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第8話

~魔王アルティノ~

私は目の前にある焼野原を見て、少しニヤリと笑い、

魔王「もうすぐよ…もうすぐ計画通り…」

と呟く。10秒間まったものの、どうやら彼には再生魔法など無いようだ。

そんな中、カカリがやっと来た。私が来いと言ったらすぐに来てほしいものだ。なぜなら私の護衛兼通訳兼世話役なのだから、主人の命令ならすぐに来るべきよ。

カカリ「はいはい、回復ですね。少しお待ちください・・・って、そのニンゲンとやらはどこに?」

と、カカリは辺りを見回す。私は少し怒りながら目の前に指を指して、

魔王「ここよ!ここ!こ・こ!」

と言う。

カカリ「ここって・・・何もないですよ?」

と返してきた。まったく、このクソゴブリンには見えないのか。やっぱりこの目の前で焼けて灰になっているニンゲンの言っていることは正しかったのか。

魔王「ここで灰になってるの!!」

と、私は念を押して、焼野原に指を指す。するとカカリは驚いて、

カカリ「え?灰!?それはさすがに私の魔法では回復できないかもしれませんよ!」

と猛烈に拒絶した。私は少しこいつの事を殺しそうになるものの、グッと堪えて、

魔王「あなたみたいなアークゴブリンならなんとかできるでしょ?やって見なさいよ!」

冷静に言おうとしたが、流石に堪えきれなくて、少し強い口調で言ってしまった。

カカリ「分かりました分かりました!やってみますから!」

そう言うとカカリは、また精霊の呪文を唱える。

カカリ「我らが癒し、そして蘇の精霊よ、かの目の前にいる者を莫大なる魔力によって蘇らせ、癒し給え!」

そう叫ぶと、その焼野原のぽつぽつとした所が緑色になり、そこから少しずつ細胞が生まれ始める。そしてそれは組織となり、内蔵となり、骨となり、筋肉となって、やがて肌が現れる。

カカリ「全回復するまでしばらくかかりますが良いですか?」

カカリはそうやって、私がいたところに確認を取る。だけど、私は隣に座っていた。

魔王「魔力ぐらいなら私も供給は出来るわ。私だってこのニンゲンを生かして勇者にしないとね笑」

と、少し笑い飛ばしながら話す。なぜなら生きてもらわないと、私にとって困るのだ。このまま私が魔王として君臨し続ける時、恐らく無限に魔王としての責務が大量に増え続ける。そこで勇者を育てて、私を倒させれば私もクソみたいな魔王という形だけの役職を離れられる。ならば彼を生き返らせる事が今とても重要だと理解して、カカリの向かいに座って、両手をかざす。

カカリ「じゃあ何ですぐに回復魔法をかけなかったのですか?私よりも魔力がおおいのですから出来るはず・・・」


魔王「だってしょうがないでしょ?忘れちゃったんだから」

そう言うと、カカリは眉間に皺を寄せながら言う。

カカリ「忘れた!?え、えぇ?」


魔王「私だってね、魔力量はあるけど呪文はさすがに全部は覚えきれないわよ!呪文よりイメージで魔法を撃ってたんだから。呪文なんてただイメージを言語化した物にしかすぎないわ」

と、少し被害者面をしながら言った。

カカリ「イメージ?そんなので撃っていたんですか?」


魔王「そんなのって何よ、そんなのって。別にいいじゃない!これの方がどうしてか撃ちやすいんだし」

と口を尖らせながら言う。すると、目の前にいるカカリはすこしう~んとうなったような顔をして、

カカリ「イメージだと魔力量を十分に発揮できませんよ?」

少し説教じみて、そして嫌がった顔で言う。

魔王「別に、どこぞの誰かさんよりは魔力がありますからね~」

と、煽るように言ったら、カカリはため息を吐きながら、

カカリ「わっかりましたよ。とにかく、今はこれに集中しましょう。とりあえず今は魔王様の魔力と私の魔力を媒介にして回復を行っています。このままだと昼頃までには回復するはずです」


魔王「分かったわ」


~~~~~


僕こと前原悟は生まれたままの姿で、深い闇の底、例えるなら海底のような場所にいた。だけど周りには何もなく、ただ暗いだけの世界が続いていた。僕は何とかここを出ようかと思ったけど、手足は動かない。脳みそが動けと指令を出しているものの、何も動かない。そういえば、あの時魔族の少女の前に広がった炎で焼死したんだった。体の一部も残らずに全部焼かれたのだ。まるでステーキのウェルダンどころか、灰になるレベルで。そこまでは覚えている。そこからは何があったのか思い出せない。なので、僕はそんな深い闇の底での退屈さを紛らわせるため、異世界ファンタジーのアニメのワンシーンを思い出す。そういえばファンタジー世界に女神を持っていくようなアニメもあったなぁ。でもその女神は駄女神だったけれども。そして大爆発する魔法を撃つだけの魔術師と、ドMな戦士・・・クルセイダーだったっけな?そいつらと一緒に冒険をするアニメがあったなぁ。一時期僕はそれにハマって、その魔術師のフィギュアとそれがプリントされた財布をUFOキャッチャーで手に入れたなぁ、お年玉の5000円も使い切っちゃったけど。

そんな中、上から白い光が出てきた。それは僕の全身を包み切ってしまう。すると、どこか遠くから微かながら声が聞こえてくる。一人は少女の声、恐らく先ほどの魔族の少女だろう。そしてもう一人は・・・あのメガネをかけたゴブリン?畜生、あいつ殺しときゃあよかった!どうせ今頃あの娘の尊厳を犯してるに違いない。と思っていたが、声色が何か違う。むしろなにか世間話をしているような感じだった。


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