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第三話

~隠し部屋~

またまた隠し部屋に出会った。いや、出会ってしまったのだ。

今度は二つの宝箱がある。こういうケースは大体一つが偽物で一つが本物の博打タカラバコだ。でも僕は知っている、どっちも普通にレア装備だという事を。

先程と同じように宝箱を開けると、右の宝箱には盾、左の宝箱にはとあるペンダントが入っていた。中には丸メガネをかけた少女の写真が入っていて、その顔は少し笑っていた。少し気味が悪かったが、カネになるだろうと思ってズボンのポケットにゴソゴソと入れ込んだ。

その時だった。

「ブモオオオッ!!!!!!!!!!」

さっきのリトルホーンと同じような、いやそれより大きく重い鳴き声がした。

咄嗟に振り向くと、そのリトルホーンより二、三回りほど大きな猪が、その4本足で隠し部屋の扉の前に立っていた。

「え!?なにこれ!?僕が知っているゲームの敵じゃない!」

よく見ると右目には傷があって、そして毛並みも周りにいる小さなリトルホーンとは違って黒に近い茶色で、鬣は黒だった。

僕は腰に括り付けていた剣を鞘から取り出す。両手で握りながら、僕は拙い剣裁きでそのオオ猪、名前を付けるならばボスホーンに向かって突進した。まず盾で体当たりするも、効き目を示さず、次に手に入れた西洋剣で切りかかる。しかし、その切り傷すら、奴に生えた分厚い毛皮のおかげでかすり傷すら付かなかった。

「どうなってんだこの毛皮!!硬すぎんだろ!!」

あまりにも硬すぎる毛皮に不満を漏らしていると、周りにいるリトルホーン達が飛びかかってきて、さっきの入り口近くで出てきた奴と同じように突進してくる。だけど、それが手に取ってわかるように、僕は次々にかわしていった。

「全回避!?そんなのありかよ?」

正直信じられなかった。だってこいつら高速で突進してくるから避けられるはずがないのに、今僕は向かってくるリトルホーン5匹を防御もなしで避けたのだ。

僕はその勢いに乗ってその先にいるボスホーンに向かって切りかかった。

ゴンッ!!

図太い音が鳴った。だけども僕は切りかかるのをやめない。何度も何度も何度も・ゲーム作りだって実行ボタンを押しては止めての繰り返しだ。

僕は上からその堅い毛皮に向けて切りつけた。いや、もはや剣で叩いていたという方が正しいのかもしれない。

しかし、その無駄なことも虚しく僕はボスホーンに横から体当たりされてしまい、その勢いで壁に身体ごと放り投げられてしまった。

予想だにしていなかった攻撃で思わず背中を痛める。だけど出ているアドレナリンで痛みは鎮静され、まだ指くらいは動けた。

ここは異世界、僕はあっちで死んで、転生した。そう、一度死んでいるからこそ、ここで死にたくないと思っているのかもしれない。実際、生きたいという欲が僕にまだ生きろと言っている。だけど僕はその生きろという言葉にNOと言おうとしていた。そんなんじゃだめだ!まだゲームも作れていないしここで何も出来ずに死ぬのは嫌だ。しかし次第に瞼が重くなって、目が霞んでいく。

その時、死にかけている自分の目の前に、白い長方形の薄いホワイトボードのようなものが出てきた。それはまるで、制作していたゲームの“アイセラ大陸”に出てくるUIのようなホログラフィックで、その中には文字がタイピングされるように出てきた。

“あなたが死ぬまで あと 10秒”

そのカウントダウンが出ている下には“生きたいですか?”と、“はい”と“いいえ”が書かれている。何もせずに待っていると、急に大きく不快なアラート音が鳴った。あと10秒の所が5秒になっているのだ。僕はそのアラート音にせかされ、“はい”を押した。いや、押してしまったのだ。すると、先ほどまで痛かった背中が治り、動かなかった体が動いたのだ。

“あなたは生きることを選びました。そして、代償が支払われました”

その文字が下に出てきて、右下にある“はい”というボタンを押した。

“目の前にいるボスホーンの生命力をあなたの生命力としてダウンロード致します”

「ダウン・・・ロード、久しぶりに聞いた言葉だ」

“同時にボスホーンの能力も引き継がれます。よろしいですか?”

「どういう原理?どうやったら受け継がれるの?遺伝子を貰うってこと?」

一体どういうことか分からなかったが、まあこの世界にある魔法の力ということで解釈した。とにかく生命力だけではなく、おまけに能力をくれるなんて、なんというチート能力を作ってしまったんだろうと背徳感がした。

僕はまた立ち上がり、そのボスホーンに向かってゆっくりと歩き出す。

そして、先ほど避けたリトルホーン5匹が親分を守るように突進してくる。だけど僕もさっき宝箱で手に入れた盾を前にそいつらに突進する。まず一匹目、こいつは初撃を盾でぶつけて、その反動を利用して、回転技で首を剣で断ち切った。次に2匹目が突進してきたが、それをひらりとかわして頭に一突き。そいつは動かなくなった。今度は3匹同時にやってくるが、僕の敵じゃない。回転しながら剣を横から切る。

そして最後の親玉、ボスホーンが静かに4本足で立っていた。さすがに子分5匹をこんな無惨な姿にしてくれたからさすがに怒って僕をすぐに殺すだろうと思ったが、以外にもその振る舞いはボスそのものだった。

その瞬間、そいつは走り出して僕に突進した、しかも、地面を角でがりがりと削りながら。

僕はその一歩手前、数センチメートル手前でひらりとそいつの攻撃範囲から外れた。そいつは空に向けて角を向ける。そして、僕はカウンターとして横に盾を依り代にして突進を繰り出した。すると、ボスホーンはよろけて横に倒れる。そして、いかにも個々のはらわたから切ってくださいと言わんばかりの一本の皮の生え際を見つけた。そして、僕はその生え際の指示通りに切る。そういえば思い出した、こいつらを3D設計する時に色を塗るのに苦労したんだった。Blenderのテクスチャーペイントで展開図をもとに描いていた時、あえてその展開する為の線を下にしたのだった。

「最近物忘れがひどいなぁ、疲れていんのかな」

そう呟きながら、毛の生え際を切ったら赤黒い物が出てきて、血や得体のしれない臓器が出てきた。正直、僕は医者ではないから見慣れたものではないので、かなり気持ち悪さを感じた。そいつが倒れた時、その死んだボスホーンはすぐに暗い紫色の煙をだして消え始める。その中には黒い何かがうねうねと動いてはどこかへ染み込んでいく。僕はただ目で追うことしかできなかったのだ。傷だらけとなった自分の手を見る。それはどこか少したくましく、いかにも社畜で、ジムを契約したけど一回も行けなかった手とは到底思えなかった。そして、先ほど煙で消えたボスホーンが居た所を見ると、宝箱が置いてあった。赤と金の2色で作られた宝箱はいかにも強い武器や、凄い装備が入っていそうだった。しかし、中身を開けるとただ一つの麻袋だけが入っているだけだった。そういえばそうだ、ここのボスドロップをあえて少額のお金が入った麻袋だけにしたのだった。しかも中身はたったの金貨50枚ほど。たしか、通貨の名前は何だったけな?・・・う~ん・・・なかったわ。ただの金貨、なにも変わりゃしない。

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