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第5話

まず、そいつはジャブを真っ直ぐに放つ。僕は盾で受け流す。だが、そいつは盾の合間を縫ってアッパーをボディにかちこまれた。

前原「うっ!」

結構悶えた。腕を見ると、威力と比べて筋肉は人並みにはあるものの、明らかにその威力を出せるような代物には到底見えなかった。

ネチネチ「(まずは一発。俺の魔力はカカリみてぇに余りつよく単に体を強くする。だが、それだけじゃない。単に体を強化するだけならガヴリの肥大化と同じ。だが俺は違う!回転だよ!この打撃が強くなるのは腰の回転とコンボが軸なんだよ!!体の強化なんてただの隠し味だ)」

そのゴブリンはそう思いながら、次の打撃をくらわす。

ゲシッ

左足の脛に重い衝撃が伝わる。

前原「あっいっった!脛!」

弁慶の泣き所に竹ほどの大きさの足が当たるのは本当に痛い。それで、僕は蹴られた方によろける。

ネチネチ「どうだ?でも容赦はしねえぞニンゲン!!」

だが、そいつは疲れを知らずに今度は左足で膝蹴りを食らわしてきた。

前原「グフォアッ!!」

それが鳩尾に入り、たった一秒間だが息が出来なくなる。そのたった一秒間が、相手に打たれる隙を与えてしまった。

前原「(少し押されている、マズイ。攻撃する暇がない)」

圧倒的にそいつの隙が無い。例えるとそう、まるで全身に鎧を被っているようだ。すると、今度は右からフックが来る。

僕は左手に固定してる盾で自分の顔を防ぐ。すると、その拳が直接盾に当たる。

ネチネチ「グっ!!」

そいつは少し痛そうな顔をする。今こそ反撃の時かもしれない、そう思って右で下からアッパーカットを食らわそうとしたその刹那、

ボォン!

左の盾がいきなり爆発した。どうやらあの時何かボタンが誤って押されたのかもしれない。先ほどは爆発しなかったはずなのに。だけど、僕にはなにも火傷なんてない。しかも、盾すらも壊れていない。そのゴブリンの方を見ると、右手を痛がっていた。

ネチネチ「あっつ!!!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」

見ると、右手からは血が出ていた。いや、手そのものが千切れていたのだ。そこからは大量の血が吹き出し、骨が露わになって、それは震えていた。そいつは息をふうふうと吹きながら、

ネチネチ「てめえっ!!まだ奥の手の隠してやがったのか!!汚いぞニンゲン!」

僕は明らかに奥の手でもないことを言われて少し焦り、

前原「い~やいや!完全にこれは知らないよ!こんな技!」

見ると、そいつは傷口を包帯のような物で巻いていた。

ネチネチ「ふぅ・・・まぁいい。別に奥の手を隠してようが構わん。俺が出せるお前のハンデだと思え!このニンゲン「あの~前原悟です」・・・分かった。このマエハラサトル!俺はネチネチだ!」

そろそろずっとニンゲンと呼ばれるのは嫌になってきた。せめてお前を倒す人間として名前を憶えてほしいものだ。まるで某死神系のアニメの坊主キャラみたいに。

前原「とりあえずさあ、大丈夫そ?その腕・・・戦うのやめとく?」

僕は先ほど包帯で巻かれた腕を指さして、心配する。

ネチネチ「問題ない!ハンデだからな!」

そのネチネチというゴブリンは、ニカリと悪人のように笑っていた。

前原「じゃあ、再開ってことで」

その直後一秒、頭に強い衝撃が走った。まるで、何か鉄パイプで殴られたような衝撃が首を伝って脊椎に、そして脳みそに伝達した。

意識がはっきりした時、僕が見ていたのは澄んだ青で晴れた空だった。まるで、Unityでこの世界を作っていた時に見た、散々と照り付けた太陽もあった。まるでそれらはこのリングを照らすスポットライトと、この一部始終を見て、おおぉっと歓喜や阿鼻叫喚を漏らす観客席の様だった。しかし懐かしいなぁ、16の時にキックボクシングやってた時が、たったの一年でやめちゃったけども。あの時従兄に宣言をしたなぁ。“僕キックボクシングを始めるわ”って。まさか本当にやるとは思ってもなかったらしいし。待てよ?これで僕が負けたなら、雨が降るのか?いやでも、そんなプログラムなんて書いてすらない。だったらどうなるんだ?僕のいた世界と同じようになるのか?それとも何も起きないのか?

すると、また何か長方形の白いホワイトボードが出てきた。また“生きたいですか?”とか煽ってくるような文を送ってくるのだろうか?

すると、今度は違った物だった。

“相手の能力をダウンロードしますか?”

と、キーボードで打ち込まれたようなビットで表された文字がでてきた。一体どういう事なんだ?僕はこの能力こそが“アルファ掲示板”という事を分かっているが、一体どういう物なのか分からない。

すると、“能力をダウンロードするには、それに伴った代償が必要です。”と、またその下に文字が出てきた。

前原「(代償?何を代償とすればいいんだ?まさかまた生命力とかじゃないよな?)」

僕は何を代償とするか悩んだ。どういう物を代償としたら、奴の能力が手に入れられる?というか、奴の能力は何なんだ?

そんな考えが浮き出たのもつかの間、さらに文字が下に出てきた。

“代償とされるものは、その等価交換によって発生します”

前原「(じゃあ、能力を奪うってことは能力を捨てないといけないってことになるのか・・・)」

僕は左に寝がえりを打つ、すると、ネチネチとかいうゴブリンはすでに僕と離れた場所に背を向けていた。それに構わず、震える右手で昨日渡された紐の付いた板を右ポケットから取り出す。それを引っ張り、書かれた文字を見る。見ると、そこには自分の名前と性別、体力、知力、スキルと推奨非推奨職が書かれている。そこから一つを選んで、その“統率”という文字の上に指を指す。

前原「これだ。これを代償にする!」

と言った。すると、その“統率”という文字は消え始めた。

“統率を代償にしてアークゴブリン、識別名ネチネチの能力”身体強化“をダウンロードしますか?”

そのテロップが出た後、下に“はい”と“いいえ”が出てくる。

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