前原「神の庭園?」
神の庭園・・・あーあの神の庭園か!この人類王国の宗教だな、多分。こういう感じで分からない言葉があるならシナリオに書いとけって言ったのに、僕。
アルス「我々が信仰する宗教だよ。だから神とその代理人である教会は絶対なんだ」
すこし真顔になったが、その後普通にイケメンな顔に戻った。それはいかにも女性を堕とすような顔で。もし僕の性別が違っているならば、すぐに惚れて付き合って、結婚して“神の庭園”に入信していただろう。そしてその子供は2世、3世として入信させるだろう。
アルス「君は神を信じるのかい?もし興味があるなら教会にいk「着いたぞ!」
その勧誘は部隊長であるアンドレの声に遮られた。
アンドレ「ここが騎士団の詰所だ。武器庫と訓練場以外は何もないがな!ガッハッハッハ!」
そう紹介された手の先には、小さな小屋と大きな小屋の二つと、藁で作った人形を的に見立てた物、そこには矢が1本刺さっている。そしてその間の場所は空地のようになっている。おそらくそこで日々訓練をしているのだろう。まず真っ先に入っていったのは槍使いのミカラ。
ミカラ「さぁて風呂風呂~♪」
そう言いながら頭まで覆われていた段々と鎧を外し、その人が頭の甲冑を外した途端、僕はその顔に驚いた。
ミカラ「ふぅ・・・///暑い暑い」
それはまるで、この荒野に咲く一凛の花のように美しく、そして周りのむさ苦しい男達とは違って奇麗な女性だった。彼女の黒髪ストレートヘアがなびき、そしてこちらに振り向く。
ミカラ「風呂に入って来るからしばしお待ちを~!」
そういって小さな小屋へと入っていった。
アンドレ「可愛いだろ?うちのミカラは」
アンドレが肩を組んで僕にこそこそと言う。僕はそれに小刻みに頷いたが、
アンドレ「でも狙うのはやめておいた方が良い。何でか分かるか?」
前原「なんでですか?」
アンドレ「それはな・・・いや、話さない方がいい。とにかくあの娘を知りたいなら3兄弟のダイ・ゴン・ジョウに聞きな。きっと俺よりよく知ってるぜ?」
と、僕は肩を叩かれながら聞いた。
そう言われたので、最初にダイに聞く。すると、3兄弟は表情を曇らせて
ダイ「・・・あの人は強い」
ゴン「あの人は怖い!」
ジョウ「あの人は化け物。多分仙人とか戦神とかそれに近い感じ」
と口々に言った、3人とも何かに怯えるような声で。
グレッグ「まあそれほどミカラが最高戦力ってわけです。この部隊内、いや騎士団内で最強なんです」
と後付けをする。
前原「じゃあなんでここに?」
グレッグはひねくれたような顔をして、顎を少しだしてボディーランゲージを使いながら、
グレッグ「知りません」
~しばらくして~
前原「すいません。もう行かせていただきます」
アンドレ「も、もう行くのか?」
アンドレはそれを聞いて、どこか寂しそうにしていた。
前原「はい、ここまで助けていただき誠にありがとうございました」
僕はお辞儀をして感謝を最大限に表す。
アンドレ「おーいお前ら!マエハラが旅立つぞー!集合―!」
その集合の命令を受け、騎士団の皆がここに集まる。そして何か少し悲しそうな目をしていた。
グレッグ「もう行っちゃうんですか?悲しいですけど、それが星の使いの使命ですからね」
一人は使命を理解し、
アルス「其方に神の庭園への導きがあらんことを」
もう一人は祈る。
ダイ・ゴン・ジョウ「「「さよーなら!!」」」
そして3兄弟は大きな声で別れを告げる。
ミカラ「また会いましょう。機会があれば」
そして、彼女は少し笑って見守っていた。
前原「どうも!本っ当にありがとうございました!」
そう言って僕は反対方向を向き歩き始める。すると、何かに気づいたグレッグがすぐに
「冒険者の登録はあっちですよーー!!」
と反対方向に指を指しながら言う。そう言われて、僕は逆の方向へ走り始めるのだった。別段急ぎの用事もなかったが、道を間違えた恥ずかしさを隠すために走った。
しばらくといってもたったの数分だが、右手にいかにも冒険者が集いそうな建物があった。看板を見ると、冒険者・勇者会と書いてあり、おそらくここのようだ。そういえば僕の言葉は通じているけど、読み書きできるのか分からなかったがどうやら大丈夫そうだな。僕は心底安堵した。
ワイワイ ガヤガヤ
中へ入ると、屈強な男たちが昼間っから酒を飲みながら笑い騒いでいた。その中ではスウィング・ジャズ風の音楽が演奏されており、その騒々しさを増幅させていた。
獣族、人間、エルフたちがそこで酒を飲んではつまみを取り、今後の冒険とか次に攻略するダンジョンとかを話し合っている。僕はそれを掻い潜って酒を提供している元へ向かい、話しかける。
前原「あのーすいません」
その酒を提供している元は、初老で口ひげを蓄え、頭は完全に禿きっていたバーテンダーだった。
バーテンダー「なんだ?」
前原「冒険者登録って何処でやればいいですか?」
バーテンダー「ん、あっちだ」
バーテンダーが左奥の方向に指を指す。そこには、目つきの悪い女性がテーブルに肘を付きながらこっちを睨んでいた。明らかに話したくなさそうな雰囲気で、僕は少し戸惑った。何故なら明らかに話しかけてほしくないオーラを全開に出しているものだから、日程を変えて明日にもう一度伺おうと思った程だ。
目つきの悪い冒険者登録の受付嬢「チッんだよ面倒くせーな」
僕にも聞こえる声で受付嬢は嫌味を垂らし、奥に入っていってしまった。