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第九話

~村の外れ~

誰もいない村の空地。空は既に暗くなっており、月明かりだけがこの場所を照らしていた。

その中で僕は右手をかざし、左手でそのかざした腕を握った。

前原「(念じろ~念じろ~・・・アルファ掲示板って結局何属性?結局コンピュータサイエンスって原初をたどれば電気から・・・だから雷属性?でもここに電気あるの?多分、無いはず。じゃあ無属性的な扱いだから無か。んでそれで、大きさ。何だろう、パソコンの1920×1080。まあざっと15インチくらいにすればいいか、それで画面比率は3:2。あとは~・・・方向!ダイレクションだ!今手をかざしている所から5センチ前でいいんだ。大体イメージはついたな・・・実行してみるか)」

まるでプログラミングをするように考えて、念じる。

前原「アルファ掲示板!」

思わず念じすぎてしまって、声に出てしまった。これを誰かに聞かれていたらと思うと、すごく恥ずかしいが、声に出るのはしょうがない。しかし、その声に応じたのか次の瞬間、

・・・・・ファンッ

効果音が聞こえた。そして目の前にはあの洞窟の時と同じような白いホワイトボードのようなものが見えた。つまりあの時に出てきたのは掲示板だったのだ。だけど誰が送ってきたのかは分からない。あの“生きたいですか?”という文を送ってきたのは一体誰なのか。命を持て遊ぶ神のような存在か、それとも死にかけている人間をあざ笑いたいだけの頭のおかしい奴なのか・・・だけどこれだけは言える。

前原「(僕と同じ能力を持っている人間はもう一人いる!)」

さっき会ったマスターか、それとも受付嬢のナディか、はたまた騎士団の中にいる誰かか、それとも考えた奴以外か。

もしこれが“アルファ掲示板”ならログが残っているはずだ。そこを辿ってしまえば簡単に特定できる。

前原「(どれだぁ?生きたいですかの人。特定して家凸してやるよ、冗談だけど)」

そうやって何もないホワイトボードを指でスワイプするも、なにも起こらない。すると、その掲示板に一つの通知が来た。

“掲示板を接続しますか?”

接続と言ってもWi-Fiも無いし優先LANの接続ケーブルもない。どうやって接続するのか分からなかったが、その下に“はい”と“キャンセル”が出てきたので、つい“はい”を押しちゃった。

どうしよう?なにか高額請求されないかな?そんなありもしない心配を思い浮かべるのだった。

その“はい”というボタンを押した後、その瞬間掲示板から光る一本の光が出てきて、その先から波が見えた。電波が出てきたのだ。その電波は遥か彼方まで、僕の目で見えない所まで向かっている。

~一方その頃~

カカリ「魔王様!魔王様!」

私はカカリというゴブリンに揺さぶられて起きた。体を起こすと空に何か変な物が見えた。

下を通る、白いうねうねした物が。

カカリ「ここは危ないです!私の後ろに!ネチネチ!ガヴリ!魔王様の前に立ってください!盾に!」

ネチネチ「分かった!」

ガヴリ「了解!」

そう言って、カカリの前にネチネチ、ネチネチの前にガヴリが手を広げて私を空のうねうねから守るように立った。だけど私は3人の横に立って、空に手で三角形を作る。私は怒っていた、気持ちよく寝ていたのに急に起こされたものだから。

アルティノ「我の血に引き継がれし古代龍よ!その大いなる力を!我が息吹で放ち給え!!」

そういうと彼女の普段の黒髪紫眼は無く、半ば白髪で赤眼になりかけていた。そして、息を拭いた途端、先ほど作った三角形から空に轟く炎、ブレスが出た。

その炎は天のうねりに届き、その部分だけうねりは消えた。他はそのまま続いた一方だった。

そして、その炎が段々と短くなっていく。やがて、その炎は彼女の口の周りで消えてしまった。それと同時に魔王アルティノの髪の毛は黒髪に戻り、目も元の紫眼に戻った。息も切れかけて、肩で息をしながら呟く。

