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第六話

中年の冒険者「ナディちゃーん!こっちで一緒にお酒でも飲もうよー!」

すると、とある1人のおじさん冒険者が、彼女を呑みに誘う。すると、受付嬢のナディさんは明らかに不機嫌な顔で

ナディ(受付嬢)「クソして寝なジジイ。アタシとの酒は安くねぇんだよ」

と返した。

中年の冒険者「つれないなぁ~おじさんがおごってやるっていうのに」

ナディ「じゃあこの酒場で一番高い酒頼むぞ?いいのか?」

それを聞いたおじさん冒険者はうろたえてしまい、

中年の冒険者「うぅ・・・分かったよ。分かったって!今日機嫌悪いんだって!やめとけって!」

そしてそのおじさん冒険者は同じく酒を飲んでいる仲間に向かってやめるよう言った。

前原「あの~ナディさん?」

その会話を横切るように、前原は受付嬢のナディの目の前に現れる。

ナディ「なんだ?テメェもナンパだったらぶち殺すぞ。変な服着てるやつがよぉ」

そして、ナディさんという人は僕をにらみ始める。その威圧感に少し怯んでしまって、すこし慄いた。

前原「あ、いや・・・」

ナディ「なんだ言ってみろ」

前原「いやその・・・冒険者登録をする所って」

ナディ「ここだよ、少し待っていな。準備する」

そう言ってため息をつきながらまた奥へ入り、何かを準備する。窓口の方でちらりと体を乗り出してみると、彼女の手元にはクッションに乗った水晶があった。それを彼女は傍にあったタオルで拭いて奇麗にしている。そして、戻ってきそうな感じだったので、乗り出した体をしまうことにした。戻ってくると彼女はクッションと共に先ほど磨いていた水晶玉と紐の付いた栞のような板を持ってきた。

ナディ「ここに手ぇかざせ。早くしろ、早くしねえとアタシの代わりにあのジジイと酒飲ませるぞ」

そう言われてナディさんに脅され、急かされながら僕は水晶玉の上に両手を乗せる。その瞬間、水晶玉は白く光り、その後ろに置かれた板に文字がふわりと浮き出た。だが僕の所からは何も見えなかった。

ナディ「終わりだ、ほらよ」

そう言って先ほど後ろに置かれた板を渡される。そこには、

前原 悟  男 23歳

体力 D

知力 B

スキル:翻訳、アルファ掲示板、突進、統率、ワイルドホーンの呪い

推奨職:魔法使い、勇者

非推奨職:戦士、格闘家

と書かれていた。見たこともないスキルがずらりと書かれている。まず翻訳は百歩譲って分かるとして、あとの4つに関しては完全に知らない。しかも一つは呪い、多分デバフ系の奴だという事だ。

前原「あぁどうも・・・ありがとうございます!」

僕は深々とお礼をする。だが彼女はどこか気に食わない様子で、

ナディ「礼はいい。さっさとモンスターの一つや二つでも討伐してこい。あそこで毎日呑んでいるジジイと違ってな?」

そう彼女は少しにやりと笑い、僕を怯えさせたのではなく、新たなる挑戦へと奮い立たせた。僕はそれに答えて、

前原「はい!頑張ります!」

そうして僕は安心して胸をなでおろす。その時、何かが終わったかのように安心感が出てきたものだから、今日は少し酒でも飲みたいなと思った。だからさっき教えてくれたバーテンダーの所へ行って、

前原「マスター、どんな酒があります?」

すると、バーテンダーは少し笑って、

バーテンダー「もう登録は終わったのかい?なにも忘れてはいないね?」

前原「あ、はい!ありがとうございました!」

バーテンダー「ふむ、では何を?」

マスターは目の前のテーブルにあるメニューを指して言った。しかし、この僕前原悟は会社主催の飲み会すらも出ず、会社に引きこもってはこの“アイセラ大陸”を作っていたものだから、お酒のことなんて何も分かりゃあしない。

前原「あの~お酒のことは全然わかんないんですけど、どれがおすすめですか?」

バーテンダー「う~ん、おすすめか・・・おすすめおすすめ・・・じゃあ、初めて冒険者になった記念に特製カクテルをお勧めしよう。旅立ちのカクテルだ」

マスターはメニューに書いてある“特製カクテル”の文字を数回、指でとんとんとしながら言う。

前原「じゃあ、それで!」

バーテンダー「はいよ!」

そう言って、彼は後ろの棚にある酒から数本取り、そこからメジャーカップで計ってはグラスに入れてを繰り返す。そしてマドラーでコップに入っている液体を回す。最後にメインの酒を入れてまた別のマドラーで混ぜた。そして僕もテーブルの前のカウンター席に座ってゆっくり待つ。

バーテンダー「はいよ、私特製の旅立ちのカクテル。お代は結構だ」

前原「いやいや、お代はだすよ!いくらだい?」

僕はさっきの洞窟で手に入れた金貨50枚の袋から1枚を取り出した。だがそれを見ていたマスターは手を横に振って、

バーテンダー「いいんだいいんだ!これから冒険を始めようって思っている奴に代金なんて払わせることなんてしないさ!」

前原「あー・・・はい」

すこし申し訳ない気持ちでそのカクテルを飲んだ。すこし甘酸っぱかった。なぜか上京した時の父さんと母さんの顔が思い浮かぶ。あの時反対しながらも笑顔で送ってくれた父、弁当を持たせてくれた母の姿が。

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