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第四話

~草原~

洞窟を出て、森林を抜けると草原があり、そこには何も出てこなかった。そりゃあ洞窟に単騎で入って親玉を倒したんだから、さすがに他のモンスターとやらは自分の本能で危険を察知して怯えて、出てこないのだろう。

すると、その草原の向かいから鎧を着た兵士の一団がやってくる。彼らは僕を遠目で見た瞬間、ある者は剣の柄を握り、ある者は弓矢を構えていた。

「そこの変な服の者!貴様は何者だ!!」

先頭にいた兵士がそう叫ぶ。

「怪しい人じゃありません!!」

僕もその問いに答えるように叫んだ。

「なら何者であるか!!」

「前原悟ですっ!!」

僕は自分の横に括り付けてある剣に手を付けず、盾を背中に担ぎ、両手を上げて降伏のふりをした。すると、他の兵士達はさらに警戒心を高めた。そしてじりじりと距離を詰める。

「怪しい者じゃあるまいな?お主は人間の皮を被ったゴブリンではないな?」

「ゴブリンではありませんっ!!確かめたいのなら僕の皮を剥いで確かめればいいんじゃないでしょうか!?」

「プフッww」

そんな感じで言ってみると、その内の弓を構えていた奴が吹き出した。それにつられてみんな笑い始める。

「「「「あっはっはっはっは!」」」」

一人は笑い転げて、一人は笑い涙も出して、またもう一人は腹を抑えて笑っていた。

「き、君!面白い奴だな!!分かった、君はゴブリンではない。正真正銘人間族の人間だ!」

先ほどまで笑っていいた、髭をたくわえたいかつい男が言った。

「面白いなぁ!で、で?どこの出身なんだい?」

そして弓を構えていた草食系でイケメンな男が僕に話しかける。正直顔が良いのでちょっと妬むが、それに答える。

「えっと~・・・日本という国です」

「二ホン?どこにある国なんだ?」

槍を持ったもう一人の兵士が質問した。

「えっとここってどこですか?」

そう質問すると、全員首を傾げ、眉間に皺が寄って頭にはてなマークが出たような顔で、

「君はどこからやってきたのかも分からないのかい?遭難したのかい?」

「いや、起きたらこの世界にいて、元居た国が日本という事なんです」

この受け答えでさらに兵士たちはこんがらがってしまった。一人は頭を抱え、一人は空を見上げてずっと考えている。すると、後ろでメガネをかけていた兵士が少し質問した。

「もしかして、星の方ですか?」

「星?」

僕は、その二文字に夢中になって聞いた。

「その~星の信者がよく読んでいる書物に、『星』の降臨について書かれている一節があるんですよ。されば星に願いし時、彼らはその願いに祝福を以て返すだろう。という感じで、だから多分あなたは祝福という事なんですよ!」

その兵士が興味津々に語る。

「やっぱり俺の部隊内で唯一の脳みそを誇るグレッグは格別だな!あぁ俺はアンドレだ。ここの部隊長をやっている」

髭をたくわえたいかつい男が言った。

「それでこの弓使いがアルス」

草食系でイケメンな男が胸に右手を当てて、

「よろしくね」

「槍使いのミカラ」

そうやって紹介されると、顔まで全身鎧を付けた人は槍を地面に刺して、左手と右手で拱手をした。

「よろしくお願いいたすっ!!」

と大きな声で。

「そして3兄弟の左から、ダイ、ゴン、ジョウだ」

「「「よろしくお願いします!!!」」」

紹介すると、3人は声をあわせて言った。

「まあここで遭難者を見逃すのは我々騎士団のプライドにも傷が付くってもんだ。とりあえず、俺らの駐屯している町まで送らせていただこう!」

アンドレがさっきとは違って真面目な口調で言った。

「あ、そうですか!ありがとうございます!」

ついにか、と僕は思った。なぜなら自分が作った街をやっとウォークスルーで見れるというのだ。むしろ僕がさっき手に入れたお金を全部騎士団に寄付してもいいほどである。

「良いってことよ。むしろほぼ毎日この繰り返しだからな」

そう言われて、僕は先ほどやってきた兵士たちに連れられて、町へと連れて行かれる事になった。

~森の傍の町~

森林を抜けると、木材と石で作られた家屋が姿を現す。そして、地面もだんだんと雑草ばかりだったのがあぜ道となって、石畳の地面が見えてきた。そして周りの景色も木々や雑草の生い茂る森林から、少し栄えているほどの村が出てくる。人々の活気、井戸端会議をする中年の主婦たちの声が聞こえ、子供たちの走る姿が見える。それはいかにものどかな村だった。

アルス「ここがハーシェルという村。すぐ近くに騎士団の詰所もある所だから、何かあったらそこに立ち寄ってね?」

前原「あ、はい!ここまで連れていただき、ありがとうございました!」

すると、彼は少し笑って。

アルス「いやいや笑ぼくらの詰所まで送っていくよ」

アンドレ「家に帰るまでが騎士団の任務ってもんだ!おやすい御用さ!」

そう言われて、また歩く。途中、人間ではない肌が緑色のゴブリンが通ることがあった。

前原「アルスさん、ここって人間じゃない奴も住んでいるのですか?」

アルス「そうだよ?犯罪やクーデターさえ起こさなきゃ基本的にこの人類王国には住めるよ?」

前原「人類王国?」

僕は聞き返す。

アルス「うん、人類王国。今は魔族たちと1000年近く戦争をやっているけどね」

そういえばシナリオ作っている時に歴史的、地理的なディテールを考えすぎて朝になっていたことを思い出した。こう言う感じになったんだなぁ、確か・・・人類の方が先に魔族に攻撃をしたからだっけ?

前原「その戦争ってなんで起こったんですか?どっちが最初に始めたんですか?」

アルス「ん?そりゃあ魔族だよ。あいつらが始めたって“神の庭園“の書にも書かれている」

彼は、ドヤ顔に近い顔で首から何かを取り出す。それは円盤の形をした物で、中にはフードを被った女が彫ってあった。

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