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第9話

“・・・しょ!・・・・だから!”

何を言っているのか分からなかったけれど、どこかその口調は明るかった。待てよ?全部焦がされたのなら装備とかどうなるんだ?シャツとかも焼けたから全部消えるはずだよな?じゃあ僕あの娘の前で全裸じゃん。恥ずかしいわ23歳のおっさんが僕より8年も若い女の子に自分のイチモツを見られるなんて。

そして、自分の意識が一面白だった所から、先ほど死ぬまでに見ていた景色に戻る。僕はまた空を見上げていた。またもや青いあの空だ。Unityでよくある天気や時間の概念が無いハリボテの空だ。

「起きた?」

横からあの娘が僕の顔を覗いてくる。黒髪で、紫色の目をした少女がこちらを見ていた。まずいなぁ、裸かもしれない。あの魔族の少女・・・とメガネをかけたゴブリン?どうしてこいつがそこにいるんだ?

そう考えて、すぐにそいつの首を掴もうとした。だけど体が動かない。どう頑張っても、自分の体が石になったように動かないのだ。

魔族の少女「動かないで」

冷たく低い声が耳をくすぶる。その声の主は、まさかの魔族の少女だった。

カカリ「回復はしておきました。あとは魔王様のご判断です」

魔王様?魔王様って誰の事なんだ?もしかして、

魔族の少女魔王「分かったわ」


前原「え、ちょっとまって君って「我が名は第155代魔王アルティノ。感謝しよう、新たなる勇者の発見の貢献に。(そして私の政務を失くすために!!)」

その後ろからくる声はもはや少女ではなく、まさに魔王の貫禄だった。僕は驚いていた。そして、全部納得した。あの魔族の少女とゴブリンが話していたのは、魔王とその配下だからだ。それとゴブリンにあえて言葉を吹き込んだのは僕だ。3匹のゴブリンとそれを護衛する魔王だったのだ。だけど、その魔王という肩書に少し信じられない自分がどこか片隅にいた。


魔王「ニンゲンよ、その名を教えよ」


前原「あっ、前原悟です・・・」


魔王「そうか。前原悟、か・・・」

その魔王自称の口が少し黙る。彼女は少し悩んだ顔をして、

魔王「その~・・・どこの国の出身なの?」

と、今度は合同コンパの自己紹介のように、さっきとは違ってフランクな口調で質問してきた。

前原「・・・え?」


魔王「あの~・・・私たちのこと見たよね?だけど、急に現れてどこか行っちゃったけど。あれ何だったの?」


前原「あ、えっと~・・・日本の国の出身で、あれチュートリアルだから僕もう何度もプレイしてるから、あえて別方向行って洞窟に入ってたんです」


魔王「?」


カカリ「(チュートリアル?先ほどのゲームやアニメと関係のある言葉か?だがさっきと同じく魔法の言葉ではない。魔法は出してはいないはず。じゃあ何の言葉なのか?)」

一人は完全に頭の上にクエスチョンマークがあるようで、完全に二人とも理解不能のような顔だった。だから僕はそれを解消しようとして、

前原「あの~ほらあれです!練習!練習です!」


魔王「練習?」


前原「よくやるじゃないですか!勉強の時にやっているのは練習だと思うんですけど。あとスポーツの時とかよく試合のために練習するじゃないですか!」

すると、魔王は少し微笑んで、

魔王「ごめんなさいね、私練習という練習をやったことが無いもの。本当にごめんなさいね、そういうのは無しで簡単にできちゃうんだから」

うぜぇぇぇぇ~~~、こいつマジでうぜぇぇぇぇ~~~!天才アピールかよ。まあその力で魔王やってるなら分かる。すげえよく分かったわ。確実に魔王だ。

ネチネチ「この方は、15歳で155代魔王になった方なんですよ」

WAO!天才美少女!頭なでなでしてやりたい!

前原「まじかぁ・・・じゃあ何で魔王にとって一番の天敵である勇者を見つけてるんですか?自分の座を奪われないようにするための間引きですか?」

魔王「その逆よ」

僕とそのゴブリンの間に横やりが入る。魔王アルティノ?さんだ。その角はまるで魔族での頭角と権威を表し、その翼は世界を包み込むように広い。だけどそれらはどこか、まるでハリボテのように貫禄が無かった。

魔王「だってね?小さいころから“お前は魔王の血筋だから生涯安泰でいられる”ってずっと言われていたけど本当は毎日毎日政務と政治活動ばっかりよ!精々自分は他の魔族…オークとかゴブリンに命令して私の仕事を少なめにしようとしたんだけどね?あいつら身内同士でやり合うから全っ然仕事が減らないし、人手、いや魔族が不足して仕事が丸っきりこっちに来るのよ!」

彼女は15才でありながらもかなり管理職のOLの酒が入った時みたいな愚痴をこぼす。僕は少しだけ彼女に好感を持った。魔王様だってなにかと玉座でふんぞり返っているんじゃなくて、ずっと働いているのだ。

前原「あ~分かりますよそれ。僕だってここに来る前は会社でサラリーマンとして働いてて、まあその結果死んじゃったんですけど、確かに仕事は無限にありましたからねぇ」

すると、彼女は少し驚いていた。まるで他人の経験談を聞いて、自分と一致するかのような顔で。



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