魔王「ダメ、まったく効果がでなi「魔王様!出てきてはダメです!隠れて!」え?」

すると、先ほどまで私の目の前にいたカカリが腕を引っ張りまた戻していく

カカリ「魔王様!あなたに死なれては困るのですよ!」

カカリが大きな声で私に叫ぶ。さすがに私も少しやりすぎたなと反省していると、視界がホワイトボードによって遮られた。

魔王「カカリ?カカリ?どこにいるの?」

カカリ「大丈夫です!聞こえますか!?」

魔王「聞こえるわ!でもどこ?私は何か白いものが見える!」

~神の庭園・総本山~

教団の最上階の一室。そこにたたずむ金色の長い巻き髪を持ち、その持ち主である美しい女性は寝間着に着替えて寝ようとしていた。

「ふわ~ぁ。明日も信者が貢ぎにきますよぉに・・・って何あれ?」

その横にあるベランダに繋がる窓から、こちらの方に何か向かってくるものが見えた。

私は驚いて足がすくみ、動けない。このままあの波が私の家に押し寄せてしまったらどうしようと考えてしまって動けない。

すると、反対側のドアから私の可愛い信者たちが流れ込んだ。

「セシリア様!すぐ地下室に!早く!」

だけども普段の様子と違って何か焦っている。

セシリア「あのうねうねした物は何なのですか?魔王軍の攻撃でしょうか?」

「不明です!緊急事態ですので早く地下室に行きましょう!!」

その声に誘われ、扉の方へ向かおうとしたら、

セシリア「あ、ああ!はい!今す・・・ぐに!」

思ったように足が動かない。キーンと耳鳴りが鳴って、頭がズキズキと痛む。その痛みで床に落ち、歩けないのだ。そして、目の前には白く、薄い平面が私の前に出てくる。

すると、その群からでてきた女性の信者が肩を貸して、私を廊下へと連れて行った。

「セシリア様!わが身を以てお助けいたします!肩を貸してください」

それで肩を担がれ、地下室へと向かうのだった。

セシリア「ありがとう。お願いしますわ」

~ハーシェルの村・騎士団詰所~

私ことミカラは、藁で作った的に向かって一突き。二突き。すこし方向を変えてまた3突きと槍で刺すことを繰り返す。そしてその突きの反射で槍を回し、切りつける。一通りの練習を終え、月を見た時、何か異変があった。空が動いているのだ。それを伝えるためにある部屋の窓を開ける。その時、彼は本を左手で、そして右手で羽ペンで文字を書いていた。

ミカラ「グレッグ!空がなんか変だ!」

その少し高い声で、騎士団一の頭脳を持つグレッグに聞く。

グレッグ「空?空なんて変なところいっぱい・・・」

彼が空を見ると、また私と同じように驚いた。

グレッグ・ミカラ「「なんだこれ!?」」

二人そろって大声を挙げながら驚いた。

~アバドン生命の樹魔法学園~

「カーン教授、夜遅くまで魔法倫理について説明していただきありがとうございました!」

その生徒の目の先にいるのは、灰色の長髪を持ち、顔立ちが鋭く、常に自分の学位を象徴する華やかな黒いローブを身にまとい、苦悩に満ちた表情をしていた中年男性だった。

カーン「ふむ、私は講師ではなく教授だがな。しかし、魔法倫理という高度な学問をどうして聞くのか、好奇心ながら聞いても良いな?」

「実は、魔法を教える先生になろうと思っているんです!だから魔法を教える立場にとって悪い方法に使わせないという責任を先生が持つのは必要ですから!」

すると、その中年男性は、ローブから手を伸ばして、髭もない顎を触り始める。

カーン「なるほど、私の教え子にも先生の職業に就いたものが居てね。今は王都にいるから今度紹介しよう」

私は気さくな笑顔でその青年に話す。だが、青年は空を見たまま、固まっていた。

カーン「君!大丈夫かい?すまないねぇ、長話を」

私はそう言った。だがそれも聞かずに、その生徒である青年は、空に指をさす。

「何ですか?あれ?」

そう呟いた。私はその指の指す先を見たら、空に何か複数の線状の物が見えた。そして、それは西へ西へと、学園を包み込むように動いている。ここアバドン生命の樹魔法学園は島の上に学校があるのだが、その周りには霧がかかっており、そして見えない魔法の嵐によって大陸側に押し戻されるので、誰も来ることは出来ない仕組みとなっている。そして、夜空も少し霧がかっていたが、それを凌ぐように線状の物はくっきりと見えていた。

カーン「なんじゃこりゃ!」

私は少し驚いていた。どんな魔法でも覚えているこの私が、この学園の元素科の主任講師である私が見たことすらもなかったものだから。

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