰って、僕はここで仲間集めした方がいいんじゃないの?」

僕が言い終わる前に、彼女たちはすごい剣幕で僕を見てきて、そうやって僕のいう事を止めようとしていたけど、僕は何とか言い切った。

魔王「私たちはあなたに何をしたんでしたっけ?マエハラさん?」

そう問いかける魔王の目は完全に15歳の少女ではなく、恐ろしくどす黒くて正真正銘の魔王や、任侠映画で見るインテリ系のヤクザと言わざるを得ないような貫禄だった。

前原「ええと、確か目の前で炎にやられて「ん?」そしてゴブリン達にボコボコにされた挙句「ん?!」」

いくら何でも魔王から「ん!?」の圧が酷かった。僕は今、魔王と会食をしているようだった。さすがに耐え切れず、

前原「そして・・・助けてもらった事です」

そうやって魔王に忖度言うと、彼女はにんまりと笑って、

魔王「そうよね!そうよねぇ!」

と、笑顔で頷き始めた。

魔王「だからあなたとパーティを組むの。良い?もし他の人とパーティを組んでいなければなぁと思って」


前原「でもそれどうこうというのは「だって助けたんだものね!?」でもそれってパーティと「じゃああなたを助けたのは誰なの?」・・・はぁ、分かりましたよ!パーティ組みますよ!(完全に脅しだよこれ・・・魔王の脅しだよこれ・・・)」

すると彼女は立ち上がって、身支度を始める。 

魔王「よろしい。じゃあ今から行きましょ?実際こんな計画を話して時間を潰すのもなんだと思って」

そう言って彼女は残りの3人に目で合図をする。彼らも立ち上がって、まずデブのゴブリンが囲んでいた鍋を取り、中身の水などを捨てる。だがその時、あるものが目についた。僕の世界の文明の利器であるカップラーメン“ごつ麺”が水の中に沈んでいたのだ。

前原「あっ、ごつ麺」

そう言って僕は流れてきたそれを手に取る。包装は発泡スチロール容器で、上には習字で書いたような文字があった。それは水に浸されていたのか濡れており、

魔王「どうしたの?私たちの今日のご飯の残りなんか持って」

そう持っていた僕に気づいた魔王がそれに気に掛ける。どうやら異世界ではもちろんこれがカップラーメンという物は知らないようだ。

前原「これはカップラーメンという物です。この容器の中にお湯を入れて3分から5分ぐらい待てばラーメンが食べられる即席の食べ物です。食べてみますか?」

僕はそう気にかけていた魔王に勧めてみる。目の前に出されたカップラーメンを、彼女は興味深そうにそのラベルを見て、

魔王「でもこのままじゃ食べられないのよ?」


前原「違う違う!蓋を半分開けてここからお湯を入れるんだよ。そこで5分ぐらい待ってあけるとおいしいんだよ」

魔王は少し怪訝そうな顔をして、

魔王「待たなきゃいけないの?」

と言った。さすがは魔王、待たずにすぐ食事が出てくるなんてなんと豪華な生活だろうか。

前原「まぁいいや、これはどこにいても出来るからいつでも出来るけどさ。容器ごとそのままぶち込んでは食えないよ」

容器を見ると、小さな歯型があった。まるで人間の歯と寸分狂い無いほどの大きさで。おそらく齧ったけれども味が無くて不味かったからやめたんだろう。

前原「本当に食べたの?」

僕はその歯型を見て、彼女に聞いてみる。

魔王「・・・」コクリ

彼女は静かにコクリと頷いて、

前原「えぇ?まあこれが何か分からなかったからしょうがないけど」

彼女は赤面していたが、気を取り直して、

魔王「ま、まぁ?気を取り直して行くわよ。魔王城に!」

彼女はその照れを隠すようにしながら、その魔王城があるとされる方向に指を指す。でもやっぱり魔王という超SSRな人がパーティにいてくれれば非常にありがたい。

魔王「というわけでこれが地図よ!」

そう言って彼女は地図を見せる。そこは中心に大きく“アイセラ大陸“と、日本語でない文字で書かれており、左には”蓬莱の島“と、右には”アバドン生命の樹魔法学園“という場所が地図に刻まれていた。そこには、その大陸で主要な都市の名前がその位置と共に書かれていた。ていうか、いつの間にかこの文字が僕にとっては日本語に見えているのだ。

魔王「あ、マエハラにとっては逆だったわね」

魔王はそう言いながら、その紙を回転させる。それと同時に、蓬莱の島とアバドン生命の樹魔法学園の位置が反転した。だが、中心に変わってない物が一つだけあった。この大陸を二つに分ける一つの山脈の中心。そこにあったのは“神の庭園総本部”という文字。どうやら世界を隔てる山脈のど真ん中にあるのは宗教組織のようだ。恐らく修行のために高い山の中に作っているのだろうか?それともまた別の理由があって、そこに作られたのだろうか。



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